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ドジャースの投手が競演。グレインキーは43.2イニング無失点、カーショウは29イニング無失点を継続中

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・グレインキー(ロサンゼルス・ドジャース)Jul 19, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

オールスター・ゲームではマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)に本塁打を打たれたものの、ザック・グレインキー(ロサンゼルス・ドジャース)の無失点イニングは現在も続いている。7月19日にワシントン・ナショナルズを8回無失点に抑え、グレインキーはストリークを歴代11位の43.2イニングに伸ばした。オレル・ハーシュハイザーが持つメジャーリーグ記録の59イニング連続無失点に、あと2登板で追いつき追い越せるところまできている。

グレインキーは予定されていた7月24日のニューヨーク・メッツ戦には投げなかったが、これは故障ではない。妻エミリーの出産に立ち会うため、グレインキーはチームを離れ、ニューヨークからロサンゼルスへ飛んだ。グレインキー夫妻にとって第一子となる男の子は、23日の夜に無事生まれた。グレインキーは25日か26日のメッツ戦で、シティ・フィールドのマウンドに上がる予定だ。

出産の喜びとともに、グレインキーのストリークの継続には、スケジュールも味方している。ドジャースと同じナ・リーグ西地区にいるコロラド・ロッキーズの本拠地、クアーズ・フィールドは、海抜1マイルの高地に位置する打者天国だ。グレインキーにとっても、この球場での投球は容易ではなく、ここ3年間で防御率5.17(5先発)という数値は、2先発以上している10球場のなかで最も高い。けれども、今シーズンのドジャースは、グレインキーが5点を奪われた6月2日の試合を含め、クアーズ・フィールドでの9試合中6試合を前半戦に終えていて、残る3試合は9月25~27日に組まれている。グレインキーがその時まで無失点を続けていれば、すでにハーシュハイザーの記録を抜いているはずだ。

連続無失点イニングのメジャーリーグ記録は、過去2度とも、ドジャースの投手が塗り替えてきた。1968年にドン・ドライスデールが58イニングにわたって無失点を続け、ウォルター・ジョンソンが1913年にワシントン・セネタース(現ミネソタ・ツインズ)で打ち立てた55.2イニングを更新。その20年後にドライスデールを上回ったハーシュハイザーも、ドライスデールと同じくドジャースのユニフォームを着て記録を樹立した。

ただ、グレインキーが新記録を作ったとしても、もしかしたら、ドライスデールやハーシュハイザーほど長くはトップの座にいられないかもしれない。グレインキーの後ろからは、チームメイトのクレイトン・カーショウが追いかけてきている。カーショウは7月23日のメッツ戦で3安打完封を演じ、こちらもオールスター・ゲームでの失点を挟みつつ、連続無失点を29イニングに伸ばした。グレインキーは2009年にカンザスシティ・ロイヤルズでサイ・ヤング賞に輝き、2008~09年には38イニング連続無失点を記録しているが、カーショウの実績はその上を行く。過去4年間で3度のサイ・ヤング賞を手にし、昨シーズンは41イニングにわたって無失点を続けた。

なお、ドライスデールのストリークは、ハウイ・バーデルの犠牲フライによって止まった。ハーシュハイザーは無失点イニングを継続したまま1988年のレギュラーシーズンを終え、ポストシーズンで防御率1.05(42.2イニングで失点7、自責点5)の快投によってドジャースをワールドチャンピオンに導いた後、翌年の開幕戦で、初回にトッド・ベンジンガーにタイムリーヒットを打たれた。昨シーズン、カーショウのストリークを打ち切ったのは、チェイス・ヘッドリー(現ニューヨーク・ヤンキース)の本塁打だった。

ドジャースの投手が続けていたストリークを止めた3人に、これといった共通点は見当たらない。バーデルは左打者、ベンジンガーとヘッドリーはスイッチヒッターだ。バーデルは通算出場67試合の外野手で、1968年はすべて代打として9打席に立っただけ。このシーズンの打点は、ドライスデールから打った犠牲フライで挙げた1点しかなかった。ベンジンガーはスター選手ではなかったが、1989年はシンシナティ・レッズの正一塁手を務め、キャリアハイの17本塁打を放った。ヘッドリーは三塁手。昨シーズンは7月下旬にヤンキースへ移るまで、サンディエゴ・パドレスで打撃不振に喘いでいたが、2012年には31本塁打とOPS.875を記録している。

また、今シーズンのグレインキーとカーショウと違って、1968年のドライスデールと1988年のハーシュハイザー、昨シーズンのカーショウのストリークは、オールスター・ゲームを間に挟んでいない。ハーシュハイザーはオールスター・ゲーム後で、他の2人はオールスター・ゲーム前だった。ちなみに、3人ともストリークを記録した年はオールスター・ゲームで投げていて、いずれも無失点に抑えている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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