衆院厚労委・高鳥委員長の解任決議案の前にあった大混乱。抗議の中で加藤大臣が答弁を続け、委員長は放置。

衆議院厚生労働委員会・高鳥委員長(左端)(写真は2014年のもの)(写真:アフロスポーツ)

<要旨>

高鳥修一衆院厚生労働委員長の解任決議案の前の質疑。「過労死を考える家族の会」との面談に応じるよう、柚木議員が安倍首相に求めるも、加藤厚生労働大臣が答弁に立ち、別の論点を答弁。野党の抗議を委員長は放置。

委員長の解任動議により、強行採決は先送りへ

 昨日5月23日の衆議院厚生労働委員会。午後に働き方改革関連法案について総理入りの質疑があり、質疑終了後に強行採決が行われるのでは、と危惧されていた。

 質疑が終わったところで立憲民主や国民民主、共産などの野党が高鳥修一・厚生労働委員長の解任決議案を提出。これにより、同日の採決は見送られた。24日の朝日新聞は、下記のように報じた。

首相への質疑が終わっても法案審議のスケジュールについて折り合わず、高鳥委員長が職権で審議を進めようとしたため、野党が反発。委員会運営は「横暴かつ強引極まるもので、決して容認できない」などとして解任決議案を提出した

「働き方」法案、採決攻防 衆院委、25日へ見送り 野党は解任決議案:朝日新聞デジタル(2018年5月24日)

 しかし、筆者は同時に、同日の柚木議員の質疑の差配についても高鳥委員長には、重大な問題があると考える。

柚木議員が安倍首相に答弁を求めるも、加藤大臣が答弁に立ち、抗議の声を無視して別の内容の答弁を続けた

 柚木議員は安倍首相に対し、「過労死を考える家族の会」が求めている面会に応じていただきたい、せめて採決の前に、10分でも、15分でも、と求めた。それに対し、安倍首相は加藤大臣に答弁するように手で指示。加藤大臣が手を挙げ、答弁に立ち、柚木議員の質疑で求めた安倍首相の面談の件ではないことを話し始めた。

 下記の方が字幕を付けてくださっているので、ぜひその様子をご覧いただきたい。2分10秒の短い動画だ。

<同じ場面のYouTube動画(字幕なし)>

高鳥衆院厚労委員長の冷酷な裁き

 加藤大臣が手を挙げ、委員長が加藤大臣に答弁を促したことに対し、西村智奈美議員など野党の理事が委員長席にすぐに駆け寄って手を伸ばして静止しようとしたが、委員長はそちらに目を背けたまま首を横に振って、答弁を行う加藤大臣の方に目を向けている様子が見える。

 柚木議員が、安倍総理に答弁を求めている、質問通告も安倍総理に対して行っている、と抗議し、野党側からも多くの抗議の声があがるが、その声にあらがうように加藤大臣は平然と別の話を続ける。

 柚木議員が「止めてください!」と委員長に求めるも、その騒然とした状態が放置され、30秒以上も、加藤大臣はそのまま答弁を続けている。高鳥委員長はその間、無言

 そのような柚木議員に対する「いやがらせ」を行ったあとで安倍首相が答弁に立つ。

 安倍首相もまず、「隠蔽しているのではないか」という指摘について、と別の話から話し始める。柚木議員が、それはいいから、と遮るも、「それは重要なことなので」と安倍首相は譲らない。

 ここで高鳥委員長の、

'''ご静粛に願います。答弁が聞こえません!'''

という大きな声が聞こえる。

 柚木議員の質疑に安倍首相が答弁せずに加藤大臣を答弁に立たせる、それは放置し、抗議の声を意に介さず、加藤大臣がかみ合わない話を始める、それも放置し、安倍首相が別の話をまず長々と話し始める、それも放置した上で、野党が抗議することに対し、「ご静粛に」と求めるのだ。

 一体、委員長の役割とは何なのか。これでは野党はまともな質疑ができない

 そしてこれは、安倍首相への面談がかなわないまま多くの「過労死を考える家族の会」の方が傍聴席で見守り、さまざまな労働団体の者も傍聴席で見守る中での混乱状況だったのだ。

