Yahoo!ニュース

ダルビッシュの故障とともにレンジャーズの2015年は開幕を迎える前に終わりを告げた……のかもしれない

宇根夏樹ベースボール・ライター

テキサス・レンジャーズの先発投手陣は早くも崩壊の危機を迎え、チームの命運も開幕前に尽きようとしているのか。トミー・ジョン手術を受けたダルビッシュ有だけでなく、他の投手にも故障が相次いでいる。

デレク・ホランドは左肩の痛みにより、3月1日の登板を回避した。アンソニー・ラナードは12日の試合で右肘に違和感を覚え、マウンドを降りた。ロス・デトワイラーは13日に、バスター・ポージー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)のライナーを右腕に受け、15日に登板したロス・オーレンドーフは、右の鼠蹊部に張りを訴えて降板した。

幸いにも、4人とも大事には至らないようだ。ホランドは14日、ラナードは16日の試合に登板した。デトワイラーの打撲は利き腕ではなく、X線検査でも問題は見つからなかった。オーレンドーフも離脱につながるほどではないらしい。

とはいえ、現状でも不安は大きい。ローテーションの3枠はヨバニ・ガヤードコルビー・ルイス、ホランドで埋まるにしても、残る2枠は確定していない。マーティン・ぺレスは昨年5月にトミー・ジョン手術、マット・ハリソンは6月に脊椎の手術を受けており、どちらも復帰は6月以降の見込みだ。

ラナード、デトワイラー、オーレンドーフに加え、先発4~5番手には、ニック・ティペッシュニック・マルティネスリサルベルト・ボニーヤアレックス・ゴンザレスルーク・ジャクソンらの名前も挙がっているが、これだけ候補が多いのは、決め手に欠けるということに他ならない。

彼ら8人のなかに、2014年にメジャーリーグで規定投球回をクリアした投手は皆無。キャリアにおいても、2人のロス、デトワイラーとオーレンドーフが2012年と2009年に1度ずつ記録しているだけだ。2人のニック、ティペッシュとマルティネスは2014年に20先発以上しているものの、ともに先発時の防御率は4点台で、FIPに至っては5点台だった。

ラナードとボニーヤは2人合わせても、メジャーリーグ10先発の経験しかない。「チチ」のニックネームを持つゴンザレスは、全米注目というほどではないとはいえプロスペクトだが、まだAAAで投げたこともなく、ジャクソンもメジャーデビューはしていない。

また、ローテーションのトップ3を形成するホランド、ガヤード、ルイスにしても、強力なトリオとは言い難い。2014年は故障によって6登板に終わったホランドは、2013年に3点台前半の防御率とFIPを記録しており、健康なら期待が持てる。だが、ガヤードは2014年の防御率3.51こそ162イニング以上の88投手中40位ながら、FIP3.94は61位に過ぎず、ルイスは防御率5.18がワースト2位、FIP4.46はワースト8位だった。ガヤードは今シーズンからア・リーグへ移る。ルイスは35歳だ。

昨シーズン、レンジャーズの先発投手陣の防御率はリーグ・ワースト2位の4.75だった。過去15年間(2000~14年)に先発防御率4.75以上を記録したア・リーグの78チーム中、ポストシーズン進出を果たしたのは5チームしかなく、2009年のミネソタ・ツインズを最後に、過去5年間は途絶えている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事