高プロの「異次元の危険性」を指摘した小池晃議員に、「#ご飯論法」で否定してみせた加藤大臣は、辞任を

(写真:つのだよしお/アフロ)

改めて問われるべき3月2日の加藤大臣答弁

 高度プロフェッショナル制度(高プロ)の「異次元の危険性」に対する野党の質疑にまともに答えないまま、5月23日にも厚生労働委員会で働き方改革関連法案の採決がねらわれている。

 今、政府は、野党の指摘に対して、法案の一部修正と省令で対応するかのように答弁している。しかし、これまでの答弁姿勢を見ていると、まともな審議を行う条件は、すでに崩壊していると言わざるを得ない。

 高プロの「異次元の危険性」について、3月2日の参議院予算委員会における小池晃議員(日本共産党)と加藤大臣の質疑の重要部分を下記の方が切り取って紹介してくださった。字幕もついているので、ぜひ、まずはこれをご覧いただきたい。

 小池晃議員は論理的に詰めた質疑が上手な議員なので、加藤大臣の不誠実答弁を見抜き、「答えていない」と指摘している。しかし、普通に聞けば、小池議員の指摘(月のはじめに4日間休ませれば、あとは月末までずっと休憩なしの24時間勤務を連日にわたり求めることが法律上、可能になるという指摘)に対しては、加藤大臣は「そういう仕組みになっていない」と答えているように聞こえるだろう。心配いらない、と。

 ここに重大な問題がある。加藤大臣は、わざと論点をずらしながら、小池議員の指摘(懸念)を否定するかのような答弁をしている。しかし実際は、小池議員の指摘(懸念)は、法律上は可能になる。「そういう仕組みになっていない」わけではない。連日にわたり24時間勤務を求めることは、法律上は、排除されていない

 これは法改正による高プロの導入をめぐる重大な論点の質疑であり、まさに、労働者の命と健康にかかわる論点だ。その中で加藤大臣は、論点ずらしによってあたかも「そういう仕組みになっていない」かのように答弁した。筆者はこれは、辞任に値する不誠実答弁だと考える。野党は加藤大臣の辞任を求めていただきたい。筆者がそう考える理由を、以下に順を追って、述べていきたい。

加藤大臣の悪質な「#ご飯論法」

 ここで加藤大臣が行ったことは、論点ずらしの「#ご飯論法」だ。筆者は加藤大臣が国会質疑で頻繁に行っている「論点ずらし」について、5月6日にツイッター上で、次のように比ゆ的に問題提起した。

 「朝ごはんは食べなかったんですか?」と問われて、パンを食べていたのなら、誠実な答弁は「食べました」だ。

 それなのに、「食べました」と答えたくないために、「朝ごはん」について問われているにもかかわらず、あたかも「ご飯(白米)」について問われているかのように勝手に論点ずらしをして、「ご飯は食べておりません」と答弁する。実際に朝ごはんを食べたかどうかは、答えないまま、朝ごはんは食べていなかったのだなと相手に思わせる。

 このような悪質な「論点ずらし」は、加藤大臣が得意とするものだ。

 しかし、それを、「野党の追及をかわすのがうまい」と受け取ってはいけない。野党をだますことは、国民をだますことだ。質疑を混乱させ、野党の貴重な質疑時間を奪うことだ。そのようなことを、担当大臣が行ってよいはずがない。まして、労働者の命と健康にかかわる法改正をめぐる質疑においてなら、なおさらだ。

 もちろん上の「朝ごはん」質疑は、フィクションだ。しかし、これは実際の加藤大臣の答弁を踏まえている。そのことは下記の記事に取り上げた。

「朝ごはんは食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」のような、加藤厚労大臣のかわし方(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月7日)

 この記事の上部に追記で記したように、この記事を読まれた紙屋高雪氏(@kamiyakousetsu)が、この答弁手法を同日5月7日に「ご飯論法」と名付けて次のようにツイッターで言及され、「ご飯論法」という表現がツイッター上で拡散した。

