労働時間規制の強化を前面に出しつつ緩和を同時にもくろむ「働き方改革」一括法案を、日曜討論で野党が批判

(ペイレスイメージズ/アフロ)

<要約>

通常国会の最大の対決法案となると見込まれている「働き方改革」関連一括法案。労働時間規制の強化と緩和に関わる法改正を「抱き合わせ」で行おうとする与党の姿勢を、NHK日曜討論で野党各党が厳しく批判した。

 明日22日(月)から通常国会が始まる。政府は64本の法案を提出する予定で、最大の対決法案は働き方改革だと毎日新聞は報じている。

 なぜ「働き方改革」関連法案は、対決法案となるのか。

 野党がこの法案に反対する最大の理由は、労働時間規制を強化する法改正(時間外労働の罰則つき上限規制)と、労働時間規制を緩和する法改正(高度プロフェッショナル制度の創設と、裁量労働制の拡大)を同時に含んでいることにある。政府は、それらを一括法案によって「抱き合わせ」で成立させようとしているのだ。

1月21日のNHK日曜討論で、各党代表が論戦

 この問題について、1月21日のNHK日曜討論が取り上げ、各党の代表がそれぞれの見解を示した。日曜討論では、フリップで次のように論点が示された。

働き方改革関連法案(政府提出方針)

▽時間外労働の上限規制

 最大 年720時間以内・月100時間未満(※1)

▽高度プロフェショナル制度

 働いた時間ではなく成果で評価→労働時間の規制から外す(※2)

など

 上が労働時間規制の強化、下が労働時間規制の緩和に関わる内容だ。規制緩和の側には「高度プロフェッショナル制度」だけが示されているが、以下で長妻氏が指摘しているように、営業などへの裁量労働制の拡大も大きな論点である。

 これらが法改正によって同時に成立した場合、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の適用対象者は、新たにできる時間外労働の上限規制の対象外となる。つまり、新たに規制を設ける一方で、その規制の「抜け穴」となる対象者を同時に拡大させようとしているのが、「働き方改革」関連一括法案だ。

 このような「抱き合わせ」の一括法案について、各党の姿勢は次の通りだった。

<一括法案に反対>

●立憲民主党・長妻昭代表代行

●希望の党・岸本周平幹事長代理

●民進党・川合孝典幹事長代理

●日本共産党・小池晃書記局長

●自由党・森ゆうこ幹事長代理

●社会民主党・又市征治幹事長

<一括法案に賛成>

●自由民主党・柴山昌彦筆頭副幹事長

●公明党・斉藤鉄夫幹事長代行

<不明>

●日本維新の会・馬場伸幸幹事長

 以下では実際の各党代表の発言を、解説を加えつつ紹介したい。なお、発言については、若干のまとめを行った。

【日本共産党・小池晃書記局長】

 政府は「柔軟な働き方を可能とする」というが、「残業代ゼロ法案」のように労働時間規制をはずすことは、財界が求めてきたものであり、労働団体・労働者は求めていない。反対してきた。これは結局、労働者にとっての「柔軟な働き方」ではなく、経営者にとっての「柔軟な働かせ方」だ。

 また残業時間の上限が月100時間というが、過労死の過半数は100時間以下で起きている。これでは過労死の合法化だ。(従来から)大臣告示(の時間外労働の上限)は月45時間となっているのだから、これを法令化すべき。

 また長時間労働をなくすというのであれば、長時間労働を野放図に広げるような「残業代ゼロ法案」や裁量労働制の拡大は、まったく矛盾している。撤回すべき。

 さらに「非正規という言葉をなくす」と(首相は)おっしゃるが、現実には今、大変なことが起こりはじめている。4月からの無期転換ルールの実施(転換権の発生)で、400万人の有期労働者・期間従業員が正社員になれるはずが、雇い止めになることが起こっている。これには、ただちに厳格な指導をすべき。法改正もやるべき。

