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ヤンキースに105マイルの豪腕現る。その名はアロルディス・チャップマンではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブレット・ガードナー(左)とアーロン・ヒックス Apr 9, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

4月20日、ニューヨーク・ヤンキースに豪腕が現れた。昨年12月にシンシナティ・レッズから獲得したアロルディス・チャップマンのことではない。彼はドメスティック・バイオレンスにより、開幕から30試合の出場停止を科されている。オークランド・アスレティックス戦で豪腕を披露した選手の名前は、アーロン・ヒックスという。チャップマンより1ヵ月半早く、ミネソタ・ツインズからトレードでヤンキースに加わった26歳の外野手だ。

4回表、1死満塁の場面でフライを捕ったヒックスは、レフトからワンバウンドで本塁へ返球し、併殺を完成させた。MLB.comのブライアン・ホックがこうツイートしている。「ダニー・バレンシアを刺したアーロン・ヒックスの送球はスタットキャストで105.5マイルを記録した―これまでの最速だ(!)」

MLB.comがスタットキャストのデータを掲載しているページには、最高球速の項目に「チャップマン・フィルター」を設けている。これは、球速トップ50のすべてがチャップマンの投球で占められてしまうためだ。フィルターのポップアップには「チャップマンが驚異の4シーム・ファストボールでスタットキャストの球速リーダーボードを独占するのに飽き飽きしてる? これなら他の選手を見ることができるよ」と記してあり、クリックすると、チャップマンの投球を除くトップ50が表示できる。2015年にチャップマンが記録した最速は103.9マイル(167.2km)で、チャップマン以外ではネイサン・イオバルディ――彼もヤンキースの選手だ――の102.4マイル(164.8km)が最も速い。今シーズンの最速は、ノア・シンダーガード(ニューヨーク・メッツ)が4月18日に記録した101.4マイル(163.2km)だ。ヒックスの送球はそれらのいずれも上回る。105.5マイルは169.8kmだ。

ヒックスは2008年のドラフトで全体14位指名を受けた。高校時代は投手も務めていて、コンスタントに95マイル(152.9km)を計時していたという。イオバルディが先発し、チャップマンが締めくくり、彼らの後ろでヒックスが守る――ヤンキースに豪腕3人が揃う日が、今から待ち遠しい。

なお、ヒックスはまだ控えながら、豪腕だけの選手ではない。背番号「31」はデーブ・ウィンフィールドへの憧れからだ。ツインズ時代の背番号も、ウィンフィールドがツインズで使用していた「32」だった。ヒックスもウィンフィールドと同じように、5ツールを備えている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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