 筆者はその名付けを受けて、「#ご飯論法」として、加藤大臣の不誠実答弁についての認知を広げようと試みてきた。幸い、国会議員の方にもメディアの方にも注目いただけることになり、5月16日には衆議院厚生労働委員会にて、「#ご飯論法」は「国会デビュー」を果たしている。

 5月17日には上記の記事への追記として、「#ご飯論法」を次のように定義しておいた。

●「#ご飯論法」:意図的な「論点ずらし」や「はぐらかし」などの不誠実な国会答弁の手法。加藤厚生労働大臣の答弁を、上西が「ごはん」→「ご飯」の論点ずらしにたとえてツイートし、ヤフーの記事で広めたところ、紙屋高雪氏が「ご飯論法」の言葉と共に紹介。上西が「#」をつけて拡散した。

「朝ごはん」→「ご飯」のような「論点ずらし」を行った、3月5日の野村不動産にかかわる答弁

 上記の記事で、「朝ごはん」→「ご飯」のような「論点ずらし」の例として取り上げたのは、3月5日の参議院予算委員会で石橋議員の質疑に対して加藤大臣が行った、次の答弁だ。今回の記事で取り上げる問題を考えるにあたって重要であるので、再掲しておきたい。

●石橋通宏議員

 日曜日の朝日新聞の朝刊一面トップ、裁量労働制、野村不動産の裁量労働制、まさに昨年末に発表された、問題となった違法適用、この対象になっていた労働者の方、50代の男性社員(が)、2016年9月に過労自殺をしておられた。

 昨年、ご家族が労災申請をされて、まさに特別指導の結果を(東京労働局が)公表された12月26日、その日に労災認定が出ていたということです。総理、この事実は、ご存知でしたね?

●安倍首相

 (略)これは、特別指導についてですか? 特別指導について、報告を受けたということですか?

 特別指導については報告を受けておりましたが、今のご指摘については、報告は受けておりません。

●石橋通宏議員

 安倍総理は報告を受けていなかったと。加藤厚労大臣は、もちろん知っておられたんでしょうね?

●加藤厚労大臣

 それぞれ労災で亡くなった方の状況について、逐一私のところに報告が上がってくるわけではございませんので、一つ一つについてそのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりません

●石橋通宏議員

 知っておられなかった、と。この事案

 そうすると、これだけの深刻な事案がまさに、裁量労働制の適用労働者に対して発生をしていた。労災認定が出たわけです。(以下、略)

 

  加藤大臣が「承知をしておりません」と答弁し、石橋議員が、それを受けて「知っておられなかった、と」と確認する。それに対して加藤大臣は否定していない。報道も、加藤大臣が知らなかったと報じた。

 しかしあとでわかったところでは、加藤大臣は「一般論」を述べたにすぎず、野村不動産における過労死や労災申請についての答弁ではない、とのことだった。その後も、過労死や労災申請について知っていたかは、個人情報の保護や監督指導への支障などを理由に、答弁を拒み続けた。

 しかし、石橋議員が一般論など聞いていないのは、明らかだ。野村不動産の事案について尋ねているのに、あたかもそれに答えているように装いながら、「論点ずらし」をして答弁する、そして野村不動産における過労死について、「承知をしておりません」と答弁したように誤認させる、これが加藤大臣の不誠実答弁だ。

 この事例では、「朝ごはん」→「ご飯(白米)」のような「論点ずらし」に相当するものは、「野村不動産における過労死」→「過労死全般」への論点ずらしである。そして、「それぞれ」「逐一」「一つ一つ」「そのタイミングで」といった勝手な条件を追加することによって、それらすべてについては「承知をしておりません」と答弁しているのだ。

 この答弁については、「虚偽答弁」ではないかということで、その後の国会質疑でも問題になった。それに対して、3月2日の小池晃議員に対する加藤大臣の質疑は、「虚偽答弁」とは話題にならなかったように記憶している。しかし、同じように悪質な「虚偽答弁」が、そこにあった。まさに、法改正にかかわる大事な論点において、である。次に見ていきたい。

