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デジタル化でどんどん溜まる人間系データをどう活かすのかーー政府・自治体の「データ資源戦略」が必要

上山信一慶應大学名誉教授、経営コンサルタント、大学院至善館特命教授
出典:エストニア政府

 デジタル庁構想を機に、遅れていた政府、自治体の電子政府化がようやく加速し始めた。政治主導は常に「わかりやすさ」「国民受け」を意識する。そこで電子申請など目先の利便性が強調されがちだ。しかしデジタル化のメリットは事務処理の迅速化だけではない。デジタル処理の後には日々、データが蓄積されていく。政府、自治体はこの蓄積データ(私はこれを「足跡」と呼んでいる)を戦略資源として活用することが重要だ。

 「20世紀の石油に代わり21世紀はデータが戦略資源になる」といわれる。しかし政府は今のところ「個人データの保護」の議論で忙しい。あるいはせいぜいがAPIによる官民のデータ連携が意識されるに過ぎない。しかし政府(自治体)は個人の出生、教育、納税、居住、年金、健康などに密着し、いやおうなしに全国民(住民)の人生データを蓄めこんでいく。これら人間系データの蓄積、利用、保管(秘密保持を含む)の戦略は国家戦略課題の一つである。

 政府は水資源戦略や宇宙資源戦略を立てている。それと同様にデータ資源戦略を立てるべきだろう。ポイントは中央政府と自治体の連携である。生データはほとんどが自治体にある。それを体系的に整理し、蓄積していくのは中央政府の仕事だろう。デジタル庁は当面、政府業務のデジタル化で忙しいだろう。しかし早くこの問題に取り組んでほしいものだ。

●戦略資源となるデータは何か?

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慶應大学名誉教授、経営コンサルタント、大学院至善館特命教授

専門は戦略と改革。国交省(旧運輸省)、マッキンゼー(パートナー)を経て米ジョージタウン大学研究教授、慶應大学総合政策学部教授を歴任。アドバンテッジ・パートナーズ顧問のほかスターフライヤー、平和堂等の大手企業の社外取締役・監査役・顧問を兼務。東京都・大阪府市・愛知県の3都府県顧問を歴任。著書に『改革力』『大阪維新』等。京大法、米プリンストン大学院修士卒。これまでに世界119か国を旅した。オンラインサロン「街の未来、日本の未来」主宰 https://lounge.dmm.com/detail/1745/。1957年大阪市生まれ。

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