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打率よりも低い出塁率。そんなことってあり得る??

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルーグネッド・オドーア(テキサス・レンジャーズ)Sep 12, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2016年はア・リーグで75人、ナ・リーグで67人が規定打席をクリアした。他に、両リーグ合わせて計502打席以上の選手も4人いた。この146人は全員、打率よりも出塁率の数値が高かった。その差が最も大きかったホゼ・バティスタ(トロント・ブルージェイズ)は.132(出塁率.366-打率.234=.132)。最小のルーグネッド・オドーア(テキサス・レンジャーズ)でも.025(出塁率.296-打率.271=.025)の開きがあった(顔面にパンチを喰らった選手と喰らわせた選手が両極端にいるのは、単なる偶然に過ぎない……はずだ)。

ただ、打率とまったく同じ出塁率だけでなく、出塁率が打率を下回ることもある。

2016年に打席に立った969人中285人は、打率=出塁率だった。そこから、どちらも.000の179人を除いても、106人が残る。ハンザー・アルベルト(レンジャーズ)は58打席に立ち、打率も出塁率も.143を記録した。

さらに、アーチー・ブラッドリー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)とウィリー・ペラルタ(ミルウォーキー・ブルワーズ)の2人は、打率よりも出塁率が低かった。ブラッドリーは48打席で打率.070と出塁率.068、ペラルタは41打席で打率.128と出塁率.125だった。また、今年のディビジョン・シリーズでは、デビッド・ロス(シカゴ・カブス)が打率.167と出塁率.143を記録した。ブラッドリーとペラルタは投手だが、ロスはアルベルトと同じく野手だ。

打率は「安打÷打数」、出塁率は「(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)」で計算される(打席と打数については、前に「今さらながら「打席」と「打数」について知っておきたいこと。「首位打者」や「連続安打試合」にも関わる話」で書いた)。

ブラッドリーの打率は「3安打÷43打数=.070」、出塁率は「(3安打+0四球+0死球)÷(43打数+0四球+0死球+1犠飛)=3÷44=.068」だ。ペラルタとロスも、ブラッドリー同様に四球と死球がなく、犠牲フライ(犠飛)を1本打った。

四球と死球の合計がゼロで、犠牲フライが1本以上なら、出塁率は打率より低くなる。また、四球と死球の合計よりも犠牲フライが多ければ、出塁率が打率を下回ることもある。例えば、ブラッドリーの打数と安打はそのまま、1四球(あるいは1死球)を加えた場合、表のように、13犠飛までは打率の方が低いが、14犠飛以上だと出塁率の方が低くなる。

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もっとも、規定打席をクリアした選手の出塁率が、打率を下回ることはないだろう。2016年のバティスタがそうなるには、打数、安打、四球、死球は変わらないとして、犠牲フライが4本ではなく295本要る。オドーアにしても、犠牲フライが4本から62本に増えなければ、打率よりも低い出塁率にはならない。犠牲フライのシーズン最多は、公式記録になった1954年にギル・ホッジスが記録した19本だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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