高輪ゲートウェイ駅開業から半年 利用者数は? AIロボットの腕前は?

開放感に満ちた駅舎が特徴的な高輪ゲートウェイ駅。写真提供:JR東日本

何かと話題の的、高輪ゲートウェイ駅の開業まで

 JR東日本の高輪ゲートウェイ駅は今年3月14日に開業を果たした。東海道線の田町駅と品川駅との間にあり、山手線、京浜東北線双方の電車が停車するこの駅は開業前から何かと人々の関心を呼んだ。

 まず挙げられるのは、山手線の電車が停車する駅が新たに開設されるのは、1971(昭和46)年4月20日に開業した西日暮里(にしにっぽり)駅以来49年ぶりの出来事だという点である。そして、この駅が「グローバルゲートウェイ品川」というコンセプトのもと、同社の車両基地であった場所に築かれる新たな街の中心となる駅であるという点だ。

 いっぽうで、公募の結果を反映して決められた「高輪ゲートウェイ」という駅名については多くの議論を呼び起こしたことを覚えている人も多いであろう。開業が近づくと、今度は明朝体を用いた駅名の看板が格好悪いとか弱々しいと批判される。

 晴れの開業日も新型コロナウイルス感染症の拡大によって水を差される形となった。このころまだ外出の自粛は求められなかったものの、政府からは3密を避け、大規模なイベントは見合わせるように要請されていたから、開業したばかりの駅を見学に行くとはいかがなものかと、後ろ指を指されかねない状況となる。結果として、東京の都心という交通至便な場所にありながら、まだ高輪ゲートウェイ駅を訪れていないという人も多いのではなかろうか。という次第で、開業から半年という節目を機にこの駅の現在の様子を伝えたい。筆者(梅原淳)は9月9日に高輪ゲートウェイ駅を訪問し、同時にこの駅について筆者が抱いた疑問にJR東日本から回答を得られたので、あわせて紹介しよう。

南西から見た高輪ゲートウェイ駅。駅舎のデザインは隈研吾建築都市設計事務所が中心となって進めた。写真提供:JR東日本
南西から見た高輪ゲートウェイ駅。駅舎のデザインは隈研吾建築都市設計事務所が中心となって進めた。写真提供:JR東日本

コロナ直撃、気になる駅の利用者数は

 高輪ゲートウェイ駅周辺に築かれる新たな街は道路の一部を除いて完成していない。このため、大多数の人々にとって高輪ゲートウェイ駅へのアクセスは山手線か京浜東北線の電車であろう。駅に掲示された時刻表で確認すると、平日には早朝の4時33分発の京浜東北線大宮行きに始まり、深夜1時14分発の山手線外回り品川行きまでの20時間41分に山手線外回りが300本、同内回りが299本、京浜東北線南行(品川・蒲田方面)が269本、同北行(東京・上野方面)がやはり269本の合わせて1137本の電車が発着する。平均すると約1分05秒おきに1本の電車が高輪ゲートウェイ駅に停車している計算だ。

 JR東日本によると、乗車人員と言ってこの駅から電車に乗った人の数は3月14日から31日までの18日間で約40万人(1日平均2万2222人)、4月は約16万人(同5333人)、5月も約16万人(同5161人)、6月は約31万人(同1万333人)、7月は約35万人(同1万1290人)、8月は約34万人(同1万968人)であったそうだ。同社は開業当初の1日の乗車人員を2万人程度と見込んでいた。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、4・5月は予測を下回ったが、6月以降は回復傾向にある。

 なお、高輪ゲートウェイ駅の乗車人員のうち、定期乗車券以外の普通乗車券類で利用する人の数は平日も土休日もあまり変わらないという。普通乗車券類での利用者の多くは高輪ゲートウェイ駅の見学が目当ての人たちであるからと考えられる。実際にこの駅に降り立ってみると、ホームやコンコースで記念写真を撮っている人の姿が目立った。

 山手線や京浜東北線の乗客の大多数にとっては、自分が乗り降りしない駅に新たに停車し、電車に乗っている時間が延びるのはあまり面白くないであろう。市販の時刻表を見ると、高輪ゲートウェイ駅開業前後で電車の運転時間にそう大きな差は生じていない。延びたと言っても1、2分程度で、変化のない電車も多く見られるし、1分程度短くなった電車もあった。

