とんねるずはユーチューバーだった? ストリーミング配信の盛況と長寿番組終了でバラエティはどう変わるか

もはやリビングルームの中心がテレビという時代は終わりかもしれない。(写真:アフロ)

動画ストリーミングサービス群雄割拠

日本でも、芸能界の一流タレントがインターネットの動画ストリーミングサービスで番組を持つ機会が増えている。動画ストリーミングサービスというとピンとこないかもしれないが、「Netflix(ネットフリックス)」、「Hulu(フールー)」、「Amazonプライム・ビデオ」、「AbemaTV(アベマティービー)」、「ニコニコチャンネル」、「GYAO!(ギャオ)」など、インターネットで動画をストリーミングしているサービスのことだ。サービスによっては、「サブスクリプションモデル」と呼ばれる定額制課金を前提としている。月額料を払うと、観たい放題動画を見られるという仕組みだ。

動画配信は、視聴者数のカウントや、契約者のカウントが各社微妙に異なるか、発表されていないことも多いので、どこが人気なのかはいまいちわかりづらい。ジャストシステムが今年6月に1,100人を対象にアンケート調査したところ、利用者数の最大手は「Amazonプライム・ビデオ」だった。また、2位の「GYAO!」も含めて2社が、アンケート回答者のなかで、利用客数が10%を超えているサービスで、3位の「ニコニコチャンネル」、海外では大手と言われる「Netflix」、「Hulu」あたりが今のところ大手扱いだろうか。

筆者も「Amazonプライム・ビデオ」などを利用しているが、ここのところ睡眠時間に支障が出てきているので要注意だ。テレビのように時間帯を合わせなくて済むので気に入っている。たぶん僕の人生で、今後テレビの視聴時間がネットストリーミングの時間を上回ることはないのではないかと考えている。

元SMAPメンバー、ダウンタウン、明石家さんま。相次ぐ一流タレントのネット進出

そんなストリーミングサービスに、多くの地上波放送のエース級のタレントが相次いで進出している。ここ最近の大物タレントのストリーミングサービス進出を簡単にまとめておこう。

* 松本人志(ダウンタウン)

ドキュメンタル(Amazonプライム・ビデオ/2016年11月、第一シーズン放送開始)

* 浜田雅功(ダウンタウン)、千原ジュニア

戦闘車(Amazonプライム・ビデオ/2017年10月6日放送開始)

* 香取慎吾、草なぎ剛、稲垣吾郎

72時間ホンネテレビ(AbemaTV/2017年11月2~5日放送)

* 明石家さんま

Jimmy~アホみたいなホンマの話~(Netflix/配信延期中)

また、テレビの地上波ゴールデンタイムでメインの番組を持つクラスの大物芸能人では、ウッチャンナンチャンの内村光良が、「内村さまぁ~ず」という番組を10年以上にわたって放送している。一方で、地上波の人気バラエティ番組が相次いで終了、あるいは終了予定である。ここ数年で終わった人気番組を軽く振り返ろう。

ここ2年の間にレギュラー放送が終了した/終了が決まった番組一覧

「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系/2018年春終了予定)

「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系/2018年春終了予定)

「SMAP×SMAP」(フジテレビ系/2016年末終了)

「ライオンのごきげんよう」(フジテレビ系/2016年春終了)

「チューボーですよ!」(TBS系/2016年末終了)

「大改造!!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日系/2016年11月終了、以降不定期放送)

「さんまのまんま」(フジテレビ系/2016年秋終了、以降不定期放送)

視聴率の低下がうわさされているフジテレビ系の番組が多いが、他局の番組でも終わるケースが多いことがうかがえる。この流れは、ますますタレントのストリーミング放送進出に弾みをつけるはずだ。

筆者としては、地上波放送よりも実験的な番組を放送できる余地が強そうなストリーミングで面白い番組がどんどん増えることを期待しているので、これはいい流れだと考えている。では、地上波からネット上へと移行することで、番組の内容にも変化があるのだろうか。僕はあると考えている。どのような変化が起こる可能性があるか、考えてみよう。

ストリーミングサービスでバラエティ番組から消えるもの

さて、ここからは筆者の予想である。おそらく、今後も地上波で人気のタレントが動画ストリーミングに登場する機会は増えるだろう。たとえ地上波放送がなくなっても「バラエティ番組」がなくなることはない。コンテンツはいつも、メディアそのものより強い。ベートーベンの「運命」はYouTubeだって聴ける。いや、そこまで大げさな例でなくても、ファミコンをプレイする人がいなくなっても「ドラゴンクエスト」シリーズは生き延びている。ただ、インターネットで視聴する視聴者のニーズに合わせて、少し変化することがあると思われる。以下、考えられる状況を紹介しよう。

