働き方改革関連法案:高プロへの「ニーズ」に関し、加藤大臣が1月31日に披露していた悪質な「ご飯論法」

参議院予算会議事録(2018年1月31日)(色付けは筆者による)

<要旨>

加藤厚生労働大臣は1月31日の答弁で、高プロについて、「そういった是非働き方をつくってほしいと、こういう御要望をいただきました」と答弁していたが、それは合成された虚偽答弁だったことが明らかに。

はじめに

 野党と労働団体、過労死を考える家族の会などが強く反対している「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の創設を含む働き方改革関連法案が、6月14日にも参議院厚生労働委員会で強行採決されるのではないかと案じられている。

 その中で、高プロに対する労働者の「ニーズ」として示されてきたヒアリング内容について、参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑を通して、数々の矛盾・改ざん・隠蔽が明らかになってきた。新聞も少しずつ報じ始めているが、まだ詳細には報じていない(下記の中では朝日新聞の記事が時系列のインフォグラフィックスもついて、わかりやすい)。

2月に高プロのヒアリング実施 野党追及の翌日、9人に- 共同通信(2018年6月7日)

働き方改革関連法案:高プロ根拠「後付け」 聞き取り、9人は野党質問翌日- 毎日新聞(2018年6月8日)

厚労省の高プロ是非 聞き取り 大半が法案概要決定後- 東京新聞(2018年6月8日)

高プロ根拠、「後付け」調査 ヒアリングの大半、野党追及の翌日:朝日新聞デジタル(2018年6月9日)

 週明けの6月12日(火)の参議院厚生労働委員会では、改めてそれらの矛盾・改ざん・隠蔽が追及されると思われる。

 筆者はこの高プロの「ニーズ」に関するヒアリングについて、16項目にわたる矛盾・改ざん・隠蔽を見つけた。本記事の末尾に【補論】として項目列挙の形でそれらを示すが、それらを検討していく中で、ツイッターのフォロワーの方からの指摘を受けて、新たに重大な問題に気付いた。前回の記事(下記)で、加藤大臣が虚偽答弁を行ったと指摘した、1月31日の参議院予算委員会における答弁に関して、だ。

高プロのニーズ聞き取りについて、加藤厚生労働大臣が1月31日に虚偽答弁を行っていたことが判明(上西充子)- Y!ニュース(2018年6月8日)

 上の記事では、加藤大臣がみずから話を聞いていたかのように答弁していた研究職の方の声は、実は2015年3月に労働基準局の職員が聞き取ったものであることが明らかになったため、虚偽答弁だったと書いたのだが、この1月31日の答弁は、より巧妙に細工が施されたものであったことがわかったのだ。

まずは映像で質疑の内容の確認を

 まずは、1月31日の参議院予算委員会における実際のやり取りを映像でご確認いただきたい。高プロについて、「働く者の側からの要請があったというふうに理解してよろしいでしょうか」という浜野喜史議員の質疑に対する加藤大臣の答弁だ。

 この質疑の全体は、下記の映像の冒頭部分にある。上に切り取られたものは、3:30からだ。

参院予算委総括質疑 民進党・浜野喜史議員 2018年1月31日

 普通に聞けば、研究職の方の意見を加藤大臣が直接聞いたように聞こえるだろう。そしてその研究職の方が、高プロを希望しているように聞こえるだろう。浜野議員もそれを前提にして、その要望について、記録はあるのかと問うている。それに対し、加藤大臣は、

今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます

と答え、その記録は残っているのかと重ねて問うた浜野議員に対し、

記録を残す、あるいは公表するということを前提にお話しをされたものではございません

と、記録があるかどうかの説明を拒んでいる。

浜野議員が、

記録はないわけですね。もう一度確認させてください

と問うても、加藤大臣は

公表するという意味でお聞かせをいただいたわけではありませんが・・・

と答弁している。

研究職の方の声は、2015年3月のヒアリング内容だった

 しかし、前回の記事にも書いたように、5月16日に厚生労働省が公表した下記の「ヒアリング概要」によれば、この研究職の方の声は、下記の1番目の方の声と同じである。そして、6月5日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑で明らかになったところによれば、この1番目の方に話を伺ったのは2015年3月であり、ヒアリングを行ったのは、山越労働基準局長の同日の答弁によれば、労働基準局の職員である。

 2015年3月は、加藤勝信氏はまだ、厚生労働大臣ではない。これを自分が聞いたかのように答弁していたのだから、虚偽答弁だと筆者は前回の記事に書いた。しかし、よく見るとこの加藤大臣の答弁は、2つの内容が合成されたより巧妙なものだったのだ

「その方」と「研究職」の方は、別人?

