裁量労働制のねつ造された比較データ、バレないための隠蔽プロセスを検証(第3回)(全6回予定)

(ペイレスイメージズ/アフロ)

<概要>

本稿は、連載第2回の続きである。裁量労働制をめぐる比較データの作成方法を引き続き示し、これがうっかり作れるようなものではないことを、論証する。

<全6回の連載目次(改訂版)>  ※第1回 ※第2回 ※第4回

筆者作成
筆者作成

2-6. 答弁撤回後も続いた野党の追及

 さて、前回の「2-2」に述べたように、2月7日の厚生労働省担当者から長妻議員らへのレクにおいては、一般労働者の「平均的な者」の9時間37分というデータは、

●9時間37分=法定労働時間(8時間)+1日の法定時間外労働の平均(1時間37分)

という計算式だと説明を受けていた。

 ただし、文書でそのように説明されたわけではない。口頭である。その後、野党合同ヒアリングに何度も同席させていただいて分かったことだが、厚生労働省の担当者は野党側が文書での回答を求めても、ほとんどの場合、口頭でしか回答しない(しかもその回答の多くは、実質的に回答拒否である)。都合の悪いことは文書で残したくない、という事情によるものと思われる。上の計算式は、2月7日に口頭で確認したものだ。

 また、1日の法定時間外労働の集計表は、公表冊子(平成25年度労働時間等総合実態調査)には収録されておらず、元データを長妻議員がFAXで送るよう求めたところ、下記の集計表が送られてきたことは、前回示した通りである。

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(出所)民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党合同ヒアリング(2018年2月15日)配布資料

 2月7日以降、野党側は、この計算式を信じつつ、比較データの謎を解こうとしてきた。

●9時間37分=法定労働時間(8時間)+1日の法定時間外労働の平均(1時間37分)

 大きな謎は、一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働が、このFAX送付の集計表では1時間36分であるのに、同じ対象者(一般労働者の「平均的な者」)についてデータを収集しているはずであるにもかかわらず、公表冊子に収録された1週の法定時間外労働の実績の平均が2時間47分であり(表24)、不整合が生じていることだった。

 1週間の法定時間外労働の実績の平均値である2時間47分を5で割れば、33分にしかならない。それなのになぜ、1日の法定時間外労働の平均値は1時間37分なのか。この不整合には、合理的な説明が得られなかった。

 この比較データに対する野党の追及は、国会では前述の通り2月5日より始まった。加藤大臣は、2月5日に玉木議員に「平均的な者」の定義を問われて以降は、防衛的な姿勢に転じ、2月8日に立憲民主党の岡本あき子議員が改めて「平均的な者」について質疑を行ったとき以降、野党が何を聞いても、データを「精査させていただいている」と答弁するようになった。

 野党は、1日と1週の法定時間外労働の実績の平均値の不整合や、上記のFAXの集計表に1日の法定時間外労働が「15時間超」であるものが9件ある(これはつまり、9つの事業場で、一般労働者の「平均的な者」の1日の実労働時間が、23時間であることを意味する)ことなどについて、合理的な説明を求め続けた。

 その中で2月14日に、安倍首相が答弁を撤回した。これは、異例のことだそうで、そのあと筆者のもとには、裁量労働制とデータ問題についてコメントを求めるメディアからの連絡が、急に寄せられるようになった。

 しかし安倍首相は、比較データが不適切であったため答弁を撤回したのではなかった。答弁撤回の理由は、

精査が必要なデータに基づいて行った答弁について撤回をし、そしておわびをさせていただいた

出典:2月20日衆院予算委、長妻議員に対する安倍首相答弁

という、よくわからないものであった。

 そのため、答弁撤回後も、比較データに関する追及は続いた。

 2月14日には、答弁撤回後の17時より、国会内の第16控室で、第1回の「働き方改革虚偽データ疑惑野党合同ヒアリング」が開催され、野党6党が厚労省担当者に説明を求めるこの合同ヒアリングが、その後、高頻度で開催された。筆者も招かれ、日程の都合があう限り、極力これに参加した。

