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1試合に9ポジションを守った選手がマリナーズへ移籍

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・ローマイン Sep 30, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 11月2日、アンドルー・ローマインがデトロイト・タイガースからシアトル・マリナーズへ移籍した。タイガースがローマインをウェーバーにかけたところに、マリナーズが獲得の名乗りを上げた。マリナーズのジェリー・ディポートGMがロサンゼルス・エンジェルスでGMを務めていた時、ローマインはエンジェルスでプレーしていた。2014年の開幕前にローマインをタイガースへトレードしたのは、他ならぬディポートだ。

 今回の移籍から1ヵ月前、ローマインは球史に名前を刻んだ。と言っては少し大袈裟だろうが、9月30日のミネソタ・ツインズ戦で9ポジションすべてを守った。同じことをした選手は過去に4人いて、その他にバスター・ポージー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)も大学時代に経験している。

 この「余興」を演出したブラッド・オースマス監督――数日前にシーズン終了後の解任が決まっていた――は、シェーン・ホールターが史上4人目の全ポジション制覇を成し遂げた、2000年10月1日の試合に出場した。ホールターのポジション変更に伴い、オースマスも本職の捕手に加えて、遊撃を除く内野3ポジションを守った。ホールターとローマインは、どちらもタイガースで達成。ホームとアウェーは逆ながら、ツインズ戦ということも共通する。

 ローマインは今シーズン、バッテリー以外の7ポジションで、それぞれ65イニング以上を守った。それまで捕手だけは経験のなかったローマインは、きっとこの日のためだろう、ニューヨーク・ヤンキースにいる弟のオースティンから中古のミットを譲ってもらった。ちなみに、弟はマイナーリーグを含めても、捕手と一塁手しか務めたことがない。彼らの父、ケビンは外野手だった。

 新天地でも、ローマインはスーパー・ユーティリティとして働き、マリナーズがまたしてもポストシーズンを逃せば、まだ誰も記録していない2試合目の全ポジション出場をやってのけるかもしれない。ただ、まずはロースターに入る必要がある。マリナーズには内外野を守るテイラー・モッターショーン・オマリーがおり、ローマインは彼らとロースター枠を争うことになりそうだ。3人とも打撃はあまり期待できず、ローマインとオマリーはスイッチヒッターという点もかぶっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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