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元本塁打王が球史に残るワースト記録を打ち立てる!? 打率/出塁率/長打率の3部門ともリーグ最下位

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・デービス(左)とティム・ベッカム Apr 19, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

  ボルティモア・オリオールズのクリス・デービスが、極度のスランプに陥っている。打率.150、出塁率.227、長打率.227――出塁率をコピペして間違えているわけではない――は、いずれも規定打席以上のリーグ最下位。ナ・リーグの選手を含めても、この3部門でデービスを下回る数値は、ルイス・ブリンソン(マイアミ・マーリンズ)の出塁率.220だけだ。

 もともと、デービスはパワー・ヒッターであって、アベレージ・ヒッターではない。過去5年(2013~17年)の190本塁打はネルソン・クルーズ(現シアトル・マリナーズ)の193本に次いで多く、本塁打王も2度獲得した。一方、この間の打率は.239に過ぎず、2014年は両リーグ最下位の.196を記録した。

 それにしても、今シーズンの成績はひどすぎる。ホームランが出ていればまだ救われるのだが、5月9日にシーズン4本目を打ってから、すでに1ヵ月以上が経っている。

 このままいくと、スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)の3部門ともリーグ最下位の「ワースト三冠王」が誕生する。そうなれば、2012年に.213/.277/.333を記録したドルー・スタッブス以来のことだ。

 また、3部門それぞれのワースト記録(500打席以上)は、打率がロブ・ディアー(1991年)とダン・アグラ(2013年)の.179、出塁率がハル・レニアー(1968年)の.222、長打率はゴート・アンダーソン(1907年)の.225だ。このいずれも、デービスは更新してもおかしくないところにいる。

 もっとも、記録を打ち立てる前に、不振から脱け出せなければ、レギュラーの座を失い、規定打席不足となるだろう。すでに、デービスはその危機に瀕している。バック・ショーウォルター監督は、6月12日から15日にかけて、デービスを3試合続けてスターティング・ラインナップから外した。

 ワースト記録を作った時、ディアーとアグラは20本塁打以上を放ち、出塁率も.300を上回っていた。アンダーソンは打率も.206と低かったが、四球(80)と死球(6)の合計は安打(85)より多く、出塁率.343を記録した。3人とも、デービスのように3部門とも並外れて低いわけではなかった。スタッブスとレニアーの場合は、一塁手のデービスと違い、守備が重視されるポジションだった。スタッブスはセンター、レニアーは遊撃を守っていた。レニアーは打率と長打率も.240未満ながら、彼にとって、スラッシュラインのいずれも.300未満のシーズンは珍しいことではなかった。

 ボルティモアの「バーテンダーズ・パブ」は、デービスがヒットを打てば「ドクター・ペッパー・シューターズ」というカクテルを無料にすると、フェイスブックで発表している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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