【予想1】何らかの影響で活動を自粛・休業しているタレントが積極的に起用される

筆頭は2006年からタレント活動を自粛していた山本圭壱(極楽とんぼ)の活躍だろう。「極楽とんぼ KAKERU TV」(AbemaTV)、「すいません、山本ですが。」(DMMオンラインサロン)、「山本圭壱のCrack a smile!」(GYAO!)、「極楽とんぼ 山本圭壱の〇本圭壱」(YouTubeチャンネル)、「ドキュメンタル」、「戦闘車」と立て続けに各社ストリーミングのバラエティ番組に出演し、精力的に活動している。ほかにも、1996年から画家に転向したジミー大西は自身の半生をモデルとしたドラマ「Jimmy」のほかにも「ドキュメンタル」などにも出演し、芸能界へのカムバックをアピールしている。

今後も様々な事情で地上波に出なくなったタレントが再び芸能活動を始めるにあたって、インターネットは非常に重要な役割を与えるのではないだろうか。考えてみれば、元SMAPのメンバー3人も、事務所との独立をめぐるトラブルがなければ、おそらくストリーミングの番組には登場していなかっただろう。

【予想2】バラエティ番組を象徴する「ひな壇」はなくなる可能性も

「ひな壇」とは、テレビのトークバラエティなどで、タレントが複数段ある座席に座っている席を表す。ひな壇席がまるで七五三のひな壇に似ていることから、そう呼ばれるようになった。また、そういう座席によく座っているタレントを指して「ひな壇タレント」などという言葉も浸透しつつある。業界用語の一種だが、現在は一般にもよく使われている。

あなたが地上波のゴールンデンタイムの民放バラエティのプロデューサーだったと想像してほしい。最低でも、視聴率10%以上の番組を作りたい。視聴率10%ということは、視聴者数およそ1200万人である。あなたは1200万人をテレビの前で、同時間帯に座らせないといけない(録画はビデオリサーチの視聴率に反映されない)。日本で最も売れたCDアルバム、宇多田ヒカルの「First Love」の総売上枚数が765万枚(オリコン集計)とも言われている。宇多田ヒカルのFirst Loveを買った人全員がテレビの前に座っても視聴率10%までまだ500万人も足りない(おそらくCDを2枚以上買った人も含まれているので)。地上波放送がどれだけたくさんの顧客をターゲットにしているか想像がついただろうか。

さて、そんな大きなマスをターゲットにするために生み出されたシステムの1つがひな壇であると僕は考えている。ひな壇には、「若手芸人」「グラビアアイドル」「大御所俳優」「ミュージシャン」「モデル」「アイドル」「声優」「(元)スポーツ選手」「文化人」といった様々な人たちが座る。たとえば、あなたがバラエティ番組に出演中の声優のファンであれば、その番組の企画に興味がなくても、ひとまず見てみようかと思うだろう。それぞれのタレントのファンの数は宇多田ヒカルより少ないだろうが、寄せて集めればなんとか視聴率を確実にアップさせる要因となる。メインとなるおかずがなくても幕の内弁当として人気を集めようという魂胆である。

でも、これは地上波の方法論だ。なぜなら、自ら視聴ボタンを押すストリーミングでは、それほど大きなマスをターゲットにしなくても十分だからだ。逆に、番組の主旨と関連の薄いタレントを呼ぶと、視聴者が離れていってしまう。

ここまでひな壇をどちらかと言えば悪く書いたが、いいところもある。「芸人」や「ミュージシャン」がみたい子どもたちと、「大御所俳優」「文化人」がみたいおじいさんおばあさんが、一緒に画面の前で座っていられる。これはリビングにあるテレビの電源ボタンを消すかどうかにおいて大きなメリットになる。

こうやって考えると、ひな壇はいまだにリビングに1台しかテレビがない状況を想定した番組を作っていると言えるかもしれない。なお、「アメトーーク!」のような芸人のみの番組、「ミュージックステーション」のようなアーティストがひな壇席に座っているような番組の場合はこの限りではない。メインとなる視聴者(お笑い好き、音楽好き)は満足するからだ。

【予想3】VTRを見ながらタレントがリアクションする「ワイプ」がなくなる

ワイプとは、番組でVTRの映像が流れるなか、スタジオの一部が画面の端に流れるあれを指す。あれは何のためにあるのか。それは「なんとなくテレビを見ている人」への制作サイドの配慮だろう。何かをやりながらテレビをつけっぱなしにしている状態であれば、当然画面への集中力は低い。となれば、なるべくわかりやすい演出が施されることになる。本来はVTR中においしそうな食事が画面に映っていればそれでいいのだが、「おいしそー」とリアクションするタレントを画面の端に映すことで、「ああ、これはおいしそうなんだな」という情報をなんとなく見ている視聴者に伝えることができる。