ホームの配置は路線ごと 将来のまちづくりを考慮して

 高輪ゲートウェイ駅のホームに降り立つと面食らう人がいるかもしれない。東西方向にホームが2面設置されているうち、東側の1面には京浜東北線の南行と同じく北行とが、西側の1面には山手線の外回りと同じく内回りとがという具合に、山手線用と京浜東北線用とに分かれているからだ。品川駅方面、東京駅方面の電車がどちらのホームからも発着していて少々利用しづらい。このような線路の配置を線路別配線という。路線ごとに並べられていると言い換えたほうがわかりやすいかもしれない。

2面設置されたホームのうち、西側の1面には山手線の内回り、外回りの各電車が発着する。写真提供:JR東日本
2面設置されたホームのうち、西側の1面には山手線の内回り、外回りの各電車が発着する。写真提供:JR東日本

 ホームの使用状況は隣の田町駅でがらりと変わる。東側の1面には京浜東北線の南行と山手線の外回りとが、西側の1面には山手線の内回りと京浜東北線の北行とがという具合に、2面のホームに品川駅方面、東京駅方面と同一方面の列車がそろえられて発着しているのだ。このような線路の配置は方向別配線と呼ばれる。

 利用者にとっては田町駅のようなつくりのほうが便利だ。新たに開業した高輪ゲートウェイ駅がなぜ田町駅のような方向別配線とならなかったのであろうか。JR東日本に聞くと、次のような答えが返ってきた。

「高輪ゲートウェイ駅のホーム使用方法を方向別配線とするためには、品川駅との間で山手線と京浜東北線とを立体交差させることが必要です。高輪ゲートウェイ駅の位置設定を将来のまちづくりにおける中心位置として検討した結果、立体交差の位置は田町駅との間に設けることとなったため、線路別配線となっています。方向別配線への変更は、駅位置の変更を伴うため予定していません。」

 実を言うと、0.9km離れた高輪ゲートウェイ駅と品川駅との間で山手線と京浜東北線とを立体交差させること自体は可能だが、もう一つの計画によって実現できない。この区間には将来、都道環状4号線が山手線や京浜東北線の線路の上空を横切る予定となっていて、すでに工事が開始された。道路を避けて山手線と京浜東北線とを立体交差させるには両駅間の距離が短すぎ、山手線と京浜東北線との立体交差が道路も越えるような構造とするとやはり両駅間の距離が足りないのだ。ならば立体交差を設置するために高輪ゲートウェイ駅の位置を田町駅に動かすことも考えられたが、JR東日本の言うとおり、これではまちづくりに影響が出てしまうのであろう。

「温室風」ながら、酷暑でも過ごしやすい駅舎

 ホームに降り立つと高輪ゲートウェイ駅の特徴でもあるガラス張りの壁、そして大きな吹き抜けが目に入る。エスカレーターで2階のコンコースに向かうとさらに視界が開けていく。和紙をイメージしたという白色基調の膜で覆われた屋根を通して空が透けて見えているからだ。

 筆者が高輪ゲートウェイ駅を訪れた9月9日午前11時ごろの天候は快晴で、気温は32度を超えていた。壁のほぼ全面を透明なガラスで覆われたコンコースは、屋根の膜と相まって温室の中にいるようで汗だくとなっても仕方がないが、あまり暑さは感じられない。空調装置がフル稼働しているのかと思いきや、コンコース内の空調装置はトイレ、それから後ほど紹介する売店の「TOUCH TO GO」以外には設けられていないそうで、代わりに意図的に風が通るような開口部が設けられているという。

 酷暑の日でも高輪ゲートウェイ駅が暑くならないのは、屋根に用いた膜が光を内部に採り入れるいっぽうで熱を反射する性質を備えているためだ。それでも暑い場合、屋根上に置かれた除雪用の散水設備が屋根に水をまき、打ち水効果で膜表面の温度を下げるそうだが、今年の夏は水をまいていないという。

警備ロボットに守られ、案内AIロボットに教わる

 コンコースに着くと、警備ロボットがとてもゆっくりとした速度で巡回中であった。このロボットの背丈は180cmほど。「画像撮影中」というステッカーが側面に貼られ、傍らには担当者がいてリモコンらしきものを操作していた。

 警備ロボットはほぼ毎日、午前10時から16時まで巡回している。開業当初から今日まで使用している間に画像を認識する機能、特に目の不自由な人が携えている白杖を検知する機能の向上が図られたそうだ。課題としては、より実際の警備員に近い機能の搭載や異常時への対応能力の向上となっていて、防犯カメラとの役割分担も今後検討される。