3月2日の小池晃議員に対する加藤大臣答弁

 上述のような「論点ずらし」の「#ご飯論法」を頭に入れた上で、3月2日の参議院予算委員会における小池晃議員に対する加藤大臣の答弁を注意深く見ていただきたい。加藤大臣は、小池議員が指摘するような「異次元の危険性」が、法律上、排除されない(可能である)と認めたくないために、様々に言葉を弄して、それを否定するかのような答弁を行っている。

 議事録によれば、やりとりは下記の通りだ。実際のやりとりは、衆議院インターネット審議中継から確認できる。

●小池晃議員

 理論的に言えば、理論的に言えば、4週間で最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、24時間ずうっと働かせる、これが、いや、論理的には、この法律の枠組みではできるようになるじゃないですか。私が言ったことが法律上排除されていますか。(発言する者あり)

●加藤厚労大臣

 委員が言われた働かせるという状況ではなくて、働かせるということであれば本来この制度というのは適用できなくなってまいりますので、そういった意味では、あくまでも本人が自分で仕事を割り振りして、より効率的な、そして自分の力が発揮できる、こういった状況をつくっていくということであります。

●小池晃議員

 高プロで労働時間の指示ができないという規定が法律上ありますか

●加藤厚生労働大臣

 そういったことはこれから指針を作ることになっております。法律に基づく指針、そして、その指針にのっとって労使委員会で決議をしていただく、こういうプロセスがありますので、その指針の中身に今御指摘のことも含めて、これまあ法律が通ればの話ですけれども、労働政策審議会で御議論いただくことになるというふうに考えております。

●小池晃議員

 法律上全くないわけですね

 それで、私の質問に答えていないんですよ。4日間休ませれば、あとはずっと働かせることが、104日間を除けばずうっと働かせることができる。計算すればこれ6,000時間になりますよ、6,000時間を超えますよ。これを排除する仕組みが法律上ありますかと聞いている

●加藤厚労大臣

 ですから、今申し上げましたように、働かせるということ自体がですね……(発言する者あり)いや、働かせるということ自体がこの制度にはなじまないということでありますから、ですから、それを踏まえて先ほど申し上げて、法の趣旨を踏まえた指針を作っていく、そして、指針に基づく決議を決めていただく、そして、決議は指針に遵守しなければならない、こういった議論がなされているわけでありますから、今委員おっしゃったようなことにはならないだろうというふうに思います

●小池晃議員

 私は質問ちゃんと言っているんです。なるかならないかと聞いているんじゃない。法律上排除されることになっていますかと、私が今指摘したような働き方は法律上できないという規定に合っていますかと聞いているんです

●加藤厚労大臣

 ですから、一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります。しかし、この高度プロフェッショナルはそういう仕組みになっていないんです法の趣旨もそうでないんです。したがって、それに基づいた、先ほど申し上げた、法律に具体的にというお話がありましたけれども、その法案の趣旨を踏まえて指針にしっかり盛り込めば、それは法律的な効果を、先ほど申し上げたように生んでいくということであります。

●小池晃議員

 答えていないです、答えていないんですよ

 その趣旨がとかと言うけど、法律上そういったことが禁止されていますかと聞いているんです。イエスかノーかではっきり答えてください。

●加藤厚労大臣

 ですから、先ほど申し上げた仕組み全体の中でそうしたことにならないという形をつくっていきたいと、こういうふうに考えているわけであります。(発言する者あり)

(速記が止まる)

 先ほどから同じ答弁になって恐縮でございますけれども、その法律の仕組みの中で、今申し上げたこと、そうした懸念を排除していくそういったことを考えていきたいと、こういうふうに考えております。

●小池晃議員

 全く答え、逃げている

 じゃ、こういうふうに聞きますね。104日間さえ休めば、残り年間6,000時間を超える労働をしても、それは違法にはなりませんね、今回の高プロの仕組みでいえば違法にはなりませんね

