「働き方改革」関連法案、「残業代ゼロ法案」との一括法案に? 別々の審議を求めるも塩崎大臣は答弁を拒否

厚生労働省HPより

 3月28日に決定された「働き方改革実行計画」。時間外労働の上限規制と「同一労働同一賃金」に注目が集まっているが、どちらも政策決定のプロセスに疑問が残り、内容的にも問題含みであることが、次第に明らかになってきた。

 さらに6月2日の衆議院厚生労働委員会では、野党や労働団体、弁護士の団体などが強く反対してきた「残業代ゼロ法案」(高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の拡大を含む労働基準法改正案)について、「働き方改革」関連法案と共に一括法案として臨時国会に出すのではないかと長妻議員が塩崎厚生労働大臣にただし、別々の審議を行うことへの明言を求めた。しかし塩崎大臣はその質疑をかわしつづけ、一括法案化への懸念が強くなった。

 このままスピード感を持って「働き方改革」を進めてよいのか、また「働き方改革」を進めるためには「残業代ゼロ法案」も飲まなければならないのか、改めて今、問い直されなければならない。上記の点について、順を追って見ていこう。

「過労死ライン」の上限規制、連合トップはしぶしぶ承諾

 時間外労働の上限規制をめぐる政策決定プロセスについては、朝日新聞の連載「働き方改革を問う」の第4回記事が詳しい。

(働き方改革を問う:4)残業時間の上限規制 「月100時間」、労使が神経戦(朝日新聞2017年6月4日

 単月100時間未満、どの2~6か月においても月平均80時間以内という「過労死ライン」の上限設定(いずれも休日労働を含む)は、労使トップ(経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長)による合意(「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」2017年3月13日)を踏まえて「働き方改革実行計画」にもりこまれたという体裁が取られている。しかし実際には、働き方改革実現会議の初会合の2週間前の2016年9月13日には、「単月で月100時間」という上限を含む政府原案が既にできていたという。

 連合の神津会長は「働き方改革実現会議」第6回会合(2017年2月1日)で、直前に報じられていた政府案の「月最大100時間」について、「到底あり得ない」と発言し、当日の会議後にメディアに対してもそう語っていた。

 にもかかわらず、3月13日の労使合意では「月100時間」(安倍首相の提案により、最終的に「月100未満」)での合意に追い込まれた。その背後には、「働き方改革実現推進室」の室長代行補として会議を仕切った新原浩朗氏の圧力があったことが朝日新聞の記事からはうかがえるが、詳細は明らかではない。

 また本記事では話が複雑になることもあり、「同一労働同一賃金」に関する政策決定プロセスの問題については触れないが、朝日新聞の下記の連載記事では、フォーマルな検討会をないがしろにして官邸主導でガイドライン作成が行われたことや、そこでも新原浩朗氏が重要な役割を果たしていたことなどが、明らかにされている。

(働き方改革を問う:1)同一労働同一賃金 指針作り、水面下で(朝日新聞2017年5月14日

「過労死ライン」の長時間労働にお墨付きを与えないための条件整備は、労働政策審議会で検討されないまま

 単月100時間未満、どの2~6か月においても月平均80時間以内という「過労死ライン」の上限設定は、連合の神津会長にとって、不本意な形で強いられた合意内容であったはずだ。にもかかわらず4月3日に連合の逢見直人事務局長が出した「「働き方改革実行計画」についての談話」には

長時間労働の是正については、3月13日の労使合意に基づき、罰則付き時間外労働規制の導入という、労基法70年の歴史の中での大改革に至った。

と、高評価が与えられている。さらに神津会長自身も『週刊東洋経済』2017年4月15日号のインタビュー記事の中で、時間外労働の上限が初めて法的に規制されることとなったことについて

連合が是正すべきとずっと主張してきた課題で、政府として大きく一歩踏み出す内容となったことは、率直に評価している。

と語り、さらに、「月100時間未満」といった上限では働き過ぎを助長することになるのでは、という問いかけに対し、

この特例のみが独り歩きして報じられているのはたいへん遺憾だ。実行計画ではあくまで残業の上限は「月45時間、年間360時間以内」を原則としている点を強く訴えたい。

と答えている。

 このような姿勢は、筆者には納得がいかないものだ。特例の「月100時間未満」が、そこまでは残業させてもよいというお墨付きにならないためには、メディアの報じ方を批判するのではなく、それをあくまで「特例」とするためにどのような限定をつけていくかという課題に、積極的に取り組むべきではないのか。そしてそれは、法制化に向けた労働政策審議会において労働者代表委員が担うべき役割ではないのか。