2-7. 一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働は、「最長」時間数だった

 野党合同ヒアリングの場で野党議員側からは、この調査の調査票(回答前の調査票フォーマット)や調査の実施要領を開示するよう、繰り返し求めた。公表冊子には、調査票が収録されていないからだ。FAXで送付された1日の法定時間外労働の集計表が、どのように尋ねた内容なのかが、野党議員側としては知りたいことだった。また、個票データ(回収された調査票に記入された集計前のデータ)の電子データの提供も求めた。

 それに対し厚生労働省側は、この調査は労働基準監督官が調査的監督の一環として行った調査であり、その詳細を開示することは今後の監督指導に支障をきたす、との理由で、いずれも開示を拒んだ。

 下記に示すように、この調査で労基法違反が認められた場合は、是正勧告を行うものとされていた。そのような「調査的監督」によって、果たして労働時間の実態がつかめるのか疑問が多いのだが、とにかく調査と監督が一体であるため、調査票や調査の実施要領は開示できない、というのが拒否の理由だった。

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(出所)民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党6党合同ヒアリング第3回を開催(2018年2月16日)厚労省配布資料

 しかし、いつまでも野党の追及は続き、これではまずいと思ったのか、ようやくこの比較データにかかわる部分のみの調査票の開示と個票の電子データの提供が行われたのが、2月19日である。そこで分かったことは、この一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働のデータは、実は「最長」の1日のデータだ、ということだった。それが2月19日まで、隠されていたのだ。

●9時間37分=法定労働時間(8時間)+「最長」の1日の法定時間外労働の平均(1時間37分)

 1日のデータが「最長」の1日のものであることは、同日9時からの第4回野党合同ヒアリングで厚生労働省から説明されたが、それより前の同日の5:00の朝日新聞デジタルの記事にも、そのことは書かれてあった。

 関係者によると、一般労働者への質問は、1日の残業時間について1ヵ月のうちの「最長時間」を尋ねる内容だった。

(中略)

厚労省は19日朝、データを精査した結果を同委員会(引用者注:衆院予算委員会)の理事会に示す予定。

(出所)朝日新聞デジタル(2018年2月19日):「最長残業」根拠に首相答弁 残業データ、違う質問比較

 一般労働者については1ヵ月のうちで最も長い残業時間を尋ねていた。「最長」の時間を質問すれば、長時間の回答が多く集まることは容易に想像できる。一方、裁量労働制で働く人については単に「労働時間の状況」を尋ね、最長の残業時間で集計した一般労働者と比べていた。

●朝日新聞デジタル(2018年2月19日):残業データ、恣意的利用の疑念 問われる答弁の作成意図

 「・・・だったら、早く言ってよ」という話だ。2月の上旬から2月19日のこの日までの野党の追及は、なんだったのか。

 

 筆者はこの日の朝の4時頃まで、本来の締め切りを過ぎてギリギリまで締め切りを延ばしてもらっていた原稿を書いていた。まさにこの、裁量労働制の比較データに関する原稿だった。そのあと睡眠をとろうかと思っていたときに、朝日新聞の記事について連絡を受け、9時から急遽、野党合同ヒアリングが開催されることを聞いた。

 朝日新聞の記事を読んで最初に思ったのは、「睡眠時間を返せ」と、「この原稿、どうしよう」だった。幸い、原稿については、校正段階で追記によって新たな情報を加える形で掲載することを、了承いただいた。『月刊全労連』の2018年4月号に、その論文(「糖衣が剥がれ落ちた『働き方改革』」)が掲載されている。いずれネットでもPDFで公開されると伺っている。

 話を戻そう。

 同日9時からの第4回野党合同ヒアリングでは、調査票の部分開示が行われ、厚生労働省が文書とともに説明を行った。厚生労働省の提出文書とその時の映像は、下記の民進党のニュースからご確認いただける。

●民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党6党合同ヒアリング第4回を開催 (2018年2月19日)