しかし、ストリーミングの場合、視聴者はテレビより集中度は高いだろう。何せその番組が見たいからわざわざ検索してたどり着いているわけなのだから。逆に、真剣に画面を見ている層にはそのような演出は過剰に見えるかもしれない。

そもそも、VTR中心の番組の場合、スタジオそのものがいるかという話になってくるかもしれない。なぜなら、VTRを見ながらツッコミやリアクションを入れる役目は、インターネットではコメント欄やツイッターがあればいいのかもしれないから。

【予想4】生放送の番組が増加

「戦闘車」などの目玉コンテンツであれば、映画やドラマと同じような作り方で、時間をかけて制作していくことが可能だろう。しかし、多くの番組は地上波より予算が削減されると思われる。実は生放送の方が製作費は安上がりなのだ。編集は必要なく、収録時間=放送時間だからだ。しかも生放送はすぐにリアクションが返ってくる双方向性のインターネットに向いている。

よって、生放送の番組が増えることは確実だろう。「72時間ホンネテレビ」がほとんど生放送だったことは偶然ではない。

【予想5】ドラマなどの場合、前回のあらすじ的なシーンがカットされる

ドラマなど連続性があるコンテンツの場合、地上波であれば過去放送をリプレイしてわかりやすくする。一方でストリーミングの場合は、筋がわからなければ過去回を自分で見直せば済む。しかも、見逃している人も少ない。よって、わざわざあらすじを本編で放送する必要はなくなる。

このように、様々な面で地上波放送とは変わった番組制作が行われるものと思われる。そしてあなたも直感的に思うだろうが、それは本当に「番組」を楽しみたいユーザーにとってはプラスの処置が多いように思われる。

(最後に)あの大物芸人には、ストリーミング進出を進言する!

地上波の長寿番組終了のなかでも最も打撃を受けるのが「みなさんのおかげでした」(以下、みなさん)のとんねるずだろう。なぜなら、「めちゃイケ」のナインティナインのように他のレギュラー番組に出演しておらず、「みなさん」が終了すれば、あとは半年に一度しか放送しない「とんねるずのスポーツ王は俺だ!」(テレビ朝日)のみが彼らのレギュラー番組になる。半年に1回しかテレビに出ないとすればそれはもうセミリタイアだ。しかもその番組だって今後どうなるのかはわからないのだ。

そんなとんねるずには、ぜひストリーミングに来てみることをオススメしたい。なぜなら、とんねるずは僕が思うに「元祖・素人芸」だからだ。それまで、日本のテレビはよくも悪くもプロのものだった。ビートたけしも明石家さんまも、芸人として劇場に出るなかで、テレビに出演する機会をつかんだ。ドリフターズやクレージーキャッツはコミックバンドとして、舞台に出る経験が長かった。タモリはそれらとは少し違う芸風で世の中に出てきたので、「密室芸」(舞台ではなく、部屋で仲間内で即興で笑いを取るところからプロになったのでこのように呼ばれる)と呼ばれるが、除籍したものの早稲田大学に入学したインテリ芸人である。タモリには教養という武器があった。

そのような人たちと比べてデビュー当時のとんねるずには何もなかった。高校の部室で仲間内に受けるような芸をテレビで披露し世の中に登場する。多くの大人は彼らの芸を子供じみていると評価したが、そんな彼らのふるまいに、当時の若い視聴者は新しさを感じたのだ。そう、それはまるで、現在のYouTuberのようなものではないか。

僕は、「素人芸、あるいは少なくとも舞台ではなくテレビという媒体向けの芸風」がお笑いとして定着したのは、タモリが下地を作ったものの、とんねるずが登場して以降のことだと考えている。そして、YouTuberに代表されるように、現代の素人芸といえばインターネットとともにある。

お笑いタレントがCDを出すことが珍しかった時代に「一気!」というコミックソングを出したときは、現代風に言えばYouTuberの「歌ってみた」「踊ってみた」のような状況であり、「歌ってみたらベストテンや紅白に出ちゃった」状態である。

またとんねるずは若手の頃から一貫して、「炎上芸」でもある。スタジオのセットを壊す、素人をイジる、何かしらの問題発言や問題行動がニュースになる。「みなさん」の初期では、「木梨憲武が盲腸で死んだ」という設定の番組を放送し、視聴者の苦情が殺到した。こういった芸風も良かれ悪かれ、インターネット的とは言えまいか。現在の地上波放送ではできないようことを彼らは繰り返していた。そしてそれは、いまのストリーミングのバラエティ番組にぴったりである。