 上述の「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」(2017年3月13日)は、上限時間水準までの協定を安易に締結しないための努力を「個別企業労使」に求めている。

 なお、労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を満たすうえでの最低基準を定めたものであり、労使はその向上を図るよう努めるべきとされている。特別の事情により「特別条項」を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月45時間、年360時間の原則的上限に近づける努力が重要である。

 個別企業労使には、このことをしっかり確認し合いながら、自社の事情に即した時間外労働の削減に不断の努力を求めたい。

 しかし、一足飛びに「個別企業労使」に委ねる前に、これから作られる予定の法律や省令に、上限時間水準までの協定が安易に締結されることを防ぐ条項を盛り込むべきではないのか。

そのための検討の場としては現在、労働政策審議会の労働条件分科会がある。しかしその分科会における議論が、きわめて低調なのだ。

労働条件分科会で検討されるべき論点

 時間外労働の上限規制についての労働条件分科会はこれまで、4月7日、4月27日、5月12日、5月30日と高頻度に開催されており、次の会議が6月5日に予定されている。配布資料は公開されているが、議事録はまだ公開されていない。5月30日の会議では既に「報告案」が事務局から提示されるに至っている(※1)。

 筆者はこれまでの4回の会議のうち4月27日と5月30日の会議を傍聴したが、どちらの会議でも労働者代表委員の発言は控えめなものが多かった。報告案が提示された5月30日の会議では、会議予定時間を大幅に残したまま、続く発言がなく会議は終了している。

 既に議論が尽くされているのかと言えば、そんなことはない。詰めるべき論点は、本当は多数、あるはずなのだ。

 先ほど見たように「月45時間、年360時間」の原則的上限に近づける努力が重要であるのなら、特別条項を締結する場合について、条件を厳格に限定することが検討されるべきだろう。また「単月100時間未満」という上限について、段階的により短くしていくことも検討できるはずだ。限度基準の適用除外とされた業務についても、ところどころで言及されているものの、議論は詰められていない。

 また全労連や全労働など11の団体からなる雇用共同アクションは6月1日に「時間外労働の上限規制等、労働時間法制の改正についての意見」を塩崎厚生労働大臣と労働政策審議会労働条件分科会委員にあてて公表している。

 そこでは「過労死ライン」の残業を合法化することは、「各職場の36協定の在り方とその運用、労災認定・補償の在り方、労災に関する裁判などに悪影響をもたらす可能性が高いのではないか」といった懸念が示されている。しかしそれらの懸念については、労働条件分科会で論点としてきちんと取り上げられてきた形跡は見えない。

 もっとも労働条件分科会では、36協定を締結せずに時間外労働をさせている場合があることや、36協定締結のための労働者の過半数代表者の選出方法に問題がある場合があることが課題として指摘されてはいる。しかしその課題を解消していくために、どのような法制度の整備を行っていくべきかについて、踏み込んだ議論が見られず、報告案にも盛り込まれていない。

 雇用共同アクションの意見書では、8項目にわたる要請項目の1つとして36協定を取り上げ、下記のように求めている。

5. 36協定の締結・運用・提出と、監督行政における内容のチェック・指導の厳格化を、以下のようにはかること。

(1) 労働者の過半数代表者の選出手続きを厳格にするため、選出時期、立候補機会の付与、代表者の規定(管理監督者を除く)、無記名投票、費用の使用者負担、不利益取り扱いの禁止などを法律で規定すること。

(2) 36協定の起算日を明確にし、協定期間内の出し直しによるリセットを許さないため、労使合意の協定であっても、時間外労働の絶対上限を外す効果はないことを明確にすること。それに基づき、労働基準監督署では受理した協定を過去の協定を照合し、違法性をチェックするものとすること。