 下記が、その第4回野党合同ヒアリングで開示された調査項目である。

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(出所)民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党6党合同ヒアリング第4回を開催(2018年02月19日)

「働き方改革虚偽データ疑惑」野党合同ヒアリング 厚生労働省文書

 重要な部分を下記に拡大してみる。

(上記資料の拡大版:オレンジ色の枠は筆者による)
(上記資料の拡大版:オレンジ色の枠は筆者による)

 一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働のデータは、「最長」の時間数が尋ねられている。一方で、企画業務型裁量労働制の労働者の「平均的な者」の「労働時間の状況」は、「最長」ではない。ならば、一般労働者の方が労働時間が長い数値となっていても、まったく不思議ではない。

 これを見れば、「一目瞭然」、比べてはいけないものを比べていたことは、「小学生でもわかる」、「これまでの国会質疑は何だったのか」、そんな声が野党議員から続いた。

 この第4回野党合同ヒアリングで、労働条件政策課長は、この調査票を初めて確認したのは2月1日だと説明した。本当に2月1日なのかは、後に改めて検討するが、いずれにしろ、2月1日には一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働のデータが「最長」のものだと課長は認識したはずだ。にもかかわらず、野党議員にそれを説明するのを、国会でも、野党合同ヒアリングでも、2月19日まで先延ばしにし、「精査」とのみ説明し続けたのだ。あまりに不誠実な、厚生労働省と加藤大臣の対応だった(加藤大臣には2月7日の午後に報告が行われたことになっている。これも後ほど検証する)。

 なお、上に見たように、実は一般労働者の「平均的な者」の法定時間外労働の実績は、1日のデータだけでなく1週のデータも、「最長」の週について記入することになっていた。これは上に掲載した公表冊子の表24からは、確認できないことだ。その点は実は重要なのだが、本論からは論旨がそれるので、本稿の末尾に【補記】の形で記した。

2-8. 「母集団への復元」という操作について

 さて、長妻事務所にFAXで送らせた一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働の集計表が、なぜパーセント表示ではなく実数表示だったのか、という点に簡単にふれておきたい。

 2月13日の衆議院予算委員会で加藤大臣は、1日と1週の法定時間外労働の時間数になぜこういう不整合が生じるのか、と問う長妻議員に対し、

データによって、特に、どう言えばいいんですかね、補正というんでしょうか、そういったものもしているものもあるというふうに聞いております。補正というのは、要するに、業種別の人口を踏まえてもう一回その調査をつくって、これは普通よくやる手法でございますから、そういったものがなされているということ、これは報告書の中にも書かせていただいているところでありますけれども、それらも踏まえて、実際データがどうなっているかを今、精査をさせていただいている、こういうことであります。

と答弁している。

 1日と1週の法定外労働の不整合は、「補正」のせいだ、と言わんばかりの答弁だ。

 この「補正」について、公表冊子「平成25年度労働時間等総合実態調査」のp.1にはこのように記載がある。

 なお、調査結果は母集団に復元したものを表章している。ただし、表45以降の裁量労働制に係る調査については、実数に基づく調査結果である。(以下、略)

 この「補正」あるいは母集団への復元、という操作を統計調査で行うことは、間違いではない。ただし、どのようなウェイト値で復元を行ったのか、何も公表冊子には記載がない。どうやら、裁量労働制のデータを一定数確保するために、実際の割合よりも多めに大企業に調査に出向いていたようなのが。

 この公表冊子の記載にあるように、「9時間16分」が記載された表52「労働時間の状況(企画業務型裁量労働制)(平均的な者)」は、表の記載はパーセントで行われているが、これは母集団への復元という操作を施していない実数による調査結果である。

 それと合わせるために、一般労働者の9時間37分についても、母集団への復元の操作を施していない実数の集計表を用いたものと思われる。2月19日の第4回野党合同ヒアリングへの厚生労働省の提出文書には、