警備ロボット。大人の男性の背丈ほどの高さがある。写真提供:JR東日本
警備ロボット。大人の男性の背丈ほどの高さがある。写真提供:JR東日本

 コンコースには「駅案内AIサイネージ」「BotFriends Vision(ぼっとふれんずビジョン)」「AIさくらさん」「EMIEW3(エミュースリー)」と4基の据え置き型案内AIロボットが待ち構えていた。JR東日本によると、不慣れな利用者ばかりであった開業初日には4基合わせて9800件もの案内を行ったという。

 これらのロボットのうち、「BotFriends Vision」「AIさくらさん」の2基は女性のキャラクターが案内するということで、面白半分にセクハラ気味の質問をした人がいると当「Yahoo!ニュース」でも報じられた。これを聞いて筆者は頭を抱えてしまい、解決策として「そのような質問には答えたくありません」とでも返して強制終了してしまえばよいと考えたほどだ。

 実際にこれらの案内AIロボットを利用してみると、コロナ禍の影響もあって受話器が使用できないようになっていて、質問はマイクのみで受け付けていた。こうなると周囲にも聞こえるような声で話しかける必要があり、言っている本人が恥ずかしくなるような質問はできない。

 筆者は「みどりの窓口はどこですか」、そして「第一京浜国道に行きたいのですが」と2つの質問を「BotFriends Vision」と「EMIEW3」とに投げかけてみた。最初の質問についてはどちらからも「この駅にみどりの窓口はありません」との返事を得られ、なるほどと感心した次第だ。続いての質問については、前者は駅を出てからの道順と質問の意図を汲んでくれたものの、後者はなぜか電車に乗って品川駅で京浜急行電鉄本線に乗り換え、梅屋敷駅で下車するようにと案内された。

 AI技術については詳しくないが、要するに筆者が発した質問が案内AIロボットにとって初めてであったのかもしれない。JR東日本によれば、案内AIロボット全般の課題として利用者のさらなるニーズに応えていくのは当然として、利用者が携えているスマートフォンとの役割分担の検討が必要だと考えているという。

据え置き型案内AIロボットの「BotFriends Vision」。女性キャラクターの名は「小石川彩さん」だという。写真提供:JR東日本
据え置き型案内AIロボットの「BotFriends Vision」。女性キャラクターの名は「小石川彩さん」だという。写真提供:JR東日本
同じく案内AIロボットの「EMIEW3」。写真手前の案内デジタルサイネージと連携して案内を行う。写真提供:JR東日本
同じく案内AIロボットの「EMIEW3」。写真手前の案内デジタルサイネージと連携して案内を行う。写真提供:JR東日本

未来の駅を先取りし、多種多様なロボットが活躍中

 訪れた時間帯には稼働していなかったが、高輪ゲートウェイ駅にはほかにも清掃ロボットの「EGrobo(イージーロボ)」「CLINABO(クリナボ)」、消毒作業ロボットの「CLINABO CL02(クリナボシーエルゼロ2)」「Whiz(ウィズ)」「PATORO(パトロ)」、移動案内・広告ロボットの「Station Service Robot(ステーション・サービス・ロボット)」「HOSPI(ホスピー)」、移動支援ロボットの「WHILL NEXT(ウィルネクスト)」、手荷物や軽食・飲料を運ぶロボット4種類、立ち乗りタイプの移動用ロボットが活躍している。これらのうち、消毒作業ロボット、手荷物や軽食・飲料を運ぶロボット、立ち乗りタイプの移動用ロボットはこの夏以降にデビューしたばかりだ。残りは開業当初から使用されて実績を積んできたので、課題も浮き彫りになってきた。

 清掃ロボットは終電後から始発前にかけてのほぼ毎晩、2階のコンコースを清掃している。課題はロボットの導入を前提としたバックヤード、いわゆる準備基地が必要なことだそうだ。

 移動案内ロボットは5月から8月まで毎月1週間程度コンコースを巡回した。また、移動支援ロボットは6月の中旬から下旬にかけてと8月初旬とに実証試験を行い、利用者が体験乗車を行っている。両者共通の課題として、移動範囲をもう少し増やすこと、エレベーターと連携してフロア間を移動すること、複数のロボットが同時に移動する際や混雑時の動作などが挙げられたという。

 これだけロボットがいると高輪ゲートウェイ駅は無人駅かと考えてしまうが、駅長も駅員も常駐している。駅員の数は時間帯によって変えているので一定ではないものの、少なくとも数人は業務に就いているそうだ。

