裁量労働制の拡大だけでなく、高度プロフェッショナル制度の導入も断念を( #0316働き方 院内集会)

日本労働弁護団ホームページより

 3月16日、日本労働弁護団の主催により、「働き方改革」一括法案の問題点を考える院内集会が開催された。

「働き方改革」一括法案の問題点を考える院内集会声明

 筆者も登壇し、裁量労働制をめぐる「データ問題」を追及した立場から、高度プロフェッショナル制度(高プロ)の導入も断念すべきことをスピーチした。

 当日のスピーチ原稿を下記に掲載しておきたい。

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 法政大学の上西です。「データ問題」について、安倍首相の国会答弁にヤフーの記事で疑義を呈した者です。その疑問点を引き継いで、国会で野党の皆さんが追及を深めてくれました。

 それによって、働き方改革関連法案において言及が避けられてきた裁量労働制の拡大に世の中の注目があつまり、報道によって、裁量労働制が「みなし労働時間」分だけ残業代を払えばよい制度であること、そのため長時間労働を助長する危険があることを、多くの方が知るところとなり、法案から裁量労働制の拡大を削除させることができました。

 「データ問題」が明るみに出したのは、事実をねじまげて国会議員をだまし、国民をだましてでも、労働時間法制の規制緩和を推し進めようとした安倍政権の姿勢です。

 厚生労働省の調査によれば、裁量労働制のもとで働く労働者は一般の労働者よりも労働時間が短いと受け取れる答弁を、1月29日に安倍首相は行いましたが、野党の追及の結果、2月19日になって判明した事実は、一般労働者については「最長」の一日のデータを使い、裁量労働制の労働者についてはただの一日のデータを使うなど、ねつ造と言える操作を施し、比較してはいけないものを比較した答弁だったというものでした(※1)。

(※1)データ比較問題からみた政策決定プロセスのゆがみ:裁量労働制の拡大は撤回を(公述人意見陳述)(上西充子)- Y!ニュース(2018年2月21日)

 安倍首相は答弁を撤回しましたが、データを撤回する姿勢はいまだ見せていません。加藤大臣も、なぜこのような問題だらけの比較データが答弁のために用意されたのか、真相究明に乗り出す姿勢を見せていません。

 なぜ、そのように安倍政権が非を認めずに頑なであるかといえば、裁量労働制よりもさらに極端に労働時間の規制をはずしてしまう高度プロフェッショナル制度の導入を、まだあきらめていないからです。

 「データ問題」の追及によって、もとの調査結果に様々な異常値が含まれていたことが明らかになり、この調査結果を示しながら行われた労働政策審議会の検討プロセスそのものの正当性が問われる事態になっているのですが、その検討プロセスが否定されて高プロの導入もできなくなることを、安倍政権は恐れているのです。

 しかしながら、国会議員をだまし、国民をだまして裁量労働制を拡大しようとした政権が、より過激な規制緩和である高プロの導入を行うことを、認めることはできません。高プロは、労働基準法の労働時間規制をすべてはずしてしまうものであるため、24時間連続勤務を何日も続けさせることも可能な制度であるにもかかわらず(※2)、そしてそのことは既に国会質疑でも明らかになっているにもかかわらず(※3)、安倍首相や加藤大臣は、健康確保措置を取っているという空疎な答弁を繰り返しています。

(※2)「働き方改革」一括法案、連日24時間勤務の命令も可能に。制度の欠陥では、との問いに厚労省担当者は沈黙(上西充子)- Y!ニュース(2017年12月18日)

(※3)2018年3月2日 参院予算委員会 速記録(小池晃議員の質疑部分)

 今、国会は、森友問題に関する決裁文書の改ざんをめぐって大荒れの状態ですが、その混乱の中でも3月13日に与党は参議院予算委員会において公聴会を強行しました。そして東京過労死を考える家族の会の代表の中原のり子さんが公述人として意見陳述したのに対し、自民党からはワタミの創業者である渡邉美樹議員が質問に立ち、「国をあげて『働くな、働くな』でよいのか」といった無神経な問いかけを行った上で、高プロでは、仕事が時間とお金のやりとりだけではなく、働く人ひとりひとりの自己実現や成長につながるかのように持ち上げてみせました。

 自ら創業した会社の従業員の若者を、過大な業務量によって過労死に追いやった、その経営者としての責任を忘れ去ったかのような渡邉議員の質疑は、聞くに堪えないものでしたが、その渡邉議員を質問者に立たせた自民党の姿勢から、私たちは改めて認識しなおさなければいけません。安倍政権は、続発する過労死の事案からも、裁量労働制のデータ問題からも、何も学ばないまま、働き方改革関連法案の成立を強行しようとしているということを。

 改めて、高プロの危険性を広く周知し、高プロの導入を断念させましょう。共にがんばりましょう。