 2017年3月に政府がまとめた「働き方改革実行計画」には「多様で柔軟な働き方を選択可能とする」という表現が見られる。

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 しかしこの言葉の裏にあるのは、経営者にとっての「柔軟な働かせ方」だ、というのが小池氏の指摘だろう。労働時間規制をはずす「高度プロフェッショナル制度」の創設や労働時間規制を緩和する裁量労働制の拡大が実現すれば、経営者は労働時間の上限規制にとらわれることなく、また残業代を実態に応じて支払う必要もなく、労働者を柔軟に働かせることができる。

 「残業時間の上限が月100時間」というのは、新たに設けられる時間外労働の上限規制において、単月での上限(休日労働を含む)が「100時間未満」であることを指している。上限を設けるにしてもそのような過労死ラインの上限であれば、かえって悪影響があるというのが小池氏の見方だと言えるだろう。

 後半で語られている「非正規という言葉をなくす」というのは、安倍首相が2016年9月2日に、働き方改革実現推進室開所にあたって語った言葉だ(「世の中から『非正規』という言葉を一掃していく」)。

 「言葉を一掃」と言っているに過ぎないのだが、非正規労働者の処遇改善に対する意気込みを語ったものとして当時、注目された。

 しかし非正規労働者の処遇改善に取り組むというのなら、いま大きな問題となっている無期転換ルールの適用回避のための雇い止めにも積極的な手を打つべきだ、というのがここでの小池氏の主張だろう。無期転換ルールについては、下記を参照されたい。

厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」

【自由民主党・柴山昌彦筆頭副幹事長】

 まず申し上げたい。長時間労働の是正はこれまで、やらなければいけないと言われながら、できてこなかった。それが、労使が話し合いをする中で残業ルールの見直しが、例外的な部分(臨時的な特例にあたる部分)についても目安が、目安というか、罰則つきで担保する部分も含めて、できたことは、非常に画期的なことだと言える。

 小池先生が過労死ラインを固定化するのかと指摘したが、決してそういうわけではない。あわせて「ガイドライン」で労働時間の短縮に向けた規定を設けることにしている。そこ(過労死ライン)にはりつかせようということでは、決してない。

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度についても、これは確かに、既存の労働組合の中からは声はでてきていないが、専門性の高い仕事の中で、時間管理しきれない部分が広がっているのは、これは事実。そういったこともしっかりと目配りをすべき。

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度について、「既存の労働組合の中からは声はでてきていないが」というのは、それらを求める声は出てきていないことを指すのだろう。他方で、それらに反対する声は連合からも、全労連からも、出てきている。

連合:労働基準法改正および労働安全衛生法改正等に関する法案要綱に対する談話(2017年9月15日)

全労連:【意見】「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」についての意見(2017年9月26日)

 裁量労働制や高度プロフェッショナル制度について、自由民主党・柴山氏がここであげている必要性が、「専門性の高い仕事の中で、時間管理しきれない部分が広がっているのは、これは事実」というものであることは、注目される。「時間管理しきれない」というのはつまり、経営者側の都合を指すのだろう。

【日本維新の会・馬場伸幸幹事長】

 労働者側のブラック勤務状態を改善していくのは当たり前の話だが、経営者側も大企業と零細企業では全く立場が違う。私が地元で話を聞くと、行政側の指導があって、時間がくればパソコンの電源が落ちるようにしている企業もある。いったいこれが何の経営の糧になるのか、大きな疑問を感じている零細企業の経営者の皆さんはたくさんいらっしゃる。

 もっと時間をかけて、労働者側・雇用者側、十分意見を聞きながら、あまり規制でがんじがらめにすることは、やめた方がいい。

 馬場氏はあえて、話をそらしているように見える。時間外労働の上限規制についても、高度プロフェッショナル制度の創設についても、裁量労働制の拡大についても、明確な意見を表明していない。ただし、「あまり規制でがんじがらめにすることは、やめた方がいい」という語りからすると、時間外労働の上限規制に反対であるのかもしれない。