(3) 時間外労働規制の運用から外されている管理監督者の規定について、厳格な運用を周知・徹底すること。

 このうち(1)の選出手続きは労働条件分科会でも労働者代表委員から課題として指摘があった部分である。課題を解消していくためにはここに挙げられているように具体的な形で法律に規定していくことが重要であるはずなのだが、実際の労働条件分科会では、課題の指摘を超えて対策を詰める議論に至っていない。

 また、(2)にあるような脱法的な運用が実態として行われているのであれば、それを防いでいくことも重要な課題であるはずだ。

 さらに、時間外労働の上限規制に実効性を持たせるためには、前提として労働時間の客観的な把握が極めて重要であるはずなのだが、その点についても踏み込んだ議論が行われていない。雇用共同アクションの意見書ではその点について、下記の通り求めている。

4. 管理監督者、みなし労働時間制の適用対象者等を含む全労働者に対する労働時間管理・把握を使用者に義務付けること。管理監督者も含め、すべての雇用労働者に対する労働時間管理・把握とそれを記した労働時間台帳の作成を使用者に義務付けること。

論点を詰める機会を失わないために

 労働条件分科会は、この調子でいけば、上記のような論点を詰めないまま、次の6月5日に報告案の了承に至ってしまいそうな気配だ。報告案が了承されれば、それが厚生労働大臣に対して建議され、次は厚生労働大臣から法律案要綱が諮問され、その要綱を検討した上で答申を行うというプロセスになる。

 法律案要綱に何を書かせるかを決めるのは「報告」の内容なのだが、現在の報告案では、「働き方改革実行計画」に記された内容をほとんどなぞるだけに終わってしまっている。

 ここはぜひ、労働条件分科会の委員の方々には踏みとどまっていただき、時間外労働を原則的上限に近づけていくための実効性ある方策や、適切な上限規制が行えるための方策を「報告」に入れ込む努力をしていただきたい。またその上で、法律案が諮問された際には、その内容についても慎重に検討をお願いしたい。

「働き方改革」関連法案、「残業代ゼロ」法案と一括法案になって臨時国会へ?

 その先の法案の検討は、国会に委ねられることになる。しかしそこがまた、大きく問題含みなのだ。「働き方改革」関連法案が、2015年に国会に提出されたまま審議されずにある「残業代ゼロ法案」とセットの一括法案として、秋の臨時国会に提出されることが見込まれているからだ。

 「残業代ゼロ法案」とは、労働時間規制の適用除外となる高度プロフェッショナル制度の創設と、裁量労働制の営業などへの適用拡大を含む労働基準法改正案のことで、長時間労働の悪化を招くことなどから野党や労働団体、弁護士の団体などが強く反対している。そのため、2015年4月に国会に提出されて以降、審議入りが避けられてきたものだ。

 時間外労働の上限規制が「働き方改革」によって法的に設けられる一方で、「残業代ゼロ法案」によって、その時間外労働の上限規制の対象外となる労働者の範囲が広がることになれば、長時間労働の助長につながりかねない。しかし産業界は、上限規制を受け入れることと引き換えに、高度プロフェショナル制度の創設や裁量労働制の拡大を強く求めている。

 そして、高度プロフェショナル制度の創設や裁量労働制の拡大を労働側が受け入れたわけではないにもかかわらず、「働き方改革実行計画」にはあたかもそれらの受け入れについても合意されたかのような記載が含まれることとなった。そのことについては、下記の記事に記した通りだ。

「働かせ方改革」ならぬ「働き方改革」のためには、「残業代ゼロ法案」の撤廃と「休息時間確保権」の保障を(上西充子) - Y!ニュース (2017年4月2日)

 そして今、秋の臨時国会において、下記の3つの法案(働き方改革関連でさらに追加されるのかもしれない)が、一括法案として提出される恐れがあるのだ。

(1)「残業代ゼロ法案」(労働基準法改正案):高度プロフェッショナル制度の創設や、裁量労働制の営業への拡大などを含むもの(2015年4月に国会提出済み)

(2)時間外労働の上限規制に関する法改正案(労働基準法改正案)(労働政策審議会の労働条件分科会で、その内容を検討中)

(3)同一労働同一賃金に関する法改正案(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正案)(労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会で、その内容を検討中)

 単独では強い反対を押し切って成立させるしかない(1)の「残業代ゼロ法案」を、多少とも労働者側の期待が反映されている(2)と(3)の法案とセットの一括法案にして成立まで持ち込もう、という戦略だ。この戦略については既に4月12日の日本経済新聞で次のように報じられていた。