●加藤厚労大臣

 その違法という意味はあれですけれども……(発言する者あり)いやいや、ですから、それ自体を規制するという規定はありません

 ただし、ただし、それはさっきも申し上げたような、指針をどう作り、そしてそれをどう決議していくのか。いや、この仕組みはですね、(発言する者あり)いやいや、労使委員会で決めた仕組みの中でやっていくということが大前提になっているんでありますから、それを無視してですね、法律だけでは全てが規定されないと、そういう前提になっているということを御理解いただきたいと思います。

●小池晃議員

 最初の一言を言えばいいんですよ。

 法律上はそれは違法になっていないわけですよ。そんなことはあり得ないとか業務命令出ないとか、そんなのは合意にならないとか幾ら言ったって、実際に過労死起きているんですよ。とんでもない経営者がいっぱいいるわけですよ。それを強行的に止める仕組みが労働基準法なんですよ。労働基準法というのは、第1条で「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」となっているんですよ。この強行規定である労働基準法でこんな緩いことをしてしまったら、幾ら指針があります、労使合意がありますといったって、労働者守れないんですよそういう法律をあなた方は作ろうとしているんですよ、高プロというのは

 総理、こんな年間6,000時間働くことが違法とされない、こんな仕組みをつくってしまっていいんですか。これで人たるに値する生活を労働者が送ることできるんですか。どうなんですか。

●安倍首相

 裁量労働制と違って、これは、高プロは今度これからつくる制度でありますから、この制度に起因する何か問題が起こっているということではもちろん今まではないわけであります。今までないんですから、この仕組みはですね、これからつくっていこうということであります。(以下、略)

 加藤大臣は「ですから」という言葉を繰り返し、あたかも小池議員の理解が悪いかような言い方をしているが、質問に適切に答えていないのは加藤大臣であることは、わかっていただけるだろう。

 小池議員は「答えていない」と何度も指摘し、明確な答弁を繰り返し求めている。そのため最後にようやく、「それ自体を規制する法律はありません」という答弁を引き出している。

 しかしそこまでに加藤大臣は、なんとか小池議員の質疑をかわそうとしている。「働かせるということであれば本来この制度というのは適用できなくなってまいります」とか、指針を作って決議で決めていただくとか、「働かせるということであれば本来この制度というのは適用できなくなってまいります」とか、「法の趣旨を踏まえた指針」とか。

 法律上、小池議員が指摘するような業務命令を禁止する規定がないにもかかわらず、それを認めたくないために、様々なそれらしい答弁を試みている。そして、法の趣旨とか指針とか決議とかの話を持ち出して、

今委員おっしゃったようなことにはならないだろうというふうに思います

と「希望的観測」を述べている。

 小池議員が現実に悪用の危険性があると指摘しているのに、「希望的観測」を述べる。大臣として、あまりにも無責任だ。続く安倍首相の答弁も、あまりも無責任だ。

 それだけではない。加藤大臣の答弁には、より重大な問題がある。「そういう仕組みになっていないんです」という箇所だ。これがまさに、非常に悪質な「論点ずらし」なのだ。項を改めて詳しく見る。

「論点ずらし」を行った上で、「そういう仕組みになっていないんです」と答弁

 もう一度、問題のその答弁を見てみよう。

●加藤厚労大臣

 ですから、一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります。しかし、この高度プロフェッショナルはそういう仕組みになっていないんです。法の趣旨もそうでないんです。したがって、それに基づいた、先ほど申し上げた、法律に具体的にというお話がありましたけれども、その法案の趣旨を踏まえて指針にしっかり盛り込めば、それは法律的な効果を、先ほど申し上げたように生んでいくということであります。

 一見すると、「4日間休ませれば、あとはずっと(休憩もなしに24時間勤務で連日にわたり)働かせることが、104日間を除けばずうっと働かせることができる」という小池議員の指摘に対し、「そういう仕組みになっていないんです」と答弁しているように見える。

