デマ拡散の心理とは 見えない敵に負けないための「不安管理」10か条

買いだめ(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染でデマが拡散しています。「お湯を浴びるとウイルスが死ぬ」「お湯を飲むとウイルスが死ぬ」といった予防に関するデマをはじめ、「トイレットペーパーが不足する」というデマによる買い占め騒ぎまで起こり、ストレスが多い日常生活になっています。

なぜこのようにデマが拡散するのでしょう。コロナウイルスのように目に見えず実態としてとらえにくいハザードに対して、人は心理的に苦手であるということがその理由の一つといえるでしょう。これは東日本大震災のあとの放射能リスクと同様です。

可視化しにくいハザードに人は弱い

ミュンヘン工科大学のワグナーは2007年、アルプスのふもとの住民を調査し、雪解けによる災害に対する心理的なモデル(不安や楽観など心の動き)は、洪水のほうが地滑りより正確であるという調査結果を発表しました。

洪水は目に見えるハザードですが地滑りは地中の土壌や砂などの可視化しにくい現象なので、心の対処ができず正体が見えにくいために不安感が強いということなのです。

放射能、コロナウイルスという可視化しにくく、しかもこれまでのデータや経験値がないハザードに対する不安の強さは、噂やデマに対して真偽を確かめるゆとりのなさを生むことが多いのです。

デマ流布の法則

東日本大震災のあとサポート事業にかかわった際、多くの女性からお子さんについての不安をお聞きしました。外に出るのが怖いという方もいらして不安感が非常に強かったのです。今回は電車で通勤しているので、家庭内感染が怖いという方がいらっしゃいました。在宅勤務ができない職種ですから不安が強く、その方は「お湯を飲むとウイルスが死ぬ」という噂を信じて友達にメールしたということでした。トイレットペーパーも不足しないと発表されたことを知っても心配で並んで購入したそうです。普段は冷静な人でも不安があると情報の真偽を確かめるゆとりがなくなりデマに影響されやすいといえます。

デマや噂の流布には法則があるといわれています。

心理学者のオルポートとポストマンは、デマの量(拡がり)は問題の重要性と状況のあいまいさの積に比例すると述べています。重要でかつあいまいなことについてはデマが流れやすいのです。今回は命にかかわる重大事でありかつ状況が不透明ですから、デマが流れる確率は非常に高いといえます。それだけに今後デマに対処するには不安管理は不可欠です。

1. すぐにシェアしてください、という決まり文句につられない。デマのペースに巻き込まれない

2. 友達の信頼できる人からの情報、などという個人が特定できない情報をすぐに流さないで止めておく

3. すぐ反応しない

4. それは確かに正しいのか、と一度考えてみる

5. 生活のすべてを不安で過ごさず、コロナを考えない時間を作る(1日中ワイドショーを見たりネット検索したりしない)

6. いい空気を深呼吸する。特に呼吸する際、吸う息の2倍から3倍以上の時間をかけ長く息を吐く。吐く息を長くしていると交感神経の緊張が緩み血圧や心拍数が落ち着きます。ストレス管理には呼吸が大切です

7. 信頼できる情報源の情報を確認する(怪しい情報を遮断する)

8. できる対処を確実に実行する(こまめな手洗いや換気など)

9. 楽観バイアスに陥らず、かといって悲観モードに陥らない(自分は大丈夫といってわざわざライブなどに出掛けたりしない)

10.寝る前に一度ストレッチして体を伸ばし緊張を解く

不安は身体に影響します。1994年のカリフォルニアのノースリッジ地震のあと、もともと不安傾向が強かった住民は地震の3か月後も免疫細胞(NY細胞)の減少がみられたと報告されています。コロナウイルス予防には免疫力が大事です。デマに惑わされず不安を乗り切ることは大事な新型コロナウイルス対策です。

東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。2013年より日本医科大学医学教育センター特任教授。2018年昭和女子大学特命教授。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを近年再開。

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