「脱時間給」成立、今国会見送り 働き方改革と一体審議へ(日本経済新聞2017年4月12日)

 働き方改革は労働者保護の色彩が前面に出る。このため政府・与党内には「脱時間給も働き方改革とセットにできれば連合や野党も反対しづらい」(厚労省幹部)との声が上がる。残業時間規制も労基法の改正が必要になる。脱時間給を可能にする労基法改正案は今国会での成立を見送り、臨時国会で働き方改革関連法案と一体で審議することで成立させやすくなるとの狙いだ。

 逆に別々に成立を目指す事態になれば「(脱時間給導入を含む)労基法改正案の成立は当面見込めなくなる」(内閣官房の担当者)との見方もある。

一括審議をしないとの明言を長妻議員が塩崎大臣に求めるも、大臣は答弁拒否

 もし一括法案化されてしまうと、これについては賛成、これについては反対、と選り分けて賛否を表明することができなくなる。また、(1)については与野党の隔たりが大きく、(2)と(3)についても上記で時間外労働の上限規制について見てきたように、詰められるべき論点を多く残しているにもかかわらず、それぞれについて慎重な審議ができなくなる。

 国会審議は賛否と法案の成立・不成立だけに帰結するわけではなく、審議の中で個別の論点を詰めていき大臣の答弁を引き出していくプロセスが、その後の省令・指針の内容を決めていくという重要な役割も持っている。また、附帯決議によって、法の見直し時期に関する規定が加わることもある。そのように様々な意味で、一括法案化は、国会の大事な審議を損なうものなのだ。

 政府が「働き方改革」を政労使の合意のもとに進めていこうとしているのであれば、反対が強く審議入りが避けられてきた「残業代ゼロ法案」をだましうちのように一括法案に含ませるべきではない。

 しかしこの点について6月2日の衆議院厚生労働委員会において民進党の長妻昭議員が塩崎厚生労働大臣に問いただし、別々の審議を行うことについて明言を求めたところ、塩崎大臣は

今後出てくるものについてどうするかは、まだ、何も決まっていない

として、かたくなに答弁を拒んだ。

 約9分間にわたって長妻議員は繰り返し答弁を求め、一括法案となれば国会の審議権を不当に制約する話だとして、委員長にも理解を求め、別々の審議を求めたにもかかわらず、塩崎大臣は同じ話を繰り返し、別々の審議を行うか否かについては答弁を避け続けた。

 その様子は本記事の末尾に【資料】として文字起こしを示したので、ご確認いただきたい。本来、慎重な審議のためには一括法案化はなされるべきではないにもかかわらず、一括法案化はしないとの明言をかたくなに拒むということは、やはり一括法案化が狙われているということなのだろう。

 この質疑の中で長妻議員は「セット販売」という表現を使っている。商品のセット販売であれば、欲しい商品といらない商品が抱き合わせで販売されていた場合、割高だとは思いつつそのセット販売商品を購入し、いらない商品は捨ててしまうことができる。けれども一括法案の場合、成立してしまえば、本来成立させるべきでなかった法律が社会に悪影響を及ぼすことを避けることができなくなってしまう。商品のセット販売よりも、法案の「セット販売」は大幅に悪質なのだ。

 しかし一括法案化は今国会でも行われている。筆者が参考人としてかかわった職業安定法改正案は、待機児童対策として育児休業期間の延長を盛り込んだ育児・介護休業法の改正案と一緒にされ、さらに雇用保険の改正案と労働保険徴収法の改正案も合わせた形で「雇用保険法等の一部を改正する法律案」として国会に提出され、審議の上、成立に至っている。参考人意見陳述では筆者はもっぱら求人トラブルについて取り上げたが、別の参考人は待機児童問題をもっぱら取り上げており、委員会の審議においても、全く異なるテーマが1つの委員会の質疑の中で行ったり来たりしながら取り上げられる状態であった。

 もし「働き方改革」関連の2つの法案と「残業代ゼロ法案」が一括法案化されることがあれば、この「雇用保険法等の一部を改正する法律案」の場合以上に大きな混乱となるだろう。そのことは十分に見込まれるにもかかわらず、長妻議員の質疑に塩崎大臣が答えない、それが現状において起こっていることなのだ。