仮に1週及び1月の数値を単純集計した値にすれば、それぞれ4時間5分、11時間20分となる。

という記載があり、確かにそれは1日と1週の法定時間外労働の時間数の不整合を説明するものではあったのだろう。

 しかし、この加藤大臣の答弁は、一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働の集計表が「最長」の1日の集計表であったことを明らかにせずに、ごまかし通せないだろうか、というねらいからの答弁であったのではないか、とも思う。「補正」については説明しながらも、「最長」については伏せていたからだ。

 なお、一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働の集計表は、前回の「2-2」に記したように、2月7日には合計欄だけが開示されたが、全体のクロス集計表を野党側が求めたところ、下記の集計表がその後、提供された。

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出所:2月13日衆議院予算委員会 長妻昭議員提出資料

 このクロス集計表から【企業規模分類】の欄を見ると、大企業からのデータの収集が、かなり多いことを見ることができる。調査対象として大企業が過大に抽出されていたという点については、このデータ問題を個票データの側から独自に検討してきた東北大学の田中重人准教授が、次のブログ記事で取り上げている。

●2018-02-19労働時間等総合実態調査 (2013) の怪:あきらかにすべきことのリスト(remcat: 研究資料集)(田中重人)

 なお、田中重人准教授は、データに異常値があってもこの調査からわかることをできるだけすくい上げようとされており、下記の記事にその内容がまとめられている。

●2018-02-24労働時間等総合実態調査 (2013) 再分析(remcat: 研究資料集)(田中重人)

2-9. 裁量労働制のデータの精査結果報告とデータ撤回

 さて、本稿では比較データについて論じるだけで精一杯で、個票データの異常値については取り上げる余裕がないが、経緯の一部だけを、ここに記しておきたい。

 1日データが「最長」の1日のデータであったことを厚生労働省が明かした2月19日には、11時からふたたび第5回の野党合同ヒアリングが開催されている。その場で、比較データにかかわる上記の表のデータ(一般労働者の時間外労働時間数にかかわるデータと、専門業務型裁量労働制および企画業務型裁量労働制の「労働時間の状況」にかかわるデータ)について、個票データ(個々の事業所から集められたデータ)の電子データが、野党側に提供された。

●民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党6党合同ヒアリング第5回を開催(2018年2月19日)

 この個票の電子データから、野党側は次々と異常値を見つけていき、さらに追及を深めていくことになる。

 異常値の中には、例えば裁量労働制の「労働時間の状況」が1時間以下であるものが25件ある、という問題があった。これについて、本当なのか、確認を野党は求め、その「精査」の結果はようやく3月22日になって報告された。裁量労働制の拡大が法案から削除されてから、3週間後であり、法案の閣議決定(4月6日)までの見通しがついてきた頃合いを見てのことだっただろう。

 下記が3月22日の野党合同ヒアリングに厚生労働省から行われた報告である。

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(出所:野党合同ヒアリング(2018年3月22日)への厚生労働省の提出資料)

 要するに、1時間以下の25件のうち、実態がそうであったと確認できたものは1件もなかった、ということだ。上記の調査票の形式を見ると、「みなし労働時間」からの超過分をあやまって記入していたのではないかと思われる。

 この報告を踏まえて、翌日の3月23日の衆議院厚生労働委員会において、加藤大臣がこの平成25年度労働時間等総合実態調査のデータのうち、裁量労働制にかかるデータを撤回することを立憲民主党の西村ちなみ議員に対して答弁した。

 他にも様々に野党側からは異常値の指摘が行われているのだが、それらについての「精査」の結果は、まだほとんど報告されていない。一般労働者に関するデータの精査結果は、報告に向けて準備していると説明され続けながら、いまだに報告されていない。

 精査が終わっていないというよりは、法案審議との関係で、どのタイミングで報告を行うか、また、法案審議に支障を与えないために、どのような言い訳をつけて報告を行うか、を検討しているのではないか、と思う。

