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WBCのMVPは、ストローマンよりバレンティンがふさわしい!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウラディミール・バレンティン/WBC準決勝で先制本塁打 Mar 20, 2017(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

WBCのMVPには、アメリカのマーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)が選ばれた。今後のWBCでも――開催されるのであれば――MVPは優勝チームの選手が手にするに違いない。2006年と2009年は日本の松坂大輔(現・福岡ソフトバンク・ホークス)、2013年はドミニカ共和国のロビンソン・カノー(現シアトル・マリナーズ)が受賞している。

3先発したストローマンは、計15.1回を投げて防御率2.35を記録した。2次ラウンドのプエルトリコ戦では初回に4点を失ったものの、それ以外の失点は3試合を通して皆無。1次ラウンドのドミニカ共和国戦は4.2回を3安打無失点に抑え、決勝では7回裏の先頭打者に二塁打を打たれるまで、プエルトリコを無安打に封じた。決勝の重みも考慮すれば、ストローマンのMVP受賞は妥当だろう。

もっとも、ストローマンの他にも、MVPに値する選手はいた。その一人が、オランダのウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト・スワローズ)だ。16安打、4本塁打、12打点はどの選手よりも多く、10得点はプエルトリコのカルロス・コレイア(ヒューストン・アストロズ)と並ぶ。打率.615、出塁率.677、長打率.1.115はいずれも、15打席以上の選手ではトップだった。

バレンティンは2次ラウンド・プールEのMVPを受賞したが、活躍はこのラウンドだけではなかった。1次ラウンドは本塁打も打点もなかったものの、9打数5安打とよく打ち、2次ラウンドの13打数8安打、3本塁打、10打点を挟み、プエルトリコに敗れた準決勝では4打数3安打、1本塁打、2打点を記録した。

7試合とも4番に座り、ノーヒットに終わったのは1次ラウンドのイスラエル戦だけ。この試合も四球で2度出塁した。さらに、2次ラウンド以降は、4試合中3試合で本塁打を叩き込み、4試合とも2安打&2打点以上。最後の3試合はそれぞれ3安打を放った。

また、過去のWBCを含めても、バレンティンの成績は特筆すべきものだ。1大会4本塁打は、2006年に韓国のイ・スンヨプ(現・三星ライオンズ)が記録した5本塁打に次ぐ。16安打と12打点は新記録だ。打率、出塁率、長打率の3部門とも、1大会15打席以上でバレンティンを上回る選手はいない。

オランダが決勝まで進み、そこでもバレンティンが打てば、勝敗にかかわらず、MVPに選ばれていたかもしれない。ちなみに、1960年のワールドシリーズでは、優勝したピッツバーグ・パイレーツの選手ではなく、敗れたニューヨーク・ヤンキースのボビー・リチャードソンがMVPを受賞した。リチャードソンはこのシリーズで、両チーム最多の12打点を挙げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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