 この時のやりとりを議事録で見ると、下記の通りだ(p.9)。

参議院予算委員会議事録(2018年1月31日)(色付けは筆者による)
参議院予算委員会議事録(2018年1月31日)(色付けは筆者による)

 よくよく見ると、赤枠で囲った箇所で言及されている「その方」と、水色枠で囲った箇所に出てくる「例えば」として紹介された「研究職」の方は、どうやら別人なのだ。研究職の方の声は、

・・・こういった声を把握していたところでありまして

と言及されている。それに対し、「その方」の声は、

私もいろいろお話を聞く中で、その方は

とあるので、実際に自分で聞いた声のようだ。

 もしこのように「その方」と研究職の方が別人であれば、2015年3月に職員が研究職の方の声を聞き、加藤大臣がその声を「把握していた」ということになり、虚偽答弁ではないと、整合性は確保されるようにも見える。

 しかし、明らかにこれは、研究職の方の声を自分が聞いた声であるかのように誤認させ、その研究職の方などから

そういった是非働き方をつくってほしいと、こういう御要望をいただきました

と答弁しているかのように装うものだ

加藤大臣の高等「ご飯論法」

 国会質疑は口頭でのやり取りだから、このような巧妙なすり替えをやられては、質疑を行う野党議員にはわからない。この研究職の方の声も含めて、加藤大臣が直接、その声を聞いたのだろうと、当然、浜野議員は思っただろう。そこで、「そういう意見」について、記録は残っているのか、と浜野議員は問うている。

 それに対する加藤大臣の答弁はこうだ。ここに「ご飯論法」が隠れていることに、お気づきだろうか。

今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声でございます

 加藤大臣が嘘をついていないなら、ここでいう「そうした意見、声」とは、研究職の方の声は含んでいない。研究職の方の声は、2015年3月に労働基準局の職員が聞き取ったものだからだ(上掲のヒアリング概要の1番目)。

 であるなら、「今、私がそうしたところへ、企業等を訪問した中でお聞かせいただいたそうした意見、声」とは、議事録の赤枠の「その方」の意見、声だ、ということになる。

 これは非常に悪質かつ巧妙な「ご飯論法」だ

 「ご飯論法」とは、加藤厚生労働大臣の論点すり替えの答弁の特徴を筆者が「朝ごはん」をめぐるやりとりにたとえて紹介したことに由来する。

 これは、裁量労働制の違法適用があった野村不動産への特別指導をめぐる加藤大臣の論点すり替えの答弁をもとにしており、詳しくは下記に実際の答弁と照らし合わせて紹介した。

「朝ごはんは食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」のような、加藤厚労大臣のかわし方(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月7日)

 これを紙屋高雪氏が「ご飯論法」と名付けてツイッターで言及し、筆者が積極的にその言葉を広めたところから、論点すり替えの不誠実答弁が「ご飯論法」として国会質疑でも言及されるに至っている。

 浜野議員は、その前に加藤大臣が答弁した内容全体について、記録はあるかと問うているのに、加藤大臣は、研究職の方の声については脇において、自分が直接話を聞いた「その方」についてのみ、答えているのだ

 これは、パンは食べたけれど、そのことは言わずに「ご飯は食べておりません」と答える、それと同じだ。勝手な論点のすり替えであり、しかも、論点をすり替えていることを相手に気づかせず、誤認へと誘導する、非常に悪質なものだ

 その後、上述の通り、5月16日に12件のヒアリング概要(ちなみにこれが「12人」であるとは確認されていない)が厚生労働省より下記の通り開示されるが、ここに「その方」と同一人物と確定できる方の声は見つけられない。

 研究職の方の声は1番目のものだ。「その方」は6番目の方かもしれないが、違うかもしれない。「その方」が6番目の方であれば、加藤大臣が聞き取った法改正への要望が入っていないとおかしいが、それは含まれていない。

「その方」は実在するのか?