 一般労働者についても膨大な異常値が指摘されているのだが、それらが公表冊子の結果にも影響する規模のものであるとすると、この公表冊子の結果を実態調査として労働政策審議会に示しながら高度プロフェッショナル制度の創設の審議も同時に行っていたことから、高度プロフェッショナル制度についても労働政策審議会に差し戻せ、と野党に主張されることを、政府としては恐れているのかもしれない。

2-10. 改めて最初の「民主党への提供データ」を見ると

 さて、比較データがどのように作られたかの説明も、前回の連載第2回と今回の第3回で、ようやく終わりとなる。この比較データが、うっかり作れるようなものではないことは、わかっていただけると思う。

 そもそも、比較できないものを比較していることは明らかであり、それを比較データの作成担当者が理解していなかったとは考えられない。

 また、一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働の集計表(長妻事務所にFAXで送られたもの)は、公表冊子に載っていないため、公表冊子からこの比較データを作ることも、不可能だ。

 公表冊子にはこの1日データが収集されていることをうかがわせる記載もないので、公表冊子だけを見た担当者が、1日データを比較しようという発想をもつことも難しい。

 そして一般労働者の「平均的な者」の1日の法定時間外労働の実績の平均値が1時間37分というのは「何かおかしい」と、厚生労働省の担当者なら気づくはずだ。例えば日ごろからスーパーに買い物に行っている人なら、キャベツが1玉500円と聞けば「何があったのか?」と思うだろう。普段なら、キャベツ1玉が500円もしないことはわかっているからだ。同じことだ。

 にもかかわらず、2月19日の記者会見で厚生労働省は「意図的に作ったものではない」と説明した。到底信じられないと読者も思うだろうが、この点については改めて次回の連載第4回で検証したい。

 連載第4回では、「民主党への提供データ」と「答弁の参考資料」が、意図的に「ねつ造」されたものであることも論証していきたい。そこで次回に向けて、ここまでがんばってこの記事を読んでくださった方に、謎解きを投げかけておきたい。

 前回も掲載した下記の「民主党への提供データ」(2015年3月26日に厚生労働省が当時の民主党の厚生労働部門会議に提出したとされているもの)には、この連載第2回と第3回の説明を踏まえると、「ねつ造と隠蔽の痕跡」と思えるものが少なくとも9つ見つかる。さて、見つかるだろうか。

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(出所)民進党ニュース:「働き方改革虚偽データ疑惑」野党合同ヒアリング(2018年2月15日)配布資料

 解説は次回の第4回で行いたい。

連載第1回

連載第2回

連載第4回

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【補記】

 1週のデータも「最長」を記入することになっていた、という点は重要だ。なぜなら本文中に掲載した通り、公表冊子の表24には、単に「1週の法定時間外労働の実績」と記されており、これが「最長」の1週であることは判別できない形になっていたからだ(公表冊子のp.7およびp.14の記載も同じ)。

 この調査結果を第104回労働政策審議会労働条件分科会(2013年10月30日)で村山労働条件政策課長(当時)が紹介した際にも、単に「1が『1週間』、2が『1箇月』、3が『1年』ということになっております」と説明されており、「1週」は「最長」の1週であることが説明されていない。

 労働政策審議会のメンバーにはこれが「最長」の1週のデータであることが伝えられないまま単に1週のデータとして紹介されてしまっていたのであり、それはつまり、実際の1週の法定時間外労働の実績について、過大な数値を間違って伝えてしまっていたことになるのだ。

 政府は、比較データは労政審には示していないので問題ないとしてきたが、この1週の表(表24)は労政審に示していた公表冊子に含まれていたものであり、説明でも言及されていたものである。そのため、労政審に間違ったデータを示していたのだから審議を労政審に差し戻せ、という野党の主張を支える一つの要因となった。

 もう一つの要因は、個票データに多数の異常値が見つかり、それが単なる集計上の誤差とは言えない大きな影響を結果に与えていたことである。この点は上記の2-9に記した通りだ。そのため、公表冊子に含まれていた裁量労働制に関する集計表も正しくない、ということになり、それも審議を労政審に差し戻せ、という野党の主張を支えるものとなった。