 結局、安倍首相は面談は担当大臣(加藤厚生労働大臣)が適当だろうと答弁し、「過労死を考える家族の会」の方とは面談しない姿勢を示した。

「まるで高プロを導入すると、過労死が増えるかのごときお話」

 さらにそのあと、なお食い下がる柚木議員に対し、安倍首相はこんな答弁も行っている。

柚木議員のお話を聞いておりますと、まるで高プロを導入すると、過労死が増えるかのごときのお話であるわけですが、(高鳥委員長「ご静粛に願います」)柚木議員はそういう趣旨のお話をしておられるわけですから・・・

 この場面も切り取っていただいている。下記の動画をご覧いただきたい。

 このとき、なぜ野党の側から強い抗議の声が上がっているのか、安倍首相は理解できていないのだろうか。「まるで高プロを導入すると、過労死が増えるかのごときのお話」などと。

 「いや、私は言いがかりを言っているんじゃありませんよ、確かにそういう趣旨のお話をしていらっしゃるじゃないですか」と安倍首相が思っているのだとしたら、野党議員のこれまでの指摘も、「過労死を考える家族の会」の方々の願いも、何も耳を貸す気がなかった、何も聞き取ることができなかった、ということを示しているだろう。

 まさに高プロを導入すると過労死が増えるということを、「過労死を考える家族の会」の方々も野党も指摘しているのだ。そしてそれを実体験を踏まえて安倍首相にその危険を伝えるためにこそ、「過労死を考える家族の会」の方々は、安倍首相に面談を求めていたのだ。

 にもかかわらず、このような人を馬鹿にしたような答弁を安倍首相は行ったのだ。

 まさか高プロだと「過労死」の労災認定は非常に困難になるので、「(認定された)「過労死」が増えることはないのだ」、という意味で安倍首相がこのように語ったとは思いたくないが、もしかしたらそのような非常に悪質かつ冒涜的な「#ご飯論法」をここで安倍首相は披露してみせたのかもしれない(※1)。

過労死対策として上限規制を語り、高プロは「など」に隠した安倍首相

 また、これらの柚木議員との質疑の前に、柚木議員の質疑に対して、安倍首相は次の問題発言も行っていた。

過労死をなくしたいとの強い思いを受け止め、罰則付きの時間外労働の上限を設けること『など』を内容とする働き方改革関連法案の成立に、全力を挙げているところでございます。

 お分かりだろうか。過労死を増やす高プロを削除することを求める「過労死を考える家族の会」の方々の願いや野党の指摘に耳をかさないまま、まるで「過労死をなくしたいとの強い思いを受け止め」ているかのように装い、「など」の中に問題の高プロを隠して、働き方改革関連法案は過労死対策でもあるかのように答弁したのだ(※2)。

 厚顔無恥にもほどがある。

 安倍首相も、加藤大臣も、高鳥委員長も、あまりにも国会審議を軽視している。

 高鳥委員長に解任決議案が出されたのは、単なる戦術ではなく、野党の正当な要求である

 また、このような混乱状況の中で、働き方改革関連法案の採決に踏み切ることは、断じてあってはならない

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(※1)

 「#ご飯論法」とは、「論点ずらし」や「はぐらかし」などによる不誠実答弁のこと。詳しくは下記を参照

「朝ごはんは食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」のような、加藤厚労大臣のかわし方(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月7日)

高プロの「異次元の危険性」を指摘した小池晃議員に、「#ご飯論法」で否定してみせた加藤大臣は、辞任を(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月20日)

(※2)

 23日午後の衆議院厚生労働委員会の総理入り審議の全体は、こちらからご確認いただける。

安倍「高プロを削除する気はありません!」5/23「働き方」 衆院・厚生労働委員会

 安倍首相が答弁に立たずに騒然とした最初の場面は、上の画像では57:30頃から、そのあとの安倍首相の答弁は58:55頃から、「過労死が増えるかのごとき」という安倍首相の答弁は1:14:35頃、最後の「など」は55:50頃だ。

 これらの画像の切り取りや字幕作成は、ツイッター上での緊急の呼びかけ応じていただいた。また、様々に情報提供をいただいた。深く感謝したい。

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【更新情報】

・最後の、「など」に高プロを隠した安倍首相の答弁の映像を、付け加えるのを忘れていたため、追加した(2018年5月25日0:15)