 そうなると、議事録の赤枠で囲った発言を行った「その方」は、「果たして実在するのか?」という問題が浮上する。なぜなら、野党がニーズのヒアリング結果の開示を求めて出されてきたものが上述の12件のヒアリング概要であり、そこには「その方」と同一視できる発言は収録されていないからだ。

 「その方」の声と研究職の方(ヒアリング概要の1番目)の声を、「例えば」という言葉であえて混同させて、加藤大臣は答弁していた。にもかかわらず、研究職の方の声はヒアリング概要に収録しながら、「その方」の声は収録していないとすれば、架空の人物に会ったと装っていたのではないかという疑惑が生じる。

 議事録の赤枠の中で「その方」の声として加藤大臣は、「自分はプロフェッショナルとして自分のペースで仕事をしていきたいんだと、そういった是非働き方をつくってほしいと、こういう御要望をいただきました」と答弁している。

 これは、「働く者の側からの要請があったというふうに理解してよろしいでしょうか」という、オレンジの枠で囲った浜野議員の質疑に対する答弁だ。あたかも、「ぜひそういう働き方をつくってほしいと、私が直接、声を聞いたんです」と言わんばかりの答弁だ。にもかかわらず、それを12件のヒアリング概要に示していないのはどういうわけなのか

 これは公表を前提としていなかったから、という言い訳は、通らないだろう。12件のヒアリングについても、当初、厚生労働省は、公表を前提としていないとして、日時の情報の開示も拒んでいた(下記の記事を参照)

高プロの「ニーズ」は、やはり捏造されていた

 浜野議員のこの質疑は、事前通告されていただろう。それに対して、「その方」の声と研究職の方の声とを意図的に混同したこの答弁は、周到に用意されたものと考えるのが妥当だろう。これはやはり、捏造を含んだ「虚偽答弁」とみなすべきだ。

 「その方」が実在したか否か、実際に加藤大臣が「その方」の声を「今」、聞いたのか否か、加藤大臣は追及されても、きっと言い逃れをするだろう。公開を前提とせずに話を聞いたのだから、と。

 しかし私たちは、「もう、いいかげんにせよ」と言うべきだ。「どこまで野党と国民を愚弄すれば気が済むのか」と。

 そして、実在するかどうかわからない「その方」が高プロについて「そういった是非働き方をつくってほしい」と加藤大臣に直接語ったことをもって、高プロは労働者の要望に基づくものであるかのように1月31日に答弁されていたことに対し、やはり今国会における高プロの議論は、出発点から策略に満ちていたことを、改めて確認しておきたい。

1月31日に加藤大臣が行っていたもう一つの虚偽答弁

 実はこの1月31日の参議院予算委員会では、加藤大臣は裁量労働制についても虚偽答弁を行っている。1月29日に安倍首相が衆議院予算委員会で言及し、2月14日に答弁撤回した、あの裁量労働制の労働時間をめぐる答弁を、この参議院予算委員会で加藤大臣も繰り返していたのだ。

ま、どういう認識のもとでですね(笑)、お話しになっているのかということがあるんだと思いますけれども、確かにいろんな資料を見ていると、裁量労働制の方が実際の、一般の働き方に比べて、長いという資料もございますし、他方で平均的な、平均で比べれば、短いという統計もございますので、それは、それぞれのファクトによって、見方は異なってくるんだろうと思います。

出典:加藤大臣、1月31日参議院予算委員会、インターネット審議中継2:47:35頃

今、議員ご指摘の資料があることも、その通りであります。また、私どもの平成25年度労働時間等総合実態調査、これ、厚生労働省が調べたものでありますけれども、平均的な一般労働者の時間が9時間・・・、これは1日の実労働時間ですが、9時間37分に対して、企画業務型裁量労働制は9時間16分と、こういう数字もあるということを、先ほど申し上げたところでございます。

出典:加藤大臣、1月31日参議院予算委員会、インターネット審議中継2:50:15頃

 裁量労働制では長時間労働が助長され過労死が増えるという森本真治議員の指摘に対し、加藤大臣は「どういう認識のもとでですね(笑)、お話しになっているのか」と笑いを含んで答え、厚生労働省の調査では裁量労働制の方が労働時間が短いと主張した。しかし、その「比較データ」は、捏造された代物だったのだ(下記参照)。

