教員の業務の限定に向けて労働組合の積極的な関与を

シンポジウム資料

 

 教員の過重労働問題に対し、現場の教員から改善を求める声や改革の動きが高まっている。

 政府が進める「働き方改革」では時間外労働の法的な上限を設ける法改正が予定されているが、公立校の教員はその対象外であり、「給特法」によるわずかな教職調整額の支給のみで過労死ラインに達する長時間労働を余儀なくされている。この状況の中で、部活動の負担軽減に向けた動きも盛り上がってきた。

中学校教員の8割が月100時間超の残業 働き方改革「上限規制」の対象外(内田良) - Y!ニュース(2017年4月28日)

部活問題 教員の全国ネット始動 中学校の部活動で勤務時間大幅増の現実(内田良) - Y!ニュース(2017年5月3日)

注目を集めた英国の取り組み

  筆者は7月25 日にシンポジウム「教職員の働き方を考える」に参加し、当日配布資料から樋口修資・明星大学教授の資料の一部をツイッターで紹介したところ、大きく関心を集めた。

 ここには部活動に関する記載はない。部活動の顧問はそもそも、英国においては教員の業務ではないのだろう。それ以外の様々な業務、具体的には集金業務や各種の文書の作成・分析業務、備品の管理業務などについて、教員が日常的に行わなくてもよい業務と位置付けられているのだ。

 この文書に対し、ツイッターでは「ほとんどやっている」「こうなったらいいのに」という趣旨の反応が多く寄せられた。

 では、このように教員の負担軽減が図られるためには、どうしたらよいのだろうか。

 この文書の出典は下記の方が指摘されているように、英国において2003年に締結された合意文書である。

Raising standards and tackling workload: a national agreement

 誰が結んだ合意文書であるのか。下記の方が指摘するように、労働組合が合意の当事者に含まれている。

 この合意文書の抄訳が三重県教育委員会「平成15年度英国教育改革調査報告書」にある(p.85-)(※)。

教育技能省「水準向上と教員の負担軽減に関する国民合意」

 その抄訳によれば、合意文書は下記の11団体の間で締結されている。

三重県教員委員会報告書より(表紙部分を合成)
三重県教員委員会報告書より(表紙部分を合成)

 日本の文部科学省にあたる教育技能省のほかに、教員組合、職員組合、管理職団体などが合意文書に署名していることが、ここからわかる。

 筆者にはこの合意文書が結ばれた背景やその後の状況を紹介できるだけの知識がない。さしあたりネットで読める論文を1つ見つけたので情報として紹介しておく(他にも、より新しく、より適切な文献があるかもしれない)。

●藤原文雄(国立教育政策研究所)(2014)「教職員の多様化とダイバーシティ・マネジメント―国際的動向も踏まえて―」『日本教育経営学会紀要』第56号

 日本では現在、教員の働き方をめぐっては、当事者である教員有志からの問題提起とネットワーク化が活発になっているが、下記の方が指摘されているように、その動きを実際の業務負担軽減につなげていくためには、ここでみた英国の合意文書のように、労働組合の役割が重要だろう。

教員の過重労働に対応した日教組の取り組み

 筆者の知る限りでは、日教組(日本教職員組合)は「日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する研究」を連合総合生活開発研究所(連合総研)に委託し、その結果を公表すると共にシンポジウムを開催している。

●連合総研「とりもどせ!教職員の「生活時間」-日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する調査研究報告書-」(2016年12月)

●連合総研主催のシンポジウム「とりもどせ!教職員の『生活時間』」(2017年1月27日)

 さらにこの調査結果を受けた緊急政策提言を2017年2月27日に発表している。

日教組による緊急政策提言
日教組による緊急政策提言

 また、非正規教員に関する調査も行っている。

非正規教員、担任も部活も 「空白期間に仕事」4割 日教組調査:朝日新聞デジタル(2017年6月5日)

 このような労働組合の動きと、問題意識を持った現場の教員からの動きにどのような連携があるのか、筆者は把握していないが、今後はぜひ、連携を深めていただきたい。そのための一助になればと、英国の動きについての情報を紹介した。

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(※)この三重県教育委員会の調査報告書では、シンポジウム資料として紹介した箇所は次のように訳されている。

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