無人AI決済店舗、QRコード対応自動改札機といった新機軸

 高輪ゲートウェイ駅の新機軸はまだある。

 コンコース内の売店「TOUCH TO GO」は、商品を手に取ってレジに向かうだけで金額が提示される無人AI決済店舗だ。支払いの際には交通系ICカードを読み取り機にかざせばよい。気になる商品の認識率は20万円から30万円まで売り上げるごとに集計した結果、90パーセントを超えているのだとか。筆者は運よく90パーセントのグループに入ったが、10パーセント近いほうとなったらとも心配になった。ともあれ、システムのアップデートは頻繁に実施されていて、ほぼ100パーセントの認識精度となる日は近いのかもしれない。

無人AI決済店舗の「TOUCH TO GO」。写真提供:JR東日本
無人AI決済店舗の「TOUCH TO GO」。写真提供:JR東日本

 高輪ゲートウェイ駅の改札口は田町駅寄りに1カ所設けられ、西側の第一京浜国道側を向いている。改札口には9基の自動改札機が設置されており、これらのうち出入り双方に利用できる中央寄りの2基にはICカードのタッチのしやすさ、それからQRコードの読み取り機能という新機軸が採り入れられた。

 従来型の自動改札機では、ICカードのタッチ部は手前から奥へと向けて緩く斜め上がりになっているいっぽうで、左右方向には角度は付いていない。新機軸が導入された自動改札機は左右方向に角度が付いているが、前後方向には角度は付いていない。従来型はタッチの際にICカードを置く動作が必要だと筆者は認識していたが、新型はかざすだけで通過できる。実際に通ってみると、急な角度が付いていることもあり、ICカードをしっかり触れさせようとすると手を滑らせて落としてしまった。これからは軽くタッチするだけに変えたほうがよいかもしれない。ともあれ、JR東日本によればICカードタッチ部には大きなトラブルもなく順調に稼働しているそうだ。

 QRコードの読み取り機能については、現状ではそもそも対応するきっぷが存在しないので、何とも言えない。9月15日からテスト運用が行われているとのことで、結果が良好ならばきっぷにQRコードが印刷される日が訪れるであろう。

ICカードのタッチ部(写真左)の向きが従来型とは異なり、QRコード読み取り機能が装備された自動改札機。写真提供:JR東日本
ICカードのタッチ部(写真左)の向きが従来型とは異なり、QRコード読み取り機能が装備された自動改札機。写真提供:JR東日本

駅前の看板、広場、これから開発される街

 駅を出て後ろを振り返ると、話題となった明朝体の駅名表示が目に入った。JR東日本が通常用いているゴシック系の文字に見慣れているので、違和感を覚える向きも多かったようだが、筆者は特に悪いとは思わない。目の不自由な人たちには見づらいのではとのことで何とも言えないが、筆者のように近眼に乱視が加わり、老眼もひどくなりつつあるという状態でも見づらくはなかった。

 明朝体による駅名の表示はもう1カ所に発見でき、駅舎の正面側で田町駅寄りの端に金属製の切り抜き文字が取り付けられている。こちらは表示というよりも装飾という性質を帯びているらしく堂々としていた。コスト面で難しいのであろうが、他の駅にも取り付けてほしいものだ。

明朝体の切り抜き文字による駅名の表示は住宅でいう表札に当たり、駅の顔とも言える。筆者撮影
明朝体の切り抜き文字による駅名の表示は住宅でいう表札に当たり、駅の顔とも言える。筆者撮影

 筆者が訪れた当日には入ることはできなかったが、駅前には広場が設けられている。ここでは7月14日から9月6日までの55日間、「Takanawa Gateway Fest」というイベントが開催された。本来であれば3月19日からの開催となるところ、コロナ禍で期間は短縮されたものの、それでも延べ4万5000人の来場者を集めたという。残念ながら、今後イベントが開催される予定はないそうだ。

写真左に見える駅前広場でイベントは開催された。写真提供:JR東日本
写真左に見える駅前広場でイベントは開催された。写真提供:JR東日本

 繰り返すように駅の周辺はこれから開発されることとなっていて、建物も施設もまだ何も完成していない。気になるのはどのような建物、施設が最も早くできあがるのかだが、JR東日本によると未定だという。

 新しい街全体のオープンは2024年度の予定で、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響はいまのところ生じていないらしい。ただし、ウィズコロナ、アフターコロナと言われるほど昨今の社会の情勢は変わってしまった。まだ時間はあるので、経営環境や働き方・暮らし方の変化など、市場の動向を見据えて柔軟に対応していきたいとはJR東日本の弁だ。4年後の高輪ゲートウェイ駅、そして新しい街はどのような姿となっているのであろうか。