裁量労働制の比較データ問題。調査した職員とは別の担当者が問題を認識せずに比べたとの説明は、ありえない(上西充子)- Y!ニュース(2018年3月29日)

裁量労働制の拡大も高プロも、働き方改革関連法案の隠された「毒」

 安倍首相は2016年8月3日の第3次安倍第2次改造内閣発足記者会見で、「最大のチャレンジは働き方改革」と「働き方改革」を大きく打ち出し、「長時間労働を是正します」「同一労働同一賃金を実現し、『非正規』という言葉をこの国から一掃します」と宣言した。

 そうやって、「働き方改革」とは「長時間労働の是正」と「同一労働同一賃金」のことであるというイメージを定着させてから、継続審議になっていた2015年の労働基準法改正案に含まれていた裁量労働制の拡大と高プロの創設を、2017年3月の「働き方改革実行計画」にこっそり忍び込ませた。

「働き方改革実行計画」p.15
「働き方改革実行計画」p.15

 「意欲と能力ある労働者の自己実現の支援」と都合のよいことが書かれてあり、さらにこの項は、「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の項(p.10-)に収められている。いかにも収まりが悪い。

 しかも、高プロが労働基準法の労働時間規制を外すものであること、つまり使用者にとって労働者を働かせるうえでの縛りを外し、労働者を労働基準法の保護の外に放り出す法改正であるという、本質的な内容(下記の記事を参照)は、巧妙に隠されている。

高度プロフェッショナル制度「きほんのき」(1):「労働時間の規制を外す」→でも労働者は時間で縛れる(上西充子)- Y!ニュース(2018年6月1日)

 つまり、「働き方改革」という甘い皮のもとに、裁量労働制の拡大と高プロの創設という「毒」を隠した「毒まんじゅう」が、働き方改革関連法案であり、「働き方改革」は当初から策略に満ちたものであったのだ。

 加藤大臣は、その策略を首尾よく担うにふさわしい人物として、厚生労働大臣に任命されたと考えられる。そして実際に、国会開始後1週間ほどで、裁量労働制については調査データを示し、高プロについては「その方」の要望を示すことによって、野党を騙して国会質疑を乗り切ろうと、策略をしかけてきたのだ。

 しかし、裁量労働制の「比較データ」の捏造は国会質疑で暴かれて法案からの裁量労働制の拡大の削除に追い込まれた。高プロについても、労働者が求めているという唯一の立法事実であったはずのヒアリング結果が、国会質疑の中でボロボロの内実であったことが明らかになってきた。

 もう終わりにしよう。こんな、嘘と策略にまみれた働き方改革関連法案の強行採決など、ありえない

 加藤大臣は辞任すべきだ。高プロは法案から削除されなければならない。話はそれからだ

***

【補論】

 参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑から露呈してきた、高プロの「ニーズ」をめぐるヒアリングに関する矛盾・改ざん・隠蔽を、以下に16点にわたり列挙しておく。

<1>

 研究職の方に自分で話を聞いたかのような1月31日の加藤大臣の答弁は、虚偽答弁だった(参議院予算委員会、浜野喜史議員の質疑)(上記に詳述済み)。

<2>

 「ニーズ」の把握について、5月9日に加藤大臣は、「いくつかの企業と(「企業等」?)、あるいはそこで働く方から」という隠蔽的な形で情報を開示していた(参議院厚生労働委員会、岡本あき子議員の質疑)。

<3>

 法改正前にしっかりとした実態調査を行うべきと指摘した岡本あき子議員に対し、加藤大臣は、高プロは、まだ対象者がいないのに、どうやって行うのか、と開き直りの答弁を行った(5月9日、参議院厚生労働委員会)。

<4>

 5月16日に衆議院厚生労働委員会の理事会に報告された「ヒアリング概要」(下記画像参照)は、12項目に分かれているが、実施日の記載がない。福島みずほ議員らは、12名のヒアリング結果と言及しているが、答弁では「6番目の方」などとのみ言及されており、12名とは限らない。5月9日の岡本あき子議員に対する加藤大臣の答弁では、「十数名」と言及されていた。また、「企業等で働く方」とその後、言及されているため、雇用労働者に限定されているとも限らない。

<5>

 5月31日の参議院厚生労働委員会で福島みずほ議員が、12名のヒアリングは、「誰が、いつ、どこで」行ったものかと基本的なことを尋ねたものの、加藤厚生労働大臣からも山越労働基準局長からも、答弁のための手が上がらず