今、必要なこと

 

 その現状と、本記事の冒頭で見てきたような強引な政策決定プロセスは、呼応しているように筆者には思える。

 今必要なのは、そのような強引な政策決定プロセスを黙認して押し流されることではなく、それに対してはっきりと「NO」と言うことなのではないか。

 労働政策審議会の各部会では、その部会における検討課題を丁寧に詰めていくことと同時に、労働政策審議会において労使合意に至らないまま(※2)法案化された「残業代ゼロ法案」の一括法案化を認めないことも、報告に書き込んでいくべきではないか。

 さらに、法律案要綱が諮問される際にも、一括法案化の可能性について議題にあげていくべきと考える。現状では「働き方改革」関連の検討課題だけが議題になっているが、「働き方改革実現会議」の場合のように、会議の議題にならないままに、あたかも合意されたかのように「残業代ゼロ法案」の内容が割り込んでくる事態を、傍観して繰り返すことは行うべきではない。

 また衆参の厚生労働委員会では、長妻議員の今回の質疑を受けて、臨時国会で一括法案化して法案が提出されることがないよう、別々の審議を行うことについての明言を各議員から改めて塩崎大臣に求めてほしい。

 私たちも、事態の進行を注視し、透明性をもったプロセスの中で政策の検討が進んでいくことを求め続ける必要があるだろう。

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(※1)「同一労働同一賃金」については、労働政策審議会の「労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」で検討が行われており、こちらも4月28日、5月12日、5月16日、5月30日と高頻度で会議が開催されている。次回の会議は6月6日が予定されている。

(※2)高度プロフェッショナル制度の創設と裁量労働制の適用拡大については、労働条件分科会で労働者代表委員が強く反対したにもかかわらず、2015年2月13日に「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」としてとりまとめられた。ただしその報告には、それぞれの導入を認めない旨の労働者代表委員の見解が次のように明記されている。

 

なお、労働者代表委員から、企画業務型裁量労働制の対象業務に新たな類型を追加することについて、みなし労働時間制のもとに長時間労働に対する抑止力が作用せず、その結果、長時間労働となるおそれが高まる労働者の範囲が拡大することとなることから認められないとの意見があった。

 

また、労働者代表委員から、高度プロフェッショナル制度について、既に柔軟な働き方を可能とする他の制度が存在し、現行制度のもとでも成果と報酬を連動させることは十分可能であり現に実施されていること及び長時間労働となるおそれがあること等から新たな制度の創設は認められないとの意見があった。

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【資料】 2017年6月2日の衆議院厚生労働委員会における長妻昭議員の質疑より、一括法案化の「悪い噂」について

衆議院インターネット審議中継録画より文字起こし)

(録画の 6:09:30~6:18:15 頃まで)

●長妻議員

もう一つですね、ちょっと「悪い噂」を聞くわけでございますけれども、どういう噂かと言いますと、今回「働き方改革」で残業時間の上限を決めたと。それについては、おそらく秋に労基法の改正案が出てくるでしょう。そして、もう一つ、同一労働同一賃金で、おそらくパートタイム労働法と労働契約法と派遣法が関係するから、それらの改正法案も出てくると思います。

その時にですね、「悪い噂」と言いますのは、今回の高度プロフェッショナルと今回の裁量労働制の営業(への)拡大の法案も、まとめて一本にして、国会に出すんじゃないか、あるいは一括して審査して、そして賛否を問うんじゃないのかと。

まさか、そんなことはないとは思いますけれど、いろんなところから、経営者を含めたですね・・・私はそれは、おかしい審議の仕方と思うわけでございますけれども、「まさかそんなことはない」と明言いただければ。

●塩崎大臣

これは今、既にですね、労働基準法の改正案は、もう既に、おととしに出した法律でございますので、可及的速やかにご審議いただいて、ご採決をいただけるとありがたいと思っているわけでございます。

「働き方改革」で新たに出てくるものは、これも早期に法律化をするという風に総理から指示を受けているわけで、今、これから労政審で、今、既に始まっていますけれども本格的な議論の末に、きちっとした法案を提案できるように、持っていきたいと思っておりますので、既に出ているものは、速やかに成立を期していきたいというのが基本であります。

●長妻議員

今の趣旨は、既に出ているものと一緒にするということはないと、こういう趣旨でありました・・?

