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オランダがWBC優勝に向けてグレードアップ。8年前は捕手として出場した選手が、最終回のマウンドへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
バーニー・ウィリアムズ(左)とケンリー・ジャンセン Mar 9, 2009(写真:ロイター/アフロ)

ロサンゼルス・ドジャースのエイドリアン・ゴンザレスは、失意のうちにWBCを去った。ゴンザレスを中心とするメキシコは、失点率によって1次ラウンドで敗退した。失点率をどう計算するかについての行き違いもあり、ゴンザレスはWBCを痛烈に批判した。

一方、ドジャースでゴンザレスとチームメイトのケンリー・ジャンセンは――ゴンザレスと入れ替わりというわけではないが――決勝ラウンドからWBCに参加する。キュラソー島出身のジャンセンは、DP(ラウンドごとに入れ替え可能な予備登録の投手)として、オランダのロースターに入っていた。

オランダは、ジュリクソン・プロファー(テキサス・レンジャーズ)やザンダー・ボガーツ(ボストン・レッドソックス)ら、メジャーリーグでプレーする野手5人を擁する。ウラディミール・バレンティン(東京ヤクルト・スワローズ)も、打率.591(22打数13安打)、3本塁打、10打点と当たっている。しかし、2015年以降にメジャーリーグで投げた投手は、一人もいなかった。

昨シーズンのジャンセンは、両リーグ2位タイの47セーブを挙げた。過去3年間に記録した127セーブも、マーク・マランソン(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)の131セーブに次ぐ。

投球の約90%を占めるカッターは、ナチュラルに変化し、最速は98~99マイルに達する。昨シーズンの防御率1.83は救援50イニング以上の7位、奪三振率13.63は8位、与四球率1.44は9位、K/BB(奪三振率/与四球率)9.45は2位。被打率.147は1位だ。グラウンドボーラーではないものの、被本塁打も68.2イニングで4本とそう多くなかった。

2次ラウンドの日本戦のような試合展開を考えると、ジャンセンの存在はとりわけ大きな意味を持つ。日本はタイブレイクとなった延長11回表に2点を挙げ、その裏を抑えて8対6で逃げ切った。もし、オランダのブルペンにジャンセンがいて、延長10回が終わった時点でまだ登板していなかったら……。

決勝ラウンドの3試合は、ジャンセンのホームグラウンド、ドジャー・スタジアムで行われる。昨シーズン、ジャンセンはこの球場で、防御率1.60、奪三振率13.73、与四球率1.14、K/BB12.00、被打率.111を記録した(シーズン全体の数値と比べてほしい)。被本塁打2本はアウェーと同数だが、ホームの方が10.0イニング多かった。セーブ成功率も、アウェーの80.0%(20/25)に対し、ホームでは96.4%(27/28)だ。日本は準決勝ではオランダと対戦しないが、決勝で再び顔を合わせるかもしれない。

なお、過去のWBCで、ジャンセンは投げていない。2009年は捕手として出場し、13打数1安打、6三振ながら、盗塁を試みた3走者のうち2人を刺した。ドミニカ共和国と対戦した最初の試合では、1点リードの9回裏、1死二塁の場面で、前年のナ・リーグ盗塁王、ウィリー・タベラスの三盗を阻み、オランダの勝利に貢献した。また、ジャンセンはこの年の夏に投手へ転向し、2013年のWBCでは、故障者に代わって決勝ラウンドからロースター入りしたが、オランダは準決勝でドミニカ共和国に敗れ、ジャンセンは登板しなかった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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