 加藤大臣は書類を繰ってそしらぬ振りをしている。下記の映像の11:45からを、ぜひ確認していただきたい(リンク先はその時間帯からの開始に設定されている)

「高プロ、誰が望んでいるのか?データはたった12人!」福島みずほ5/31参院・厚労委

<6>

 6月3日付の「しんぶん赤旗日曜版」の記者の取材に対し厚労省は、聞き取り実施日は「公表を前提としないことを企業と確認したので答えられない」と主張(下記記事を参照)。

<7>

 12件の「ヒアリング概要」について、6月5日の参議院厚生労働委員会における吉良よし子公表の質疑に対し、山越労働基準局長は、「これは民間の働く方、労働者の方からのヒアリングでございますので、その同意を得られた範囲でお示しさせていただくということで、了解が得られている範囲がこの範囲でございますので、この範囲にさせていただきたい」と、拒否。

<8>

 山越労働基準局長は、6月5日の参議院厚生労働委員会において、福島みずほ議員に対して、(パンは食べたけれどそれは言わない)「ご飯論法」を披露。

 「何月何日にやったのか」と尋ねた福島議員に対し、「平成27年3月、そして一番新しいものは平成30年2月に実施」と答弁。「平成30年2月何日ですか」と問うた福島議員に対しては、「平成30年2月に実施した分は平成30年の2月1日です」と答弁。これを福島議員は、2018年2月1日に9人にヒアリングを実施したと理解して質疑を続けた。

 山越労働基準局長は、それに対し、何ら訂正をせずに答弁。続く6月7日の参議院厚生労働委員会における福島議員の質疑においても、野党がニーズを問うた1月31日の翌日の2月1日になって9人のヒアリングを後付けで行ったとの批判に対し、日付の訂正を行わず。

 しかし東京新聞の記者に厚生労働省は、2018年のヒアリングは2月1日のみに実施したのではなく、1月31日と2月1日に実施したと回答した模様。「一番新しいもの」が2018年2月であったというのが山越労働基準局長の国会での答弁。もう一つの実施日である1月31日を隠蔽。

 なお、共同通信、毎日新聞、朝日新聞は、上述の記事の通り、福島議員の質疑に基づき、2月1日に9人のヒアリングを実施、と報じている。

<9>

 12件のヒアリング概要のうち、3件は2015年3月に実施し、9件は2018年に実施したものであることが判明(6月5日、福島議員に対する参議院厚生労働委員会における答弁)。いずれも高プロを盛り込んだ2015年の労基法改正案の法案要綱の労働政策審議会への諮問(2015年2月17日)よりも後であり、立法事実となる「ニーズ」をとらえたものとは言えない。立法事実たりえない。

<10>

 12件のヒアリング概要のうち、複数の事例で、企業関係者が同席。12件のうち少なくとも4件で人事担当者が同席。その他にも人事担当者が同席している可能性あり。また、人事担当者に限定されない企業関係者が同席していた可能性も排除されていない(6月5日、福島議員に対する参議院厚生労働委員会での答弁)。

<11>

 どのくらいの時間をかけてヒアリングを行ったのかとの6月5日参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑に対し、山越労働基準局長は「資料が残っておりませんので正確にはお答えできませんけれども、1時間程度ではなかったかというふうに思います」と答弁。

 しかし、6月7日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑に対する山越労働基準局長の答弁では、「私どもの日々の業務の一環としてお話をお伺いしたものをまとめたものでございまして、いつからいつまでに何件行うとか、そういうことを決めて行ったものではないところでございます」と、そもそもヒアリングという形式をとっていないかのように説明を変えた。

<12>

 12件のヒアリング概要のうち、高プロのニーズはどこに表れているのかとの福島議員の問いに対し、加藤大臣は6番目の事例しか提示できず(6月5日参議院厚生労働委員会)。「労働時間に比例してお金をもらうような仕事ではなく、プロジェクトを成功させて報酬をもらう仕事であると十分理解している。労働時間の制約があると成功できる仕事も成功できずチャンスを失うことになってしまう」というのが6番目の事例であり、そのような働き方は今でも可能であると、福島みずほ議員は反論。

