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シャーザーが1試合20奪三振とともに達成した記録「全30チームからの白星」。次は誰が成し遂げる?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)May 11, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

5月11日、ワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザーが1試合20奪三振を達成した。これまで、ロジャー・クレメンス(2度)、ケリー・ウッドランディ・ジョンソンの3人しか演じていない快挙に隠れた感もあるが、シャーザーはこの試合で、もう一つの記録も成し遂げた。デトロイト・タイガースを相手に勝利を収め、4月18日のジョン・ラッキー(シカゴ・カブス)に続いて、30チームすべてから白星を挙げた17人目の投手となった。

この記録は、アリゾナ・ダイヤモンドバックスとタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)が誕生し、30チームに増えた1998年以降のものだ。2002年にアル・ライターが最初の達成者となった。また、2チーム以上で投げる必要があるため、今のところ、フェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)やクレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)にチャンスはない。しかも、2チームで投げただけで達成したのはバリー・ジートしかおらず、テリー・マルホランドは10チーム(達成後も含めると11チーム)を渡り歩いた。

シャーザーはナショナルズが3チーム目だ。これは、ウッディ・ウィリアムズティム・ハドソンと並んで2番目に少ない。109勝目の達成は、ビセンテ・パディーヤの104勝目に次ぐ。それらに増して、シャーザーの特筆すべき点は、達成までのスピードにある。過去の16人は30チームから白星を挙げるまでに平均453.3登板を要したが、シャーザーは248登板目に成し遂げ、これまで最少だったライターの299登板を大幅に更新した。

シャーザーに続く18人目は誰か。カート・シリングは1シーズンで5チームそれぞれから初白星を挙げて達成したが、やはり、あと1チームとしてリーチをかけている投手が有力だろう。ウバルド・ヒメネス(ボルティモア・オリオールズ)は7月25~27日のコロラド・ロッキーズ戦、フランシスコ・リリアーノ(ピッツバーグ・パイレーツ)は8月19~21日のマイアミ・マーリンズ戦に投げ、勝ち投手になればコンプリートだ。パイレーツは5月30日~6月2日にもマーリンズと対戦するが、リリアーノは登板しない可能性が高い。

一方、ザック・グレインキー(ダイヤモンドバックス)はカンザスシティ・ロイヤルズ、CC・サバシア(ニューヨーク・ヤンキース)はマーリンズを残すのみだが、移籍しない限り、今シーズンの対戦はなく、2人とも移籍することはまずない。また、過去3年はマイナーリーグでも投げていないが、ヨハン・サンタナも未勝利はミネソタ・ツインズだけ。この記録のためではないと思うが、サンタナは現役復帰をめざしているらしい。

彼らの登板数は、すでに達成時のシャーザーより多いものの、ヒメネスとリリアーノはこれまで29チームとしか対戦していない。シャーザーがタイガースを相手に投げたのは、これが2度目。最初はメジャーデビューから4試合目で、黒星を喫した。この年、シャーザーは16登板して1勝もできなかった。

なお、30チームから白星を挙げた17人のうち、ケビン・ブラウンダン・ヘイレンは、全チームからそれぞれ2勝以上している。現役投手では、5月14日にテキサス・レンジャーズとマイナーリーグ契約を交わしたカイル・ローシュが、26チームから2勝以上を挙げている。1勝しかしていない相手は、オークランド・アスレティックス、ボストン・レッドソックス、ヤンキース、ツインズ。レンジャーズは今シーズン、6月以降にこの4チームと対戦する。ラッキーも残り6チームながら今シーズン中に達成する可能性はあるが、シャーザーは残り8チームにナショナルズが含まれていて、今シーズンのタイガース戦はもう終わっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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