安倍首相が語らなくなった「働き方改革」。私たちが求める「働き方改革」とは

日比谷野音集会チラシ(部分)

12月7日、日本労働弁護団の主催で日比谷野音集会「8時間働けば誰でも暮らせる社会を!―働き方改革ってなんだろう?―」が開催された。

プログラムとチラシ

集会アピールと関連する意見書・記事

映像

集会アピール
集会アピール

この集会は、ポジティブなメッセージを前面に打ち出す新たなスタイルを模索したものであり、筆者も企画段階から参加した。

安倍首相は最近、「働き方改革」を語らなくなっている。

その中で私たち自身が、どのような働き方を求めていくのか、私たちが求める「働き方改革」とは何なのかを問い直すことが必要ではないか、と、筆者は会場発言を行った。

語った内容とはやや異なるが、事前に用意した原稿を転載しておきたい。

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今回の集会テーマは、「8時間働けば誰でも暮らせる社会を!~働き方改革ってなんだろう?」です。

このテーマについて私が考えるところを、お話しさせてください。

「働き方改革」が「最大のチャレンジ」(※1)だと語っていた安倍首相は最近、「働き方改革」について、まったく語らなくなりました。

衆議院の解散宣言の際(9月25日)に安倍首相が語ったのは、「生産性革命」と「人づくり革命」です(※2)。

これらが「2つの大改革」と位置づけられました。

「働き方改革」は、いったいどこに行ったのでしょうか?

おそらく安倍政権としては、「働き方改革」という言葉がひとり歩きしている現状を、快く思っていないのでしょう。

いまでは「働き方改革」という言葉を、多くの人が知っています。

一括法案の中身を知らない人でも、「働き方改革」という言葉は知っています。

そして、みずからが求める働き方を、「働き方改革」という言葉を使って語る動きが出てきています。

例えば学校の教職員の長時間労働問題については、退職教員や現役の教員からも声が上がるようになりました。

彼らは、部活動ではなく、本業である授業の準備ができる時間を確保できる働き方を、という要求を、「働き方改革」という言葉に託し、記者会見や中教審への要請などを行っています(※3)。

他方で5日の日本経済新聞(※4)には、「働き方改革の柱である『脱時間給』の制度化は長く棚ざらしのままだ」という表現が見られます。この「脱時間給」とは、「高度プロフェッショナル制度」、つまり、労働基準法による労働時間の規制が及ばない働き方を指すものです。

経済界にとっては「高度プロフェッショナル制度」の導入が、「働き方改革」の柱なのでしょう。

つまり、いま何が起きているかというと、「働き方改革」という言葉に、様々な立場から違った意味づけがされてきており、「働き方改革」という言葉の意味づけをめぐって、「主導権争い」が起こっている、それが現在の状況だということではないでしょうか。

そうであれば、私たちが今おこなうべきは、「働き方改革」の主導権を、しっかりと握っていくことでしょう。

もともと「働き方改革」は、働く人の願いをうまく取り込もうとしたネーミングです。

「岩盤規制」を「ドリルの刃」で打ち砕いていく、という言い方では、労働者の側が強く警戒してしまうために、「働き方改革」というネーミングを、いわば「抱き込み戦略」として、考え出したのでしょう。

その「抱き込み戦略」がうまくいかなくなってきたからこそ、「働き方改革」という言葉を、安倍首相は口にしなくなってきたのではないでしょうか。

この前の衆議院選挙で、立憲民主党の枝野代表は、上からの政治ではなく、草の根からの民主主義を、と訴えました(※5)。

私たちも、「働き方改革」が恩恵のように上からもたらされるのを、口をあけて待っていたのでは、何を飲み込まされるか、わかったものではありません。

安倍政権は、「多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する」(※6)という言葉の中に、「高度プロフェッショナル制度」の創設も、裁量労働制の拡大も、「雇用関係によらない働き方」の促進も、盛り込んでいます。

聞こえの良い言葉を使いながら、労働法制の規制緩和を進めようとしています。

そのような「働き方改革」ではなく、私たちが求める「働き方改革」とは何なのか。

「まともな働き方」とはどのような働き方であり、どうやってそれを実現していくことができるのか。

それを、一人ひとりが考え、職場で共有して、草の根からの「働き方改革」につなげていくこと。

それが大事だと考えます。

「8時間働けば誰でも暮らせる社会を」。

これがこの集会のメイン・アピールです。

残業するのが当たり前ではなく、8時間働けば肩身の狭い思いをすることなく堂々と帰れるのが、まっとうな社会であるということ。

8時間働けば誰でも、生活できる賃金が支払われるのが、まっとうな社会であるということ。

そして、雇い止めの不安なく働けるのが、まっとうな社会であるということ。

今の社会はそのような理想とは程遠いけれども、「働き方改革」というのなら、目指すべき方向性はそういう方向性であるということ。

そういう理解を広げていくことが大切ではないでしょうか。

今日の集会の内容をどう持ち帰れるか、どう次につなげていくことができるか。

それぞれのお立場で、考えていただければと思います。

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※1:安倍内閣総理大臣記者会見(2016年8月3日)

※2:安倍内閣総理大臣記者会見(2017年9月25日)

※3:「「部活は教員の本来業務ではない」教員グループ、中教審の働き方改革中間案に物言い」(弁護士ドットコムニュース 2017年12月4日)教働コラムズ「学校の働き方改革 勝手に審議会」

※4:「連合 高めの4%要求 賃上げ「一律」難しく」(日本経済新聞 2017年12月5日)

※5:立憲民主党 枝野幸男代表 演説全文(10月14日新宿)

※6:「働き方改革実行計画」(2017年3月28日)p.2