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味方の野手たちが「投手の代打安打」を際立たせ、1900年以降初の椿事に

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイトン・リチャード(サンディエゴ・パドレス) Jul 7, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月12日、3回裏に代打で登場したクレイトン・リチャード(サンディエゴ・パドレス)は、この試合のチーム初安打を打った。リチャードは投手だが、打撃も得意とし、2011年と2012年にも代打安打を1本ずつ記録している。3日前に先発登板した際は3ラン本塁打を放ち、投げては5回4失点ながら、白星を手にした。また、アンディ・グリーン監督がリチャードを代打に起用したのは、まだ試合序盤だったため、終盤に野手を残しておきたかったからだ。

 ただ、それまでの代打安打2本と違い、今回のヒットは椿事となった。パドレス打線はその後も打てず、結局、サンフランシスコ・ジャイアンツに1安打完封(2投手による継投)を喫した。スターティング・メンバーだけでなく、5回裏に代打として打席に立ったマット・シーザーも、内野ゴロに倒れた。今のところ、シーザーのバットは他の選手が使った時の方が威力を発揮するようだ(「本人は出場しなくても、そのバットと下着(!)がワールドチャンピオンをもたらした」)。

 イライアス・スポーツ・ビューローによると、代打で登場した投手がチーム唯一の安打を放った試合は、モダン・エラ(1900年以降)では初めてだという。リチャードの前には、1935年の試合で投手がチーム唯一の安打を記録しているが、この時に打ったメイス・ブラウンは代打ではなく、3番手として6.1イニングを投げた。

 他に1本でも安打が出ていれば、リチャードの代打安打がここまで際立つことはなかっただろう。この椿事は、パドレスの野手たちが生み出したと言ってもいいかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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