 しかし、そのあとの質疑でわかるように、実際は小池議員が指摘するような懸念に対し、「それ自体を規制するという規定はありません」なのだ。つまり、そういう無茶な働かせ方が、法律上は、できてしまうのだ。

 ではこの加藤大臣の、「そういう仕組みになっていないんです」とは、何を答弁したものなのか。

 ここで、石橋議員に対する3月5日の加藤大臣の答弁を思い出していただきたい。野村不動産への特別指導を行った、その背後に過労死があったことを知っていたかと石橋議員に問われた加藤大臣は、勝手に「論点ずらし」を行って、「それぞれ」「逐一」「一つ一つ」「そのタイミングで」といった条件を勝手に追加した上で、「承知をしておりません」と答弁し、あたかも過労死については「知らなかった」かのように、石橋議員に誤認させた。

 同じことがここで行われたのだ。お気づきだろうか。下記の箇所だ。

●加藤厚労大臣

 ですから、一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります。しかし、この高度プロフェッショナルはそういう仕組みになっていないんです。法の趣旨もそうでないんです。したがって、それに基づいた、先ほど申し上げた、法律に具体的にというお話がありましたけれども、その法案の趣旨を踏まえて指針にしっかり盛り込めば、それは法律的な効果を、先ほど申し上げたように生んでいくということであります。

 高度プロフェッショナル制度には、「残業」という概念はない。労働基準法の労働時間に関する規定を適用除外するので、「1日について8時間を超えて、労働させてはならない」という規定は関係なくなる。1日に8時間を超える法定時間外労働について割増賃金を支払わなくてよくなるだけでなく、「法定労働時間」と「法定時間外労働(残業)」の区別もなくなるのだ。

 だからこそ、24時間勤務を連日にわたって命じることができるという「異次元の危険性」が生じ、それについて小池議員が指摘しているのだが、ここで加藤大臣が答弁しているのは、「残業」を命じる、といった仕組みになっていない、ということなのだ

 そんなことは誰も聞いていない。国民をだますのも、いいかげんにしていただきたい

 筆者は上に紹介した「#ご飯論法」に関する記事では、この小池議員と加藤大臣の質疑を取り上げたが、「なじまない」という答弁を「はぐらかし」の例として取り上げていて、この「そういう仕組みになっていない」という答弁については、「論点ずらし」の答弁だと気づいていなかった。今回、録画の切り取りを確認させていただき、速記録を改めて読み返して、初めて気づいた。

 もしこの質疑が、小池晃議員によって行われたものでなければ、「そういう仕組みになっていないんです」という答弁によって、この重要な論点はそれ以上の追及がなされずに終わっていたかもしれない。それはまさに、加藤大臣がねらっていたことだっただろう。

 「朝ごはんは食べなかったんですか?」と問われて「ご飯は食べませんでした」と答え、それで相手が「食べなかったんだな」と思ってくれれば、パンを食べたことは黙ってい続けることができる。「#ご飯論法」とは、まさにそれをねらって、周到に準備されているものだ。

 同じように、「そういう仕組みになっていない」と答弁することによって、小池議員が指摘したような懸念される事態は生じないよう法的な手当てがされていると野党に誤認させることができれば、この論点についてはもう国会で取り上げられずに済む。加藤大臣が「残業が命じられて」と「論点ずらし」をした上で、誤認させる答弁を行ったのも、まさにそれをねらったことだった。

「#ご飯論法」を駆使し続ける加藤大臣に、法改正の審議は任せられない

 幸いにして、小池議員は、加藤大臣は誠実に答えていないことを見抜き、法律上、ずっと働かせることができるということが排除されていない(できてしまう)ということをこの質疑の中で認めさせた。そのため、その後もその重要論点に関する質疑が続き、新たな「異次元の危険性」が次第に明らかになりつつある。

 16日の衆院厚生労働委員会では、高プロの「異次元の危険性」について野党が追及を深める中で、次のような答弁を引き出すところまではたどり着いた。

「残業代ゼロ」問題点次々 月200時間も厚労相「合法」(東京新聞2018年5月19日朝刊)