【公明党・斉藤鉄夫幹事長代行】

 馬場氏の上記の発言を受けた形で島田キャスター(島田敏男・解説委員)は公明党の斉藤氏に、大企業をモデルにして考えるような仕組みだけじゃ世の中が回らないという問題が絡んでますよね、と話をふった。それに対する斉藤氏の発言は下記の通り。

 まさに一番大事な点を指摘されたと思う。

 大企業での長時間労働の規制はかなり進んできているように思う。それを中小企業の皆さんにも拡大していく、これは大企業と中小企業の取引関係の改善とか、大きな経済構造の改善を、一緒にやっていかないと、中小企業の皆さんへの恩恵(?はっきり聞き取れず)は進まない。

 しかしそのうえ、もう長時間労働は許さないということで、今回、罰則つきの規制を設けること自体は、これまで70年間の労働法制の歴史の中でなかったこと。これはしっかりと進めていきたいし、経営者の皆さんに理解していただきたい。

 そのうえで、いわゆる時間規制が適当でない、ふさわしくない業種の方については、これは「残業代ゼロ法案」ということではなくて、労働強化にならない範囲で、労働強化にならないような仕組みを設けたうえで、そういう制度をもうけていくことは、私は必要だと思います。日本のために。

 先ほどの自由民主党・柴山氏の「時間管理しきれない」は経営者側の都合を推測させるものだったが、公明党・斉藤氏は、労働時間規制の緩和を「日本のために」と語っている。少子高齢化が進行する中で経済成長を続けていくために、ということだろうか。

 いずれにしても、自由民主党の柴山氏も公明党の斉藤氏も、労働時間規制の緩和を労働者自身が求めている、とは語っていない。さすがにそのようには、語れないのだろう。

 なお、ここで公明党・斉藤氏は「労働強化にならないような仕組みを設けたうえで」と語っているが、高度プロフェッショナル制度に設けられた健康確保措置が極めて不十分であることについては、下記の記事にまとめた通りであり、「わたしの仕事8時間プロジェクト」のメンバーの追及に対して、厚生労働省担当者は反論ができない状況に追い込まれている。

「働き方改革」一括法案、連日24時間勤務の命令も可能に。制度の欠陥では、との問いに厚労省担当者は沈黙(上西充子) - Y!ニュース(2017年12月18日)

【立憲民主党・長妻昭代表代行】

 この法案には憤りを感じる。過労死のご遺族の方々も、この法案が通れば過労死は確実に増える、とおっしゃっておられる。私もそう思う。

 特に最大の問題は、裁量労働制という、残業時間を一定の時間と決めれば、それ以上残業しても残業代を出さないでいいという、これを営業に広げること。これは、無制限に働くような働き方を推奨しかねないものであり、これは電通の悲願でもあった。

 そういう働き方(裁量労働制の拡大)も(法案の)中に入れている、しかも(時間外労働の規制についても)1か月の労働時間100時間までOKだ、と(より正確には、時間外労働と休日労働をあわせて単月で100時間未満)。こういうとんでもない話なので、我々は対案としてインターバル規制、この法律を出したい。

 (インターバル規制は)ヨーロッパでは常識。退社してから出社するまで、最低11時間あける、これを確実に担保するような形でタガをはめたい。

 裁量労働制を営業に広げるのは撤回していただきたい。

 長妻氏の発言で注目されるのは、裁量労働制を営業に広げることについて撤回を求めていることだ。労働時間規制の緩和については、高度プロフェッショナル制度の創設に注目が集まりがちだが、高度プロフェッショナル制度の対象者には年収要件があるのに対し、裁量労働制の拡大については年収要件が設けられていない。対象範囲にはグレーゾーンが広く、このまま法改正されれば幅広い営業職に裁量労働制が適用されていく恐れがある。