<13>

 山越労働基準局長は、12件のヒアリングについて、5月31日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑に対しては、「平成27年の労働基準法案を検討している際に、労働基準局の職員がヒアリングを行ったもの」と答弁していたが、6月7日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員への答弁では、「平成27年以降」に、と答弁を修正。「最初ご質問いただいたときに、必ずしもそのご通告をいただいていなかったものですから、平成27年以降と申し上げるべきところを誤りました」と無理筋な弁明。

<14>

 6月7日に福島みずほ議員が、ヒアリングにあたって、「高度プロフェッショナル法案の一番重要なこと、『労働時間・休日・休憩・深夜業の規制がなくなります、そういう働き方を望みますか』、と聞いたんですか?」と二度にわたって問うたが、山越労働基準局長は、二度とも「いずれにいたしましても」と、答弁を始め、その問いを無視(6月7日、参議院厚生労働委員会)(下記の映像をぜひ確認していただきたい)。

<15>

 ヒアリングの正当性が崩れてきたことにより、6月7日に加藤大臣は、そもそもこの「ヒアリング概要」は、高プロへのニーズとして示したものではない、と開き直り(参議院厚生労働委員会、福島みずほ議員に対する答弁)。

<16>

 高プロは「希望する人」への「選択肢」として創設するとしてきた当初からの説明を変え、加藤大臣は6月7日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員への答弁では、「産業競争力会議→日本再興戦略改訂2014→労働政策審議会」の検討を経て提案されたものと、説明を変更するに至っている。

 産業競争力会議は下記のメンバーで構成されており、労働者委員の参加はない。経済界のニーズに基づくものであることを開き直って答弁したものか。

***

【追記】(2018年6月12日17:30)

 6月12日の参議院厚生労働委員会に、下記の報告が厚生労働省より提出された。実際の調査日時は2015年3月31日が1件、2015年5月11日が2件、浜野議員に対して加藤大臣が答弁を行った2018年1月31日が6件、その翌日の2月1日が3件であった。また、12件のうち9件で人事担当者の同席があった。

2018年6月12日の参議院厚生労働委員会の理事会に厚生労働省より提出された資料。福島みずほ議員提供。
2018年6月12日の参議院厚生労働委員会の理事会に厚生労働省より提出された資料。福島みずほ議員提供。

 同日の参議院厚生労働委員会における福島みずほ議員の質疑に対する山越労働基準局長の答弁によれば、同一人物の重複はないとのことであったが、会社について福島議員が問うと、次の通り、5社に対するヒアリングであったことが明らかになった。

A社(1)  研究開発職、人事担当者が同席

B社(2,12)コンサル(業務改善コンサルティング) 人事担当者が同席

C社(6~8)コンサル(財務アドバイザー) 人事担当者が同席

D社(9~11)コンサル(システムコンサルティング) 人事担当者の同席なし

E社(3~5)アナリスト(業界毎の株価分析・評価) 人事担当者が同席

 また、石橋みちひろ議員と福島みずほ議員が、1月31日の加藤大臣の答弁は虚偽答弁だと迫ったが、1番の人の話は「把握していた」ものであり、また、自分が聞いた話について、記録がないと答弁していたわけではないと弁明し、また、浜野議員の質問をよく読んでいただきたいとして、気色ばみながら、虚偽答弁であるという指摘を否定した。

***

【追記】  (2018年6月13日 8:00)

 昨日6月13日の参議院厚生労働委員会におけるこの件の質疑が、下記の通り各紙で取り上げられた。

高プロのニーズ調査5社のみ 野党「ものすごく手抜き」:朝日新聞デジタル(2018年6月13日)

聴取は専門職1人だけ 残業代ゼロの前身法案 国会提出前に:東京新聞(2018年6月13日)

 また、昨日の質疑を受けて改めて6月11日付の厚生労働省の文書を友弘克幸弁護士と検討したところ、この12の中に社長や役員など雇用労働者以外の者の発言が混ざっている可能性が高いことが明らかになった。詳述する余裕がないが、下記のツイートからの連続ツイートに記したので、読んでいただければ幸いである。7番や12番が、社長や役員などの発言である可能性が高いと考える。

 なお、12名のヒアリング概要の内容については、下記のブログに書き起こしされている。参照されたい。

厚生労働省が高度専門職に対して行ったヒアリング結果の概要:風前の灯ブログ(2018年6月12日)