「残業に相当する時間が月二百時間を超えたら違法か、合法か」

 国民民主党の山井和則氏は十六日の衆院厚生労働委員会で、高プロが適用された人が法定労働時間(一日八時間)以外に月二百時間働いた場合、法律に反するかどうかをただした。加藤勝信厚労相は「直ちに違法ということではない」と説明、高プロでは残業に相当する時間が二百時間を超えても合法だと認めた。

(中略)

 高プロの場合、実際に働いた時間が記録されなくなり、労災認定が難しくなる可能性もある。国民民主党の岡本充功氏は、高プロ対象者が過労死した場合、勤め先に「長時間労働は指導できなくなる」と指摘。厚労省の山越敬一・労働基準局長は「労働時間の上限がないので、その点は指導できない」と明言した。

 しかし、このように高プロが、労働者の命と健康を脅かす危険性が高い働かせ方であることが明らかになりつつあるにもかかわらず、国会の会期末をにらんで、5月23日の衆議院予算委員会で採決を行う方針を、与党は固めたようだ。

 様々な指摘に対して、加藤大臣は省令で手当てを行う旨を答弁しているようだが、しかし、省令は国会審議を経ずに決められる。その省令の内容は、国会答弁を引き出すによってある程度のしばりをかけることができるが、しかしその国会答弁がこのように「#ご飯論法」によってはぐらかされているものであれば、国会審議によって省令の内容を事実上制約していくこともできない。

 高プロは対象業務も具体的には省令で定めることになっているのだが、それについても答弁ではいっこうに具体的になっていない。

 労働時間規制をすべてはずして、労働法の保護の外に労働者を放り出してしまう高度プロフェッショナル制度のような働かせ方を、このように「#ご飯論法」によって野党の質疑を混乱させることばかりに長けた加藤大臣のもとで審議するのは、無理だ。それはあまりにも、国民を愚弄するものだ。

 筆者は現在、高プロの導入に反対する方に、みずからの言葉でその思いをフォロワーの方に語っていただくことをお願いしている。5月17日に依頼し、すでにおそらく500件を超える生の声が寄せられている。下記に200件のみ転載したが、どれも切実な声だ。

呼びかけに応えてみずからの言葉で高プロや法改正に意見表明した方々の生の声(~ID:100)(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月19日)

呼びかけに応えてみずからの言葉で高プロや法改正に意見表明した方々の生の声(~ID:101~200)(上西充子)- Y!ニュース(2018年5月19日)

 身近な人を働きすぎで亡くした方。働きすぎでみずからの健康を損ない、体調が戻らない方。命と健康にかかわる重大な法改正が、結論ありきで強引に進められていることに強い懸念を表明されている方。これらの方々の声に耳をふさいだまま、法改正が強引に進められようとしている。

 このまま法改正を強行すれば、日本の政治と社会に、強い禍根を残すことになるだろう。このような深刻な局面にあることを、広く皆さんに知っていただきたい。そして、強引な法改正を、止めていきたい。

 野党には、高プロの削除を求めるとともに、加藤大臣の辞任を求めていただきたい。

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<修正履歴>

●3月2日の議事録が公開されていないと書いたが、間違って衆議院の方を見て記載したものであった。参議院予算委員会の議事録があることを確認の上、速記録から議事録に記載を書き換え、リンク先も変更した。【2018年5月20日 17:16】

●省令による対応というのが、どの部分については答弁されており、どの部分についてはそうでないのか、把握しきれていないため、下記の通り書き換えた。【2018年5月20日 18:50】

(訂正前)そのため、その後もその重要論点に関する質疑が続き、今、政府は、省令によって対応する旨を国会で答弁しているようだ。

(訂正後)そのため、その後もその重要論点に関する質疑が続き、新たな「異次元の危険性」が次第に明らかになりつつある。

●「#ご飯論法」の「国会デビュー」は、5月9日ではなく5月16日の衆議院厚生労働委員会においてであったので、訂正した。【2018年5月20日 21:35】