 なお、裁量労働制の営業への拡大は電通の悲願でもあったという点は、長妻氏が2017年2月17日の衆院・予算委員会でも追及した問題だ。その質疑の様子は下記にまとめてあるので、ぜひご覧いただきたい。電通が営業への裁量労働制の適用拡大を求めてきたのは、それによって違法状態を合法化し、会社としての責任を問われないようにするためであったのではないかと思われてならない。

法人営業職への裁量労働制の適用拡大は、第3の電通事件を招きかねない(上西充子) - Y!ニュース(2017年4月14日)

 また、インターバル規制を含む対案を出すという意向が示されたことも注目される。インターバル規制は退社から出社までの間の時間を空けるものであるため、日々の健康確保に資するものだ。月単位の上限規制だけだと、徹夜が続くといった問題には規制が及ばないが、インターバル規制だと規制が可能になる。

 インターバル規制は、労働政策審議会の中で労働側委員を務める連合がかねてより求めてきたものだが、法案要綱では「努力義務」としてしか盛り込まれていない。これを「義務」にしようというのが、立憲民主党の対案のねらいだろう。

【希望の党・岸本周平幹事長代理】

 基本的には長妻さんの言っていることと同じ。さらに、裁量労働制の、例えば年収ですよね、高いところだからいいじゃないの、1,000万もとる人とかいませんよ、と(ここで、それは「高プロ」の話、と隣の長妻氏から訂正が入る)。

 高プロについて政令で(対象となる労働者の)金額が決められるもんですから(正しくは省令で決める)、法律じゃないんですね。1,000万が800万、400万になってくる。実際、経営側はそれ(引き下げていくということ)を言っていたこともあったわけです。もう少し法律でしっかり縛るという議論を。しかも法律を分けて(一括法案ではなく)。

 (政府が出そうとしている働き方改革法案は)一本に束ねて、我々はどうするんだ、と。少しは賛成する部分があったとしても、賛成できない。安保法もそうだった。一本ずつきちんと議論したい。また政令ではなく法律事項をきちんと決めていきたい。

 1,000万というのは、高度プロフェッショナル制度の対象者を年収1,075万円以上の者に限定することが予定されていることを指す。

 「経営側は言っていた」というのは、経団連が2005年の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」で年収400万円以上という額を示していたこと(p.13)や、1,075万円以上という対象範囲について、狭すぎるという声が経済界から繰り返し表明されてきたことを指しているだろう。

 

 岸本氏は、「一括法案」という手法についても批判していることが注目される。

【民進党・川合孝典幹事長代理】

 時間外労働の上限規制がかかるということ自体は、労働法の歴史の中でも画期的な取り組みであることは事実。他方、月100時間まで認めることがいいのかどうかについては、議論を深めていかなければいけない。ただ、現状では青天井の時間外労働が、罰則つきの規制の枠組みの中に入るという意味では、その点ではやはり評価しなければならない。

 他方、高度プロフェッショナル制度のように、「時間にとらわれない働き方」を一方で認めるということであるので、時間外労働を規制したいのか、労働時間にとらわれずに働かせたいのか、非常に相矛盾する状況になっている。

 そもそもこの法律(高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大を盛り込んだもの)は、別の法律として(2015年に)労働基準法改正案として出てきたものが、審議がなかなかできなかったものだから、ここへきて、(働き方改革関連法案と)ガッチャンコして一本の法律にしたということで、完全にこれは矛盾の状態になっている。

 ここで川合氏が指摘しているのは、日本共産党の小池氏と同様に、労働時間規制の強化と緩和が同時に法律に盛り込まれており、相矛盾する、という問題だ。

 また、川合氏が指摘しているように、高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大は2015年の労基法改正案に盛り込まれていたものであり、反対が強く審議入りができなかったものである。それを「働き方改革」の一括法案に「ガッチャンコして」盛り込んだ、という手法を批判している点は、希望の党の岸本氏と同様だ。

