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リリーフ投手を獲得する必要はあったのか。ヤンキースのブルペンは30球団ベストの防御率

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・ブリットン Jun 30, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月24日、ニューヨーク・ヤンキースはメジャーデビュー前の3投手と交換に、ボルティモア・オリオールズからリリーフ投手のザック・ブリットンを獲得した。

 この時点で、ヤンキースのブルペン防御率は、両リーグ・ベストの2.75だった。同じく、奪三振率11.53、被打率.199、被OPS.603も1位。クローザーのアロルディス・チャップマンをはじめ、5人が40イニング以上を投げて防御率3.10未満。そのうち4人の奪三振率は10.80を上回る。補強の必要はなかったようにも思える。

 ブリットンは2014年から、3年続けて65イニング以上&防御率2.00未満を記録し、このスパンに計120セーブを挙げた。しかし、ここ2年は故障が相次ぎ、成績も下降している。昨シーズンは37.1イニングで防御率2.89、今シーズンはここまで、15.2イニングで防御率3.45だ。

 にもかかわらず、ヤンキースはブリットンを手に入れた。そこには、復調を見込んでのことだが、いくつかの理由が考えられる。

 ブリットンは左投手だ。これまでもブルペンには2人の左投手がいたが、チャップマンはクローザーなので、左打者にピンポイントで起用できるのはチェイシン・シュリーブだけだった。

 また、クローザーの経験があることからもわかるとおり、ブリットンは対戦する打者の左右を問わない。セットアッパーがさらに増えれば、早いイニングからつないでいくことができ、トレードで先発投手を獲得できなかった場合の「保険」となる。

 タイプとしても、シンカーを主体にゴロを打たせる投手は、ヤンキースのブルペンにはいなかった。ブリットンの投球は、シンカーが90%以上を占める。

 ライバルにブリットンを渡さなかったというメリットもある。ヒューストン・アストロズやボストン・レッドソックスなど、ヤンキースがポストシーズンで対戦する可能性のあるチームも、獲得に興味を示していた。

 ブリットンが復調できなかった場合も、ヤンキースのダメージはそう大きくない。彼が加わる前から、ブルペンは優秀だった。ヤンキースが手放した3投手にしても、オフにFAとなる「レンタル・プレーヤー」との交換ということもあり、トップ・クラスのプロスペクトではなかった。

 ヤンキースにとって、ブリットンの獲得がハイリターンとなるかどうかはわからないが、ローリスクであることは間違いなさそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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