●塩崎大臣

もう既に出ているわけでありますから、これを通してくださいというのは政府として当然のことでありますので、そのこと以外は何も考えていないということであります。

●長妻議員

別々に審議するということですね?

●塩崎大臣

あの、既に出ている法案は、審議をしていただきたいということを、考えているだけでございます。

●長妻議員

これですね、「セット販売」という言葉も国会で最近はよく出ますけれども、全部もうこれ、かなり前に出ている法案も、それでこっちはあわせてですね、まあ何かいろんな取引があるのかどうか、わかりませんけれど、いろいろ着地する中で、「これを入れるからこっちだ」と、「こっちを入れるからこっちだ」みたいな話があるとすると、これ非常に、審議権の制約を政府が国会に要請をすると、そういう行為をしていくということになりかねないので、これは十分ですね、委員長も含めて分離して審議をしていくと。

・・・もう、絶対答えないですね、それ。何度聞いても。

委員長、次、答えなかったら、ちょっと、きちっと指示していただけますか? じゃあちょっと、最後、答えて。

●塩崎大臣

これあの、既にお出しをして、政府提案として国会にお出ししているわけでありますから、これを可及的速やかにご審議いただいて、成立を期してまいりたいというのは、私たちの変らぬ姿勢でございます。

●長妻

(ちょっと委員長、答えてない。一回、止めてください。速記、止めてください。別々かどうか。大臣の思いでいいですから。)

●塩崎大臣

あの、今後出てくるものについてどうするかは、まだ、何も決まっていないわけですので、今、お出しをしているものについて、可及的速やかにご審議をいただきたいということでございます。

●長妻議員

(どっちなの。ちょっと一回、止めて。どっちなの? どっちもありうる? 一回、止めてくださいよ。)

●丹羽委員長

速記をとめてください。

●塩崎大臣

あの、既にご提出申し上げている法案については、可及的速やかにご審議いただきたいということ。今後お出しをするであろう法案についても、同じようにご審議を速やかにしていただいて、成立をめざして、私どもも努力をしたいし、皆様にご審議いただきたいと、こういうことでございます。

●長妻

(一緒か別か。セットかどうか。答えてない。「ありうる」でいいんですよ、ありうるんだったら。ありうるかもしれないし、ないかもしれない。だから、「わからない」でいい。あるかもしれないし、ないかもしれない。答えてない。)

●丹羽委員長

速記をとめてください。

●塩崎大臣

あの、申し上げているつもりでありますけれども、今後出てくるものの扱いについては、今後決めることでありますので、今、どうするこうするということを決めることは、まだ、影も形もない法律でございますので、申し上げることはできないと、こういうことでございます。

●長妻議員

まあ、「セットもありうる」という風に、私はとりましたけれども。違うんだったら手を挙げて反論してください。違うんであればね。・・・反論しないわけでございますので。

これ私はですね、これは本当に、国会の審議権を不当に制約する話だと思いますよ。我々の政権の時もですね、それはいくつかの法律をまとめるということもありましたけれども、いくらなんでもこれ、やりすぎじゃないですか、もしまとめるとしたら。

相当前に出てきて、これだけ反対論がある中で、そして「働き方改革」という我々の一つの政策であるものを、官邸の中で推し進めて、がっちゃんこしていく。それはいくらなんでもおかしいと、ここで申し上げて、そういうことのないようにぜひ、していただきたいと思います。

【6月5日21:50追記】

 本日の労働条件分科会にて、前回の報告案から若干の字句の修正・追加が施された報告案が提案され、異議なく了承された。

同日に労働政策審議会から厚生労働大臣に対し、時間外労働の上限規制等について下記の通り建議が行われた。

厚生労働省労働基準局労働条件政策課:労働政策審議会建議「時間外労働の上限規制等について」を公表します(2017年6月5日)

 今後は法律案要綱が作成されて再び労働政策審議会に諮問され、労働政策審議会の答申を受けて秋の臨時国会に法案が提出される見通しとなっている。

労政審 残業の上限超えに罰則 国、今秋にも改正案提出(毎日新聞2017年6月5日)