【社会民主党・又市征治幹事長】

 この法案は一言で言えば、「毒まんじゅう法案」だと思う。残業時間の罰則つき上限とか、いくらかは評価していい内容が若干は入っているが、何のことはない、「残業代ゼロ」と悪名が高い高度プロフェッショナル制度を導入する、「定額で働かせ放題」の裁量労働制の対象の拡大をする。

 労働者が求めていないものを、8本の法律にみんな、ガチャンコとまとめて、岸本さんもおっしゃるように、安倍政権、これ(一括法案)、大好きなんですね。安保法制も11本の法律を、みんなまとめて。審議なんかまともにできやしない。今度も、賛成できる部分があっても賛成できないことになっている。

 ちゃんと分離して、柴山さんね、これは(一つ一つの内容を)分離をして、しっかりと議論ができて、本当に労働者の働きがよくなる、残業規制がしっかりと行き届いていく、こういう法案に仕上げるために、与党は努力してくださいよ、よろしくお願いしますよ。

 「毒まんじゅう」の「毒」として又市氏が指摘しているのは、高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大だ。それを一括法案にまとめて成立させようとする手法を又市氏は批判し、一括法案化しないよう、与党に求めている。さて、与党はこの声にどうこたえるのか。

【自由党・森ゆうこ幹事長代理】

 過労死は絶対おこしてはいけないことは大前提。働き方は、かつて、女性が家庭で専業主婦として家庭生活を全面的に責任を負い、男性は企業戦士として働く、その、かつての、そんなに長い期間でもないのだが、日本社会の働き方が、もう頭の中にこびりついていて、その発想から抜け切れていないのではと思う。

 女性活躍もいいが、今のような働き方では家庭と仕事の両立は絶対できない。男性も女性ももう、ぎりぎりまで働く、どうやって結婚相手をみつけ、どうやって子どもを産み、育てることができるのか。発想を完全に転換して、議論しなければならない。

 又市さんがおっしゃったように、この二つ(労働時間規制の強化と緩和)を一緒にやるというのは絶対だめ。もっとしっかり議論しましょう。

 森氏が前半で語っているのは、時間外労働の上限規制とは、過労死しないレベルに設定すればいいというものではなく、男女が共に働きながら家庭生活も営めるものであるべきだ、ということだろう。そのうえで森氏もまた、相矛盾する内容を含む一括法案という手法を批判している。

【自由民主党・柴山昌彦筆頭副幹事長】

 これらの野党側の批判を受けて島田キャスターが

安全保障関連法の時も議論になったが、束ねてまとめて出した結果として、個別にばらして審議することができない、これはどうなんでしょう、今度の法案も今、各党から、賛成できる部分と反対する部分がいくつかあるんだから、一括の関連法案というやり方を変えてはどうかという提言があった

と語り、自由民主党・柴山氏に見解を求めた。それに対する柴山氏の発言は次の通り。

 これはですね、働き方改革という、要は、個々の労働者の方の「自己実現」を含めて、トータルとしての生産性を上げるということの、それぞれ、分割することのできない側面を表している、それぞれの規制なんです(野党側から異論の声)。

 まず一つ言わせていただくと、岸本先生がおっしゃったような、高度プロフェッショナル制度の適用者について、きちんとした数字が出ていないということについては、これは法案要綱で「支払われることが確実に見込まれる賃金の額が平均給与額の3倍を相当程度上回る」ということを規定をしている。無条件にそれが引き下がるということはないと思っている。

 長妻先生がおっしゃった裁量時間(裁量労働制のこと)の規制の範囲に営業の方が含まれるんじゃないかということですね、これも今、いろいろと調整をさせていただいているところで、営業の方がですね、長時間労働の犠牲にならないように、しっかりと進めていきたいと思う。

 トータルとして、働き方改革は、進めていかなければならない。「自己実現」のためにも、それが必要だということだと思っている。

 前半では「専門性の高い仕事の中で、時間管理しきれない部分が広がっているのは、これは事実」と語っていた柴山氏が、ここでは労働者の「自己実現」を語っている。

 これは、2017年3月の「働き方改革実行計画」に高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大を盛り込んだ際に「意欲と能力ある労働者の自己実現の支援」という表現を使ったことを受けているのだろう。

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 しかし、労働者側が「自己実現」したいから労働時間規制を緩和してくれ、と求めているわけではない。

 ところで営業への裁量労働制の拡大について、柴山氏が「今、いろいろと調整をさせていただいているところ」と語ったことは注目される。番組終業後に柴山氏は下記の通りツイッターでも「修正します」と語っている。

 これはつまり、法案要綱の内容に修正を加えるということだろうか。

おわりに

 最後は島田キャスターがこう締めくくった。

まさにこの法案、まとめた、束の法案として出てきても、それがどう審議されるかというのは国民が注目していますから、安全保障関連法の時のようなことがまた起きるのか、それとも少しは工夫が出るのか、この点、与党もしっかり、考えていただいた方がいいんじゃないでしょうか。

 束の法案(一括法案)として出すな、というのが野党各党の主張であったので、島田キャスターがこのようにまとめるのは不適切では、とも思うのだが、しかし、法案の中身と共に「一括法案」という手法についても大きな対立点がある、ということが最後に改めて示されたことには意味があるだろう。

 「働き方改革」関連の一括法案は、まだ閣議決定が行われていない。2017年夏には、高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大について、連合の要請を受けた形で2015年法案から若干の修正が加えられている。そしてさらに現在、先ほどの柴山氏の発言に見られるように、さらなる修正の可能性が示唆されている。

 言い換えればそれは、数の力だけでこの対決法案を押し通すことが困難だと与党が考えているということだ。それだけに野党が、そして私たちが、この法案にどれだけ関心をもち、どう向き合うかが、問われていると言えよう。

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(※1)NHKが示したフリップでは「時間外労働の上限規制」として、「最大 年720時間以内・月100時間未満」とされていた。しかしこれは、正確な表現ではない。

 正確には、時間外労働が年720時間以内、時間外労働と休日労働をあわせて月100時間未満、である。時間外労働と休日労働(労働基準法上の休日は週に1日)は労働基準法上、扱いが異なる。

 そして、日本労働弁護団が「『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱』(働き方改革推進法案要綱)に対する意見書」(2017年11月9日)で法律案要綱を読み解いて解説しているところによれば、下記の通り、制度上は年間合計960時間の時間外・休日労働をさせることができるようになるという。

(1)特例を活用できる6回(6か月)で1箇月80時間×6月=480時間の時間外・休日労働が可能となり、あわせて、(2)特例を活用しない月(残り6回・6か月)でも毎月80時間以内の時間外・休日労働をさせることができることになるので、この計480時間を合わせると、結局、制度上は年間合計960時間の時間外・休日労働をさせることができることになる。

(※2)NHKが示したフリップには「高度プロフェッショナル制度」について、「働いた時間ではなく成果で評価」と書かれていたが、高度プロフェショナル制度は、成果型賃金体系を条件とするものではない。佐々木亮弁護士らは、この表現は不適切であるのでやめるよう繰り返し求めているが(下記の記事を参照)、NHKはこの表現を使い続けている。

「成果型労働」「成果で評価する」という誤報が止まらない(佐々木亮) - Y!ニュース(2017年7月22日)

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<加筆・修正情報>

●自由民主党・柴山氏の発言部分で、「例外的な部分(特別条項のことか?)」としていた箇所を「例外的な部分(臨時的な特例にあたる部分)」と修正した(1月22日)

●NHKが示したフリップの「時間外労働の上限規制」が「最大 年720時間以内・月100時間未満」という記載について、※1の注を追加した(1月22日)