求人トラブル対策:改正職業安定法成立後の省令等は国会審議を踏まえて制定を

(写真:アフロ)

【要旨】

3月31日、求人トラブル対策を含む職業安定法改正案が成立した。求職者保護の趣旨を踏まえた募集当初の適切な労働条件明示を含め、今後は国会審議を適切に踏まえた省令等の制定が求められる。

3月31日に職業安定法改正案は可決・成立し、今後は省令等の原案の作成と検討へ

求人トラブル対策を含む職業安定法改正案が、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」に含まれる形で国会に提出され、3月31日の衆議院本会議で可決・成立した。今後は、この改正法の施行に必要な省令・指針等の原案が政府によって作成され、労働政策審議会で検討されていくことになる。

筆者はこの求人トラブル対策に関連し、3月14日の衆議院厚生労働委員会において参考人としての意見陳述を行い、その後も国会審議の様子を追い、下記の計4本の記事にまとめてきた。

●記事1:審議中の職業安定法改正案で固定残業代問題や求人詐欺問題は果たして改善に向かうのか?(参考人意見陳述)(上西充子)- Y!ニュース(2017年3月14日)

●記事2:求人トラブル防止のための労働条件明示。しかし「募集時」とは労働契約締結の直前までの時期を指す??(上西充子)- Y!ニュース(2017年3月17日)

●記事3:「募集時とは労働契約を締結するまで」という政府参考人による法解釈は、やはりおかしい(上西充子)- Y!ニュース(2017年3月19日)

●記事4:職業安定法改正案における求人トラブル対策:省令等で定めるべき事項についての論点整理(上西充子)- Y!ニュース(2017年3月26日)

その後、3月30日の参議院厚生労働委員会では、民進党・石橋通宏(みちひろ)議員が求人トラブル問題を質疑の中で集中的にとりあげ、上記の記事4に挙げた論点にも触れてくださった。石橋議員の質疑に対しては、塩崎厚生労働大臣から踏み込んだ答弁もみられた。さらに、同日の参議院厚生労働委員会では、法改正案の可決後に下記の通り附帯決議(※1)が提案・可決され、その中にも求人トラブル関連の内容が盛り込まれた。

雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

(2017年3月30日 参議院厚生労働委員会) 

政府は、本法の施行に当たり、その目的の確実な実現を確保するため、次の事項について万全を期すべきである。

一、 雇用保険法の一部改正について(略)

二、 職業安定法の一部改正について

1 労働条件等の変更内容等の明示義務については、変更等による不利益から求職者を保護することがその目的であることに鑑み、変更等が発生した段階で遅滞なく明示がなされるべきことを明確に規定するとともに、求職者がその内容を十分に理解できる適切な明示方法を指針で定めること。また、募集段階における労働条件等の明示義務については、募集当初の段階で求職者の判断に必要な情報が的確に提供されるべきであることから、その徹底を図る手段を講ずること。あわせて、新規学卒者の募集・採用に当たっては、特に配慮が必要であることから、原則、採用内定時までに書面で労働条件を明示するよう指針に定めること。

2 求人申込みの不受理の対象に、職業安定法に基づく勧告又は改善命令を受け、これに従わずに公表された者からの求人を追加することについて検討すること。また、有料の職業紹介事業を行う者が職業安定法又は労働者派遣法の規定に基づく命令又は処分に違反した際に厚生労働大臣が命ずることのできる業務停止命令について、規定の趣旨を踏まえ停止期間が適切に定められるよう所要の措置を講ずること。

三、 育児・介護休業法の一部改正について(略)

右決議する。

そこで本稿では、今後の省令等の作成に生かしていただくべく、この3月30日の参議院厚生労働委員会における審議で確認された内容と可決された附帯決議の内容を、これまで提示してきた論点に照らしあわせて整理しておきたい。

(1)当初の募集の段階で適切に労働条件が明示されることが重要性であると、改めて確認された。

まず30日の審議では、職業安定法5条の3に定める労働条件の明示については、同法の趣旨に照らして募集の当初の段階で適切に明示されることが重要であると、改めて確認されたことを、強調しておきたい。

なぜなら3月15日の衆議院厚生労働委員会において民進党・井坂信彦議員の質疑に対し、鈴木政府参考人(職業安定局派遣・有期労働対策部長)から、募集時とは「労働契約を締結するまで」を指すという看過しがたい法解釈が示されていたからだ(前述の記事2を参照)。労働契約を締結するまでに労働条件を明示すればよいのだとしたら、求職者はいったい何を頼りに求職活動をすればよいというのか。

そのため石橋議員は職業安定法の改正に関する質疑の冒頭において、募集の当初の段階における労働条件の明示が重要であることの確認を求めている(以下、発言については参議院インターネット審議中継の録画映像より書き起こし。ただし、ある程度の要約と補足を施した。正確な文言については、後日公表される議事録をご確認いただきたい)。

●石橋議員

募集の当初の段階で十分かつ的確な労働条件の明示がやはり極めてて大事だと思うが、この点について、まず大臣、見解を。

これに対し塩崎大臣からも、同意する旨の答弁が次のように行われている。

●塩崎大臣

現行の職業安定法では、働く方が労働条件を認識した上で求人への応募、それから労働契約の締結、これに向けた事業主との交渉を行うことができるように労働条件の明示を義務付けているわけであり、こうした規定の趣旨に鑑みると、募集の当初、最初の段階で、適切に労働条件が明示されることが重要だということは、その通り。

この答弁に対し石橋議員は、求人広告スペースの制約などが労働条件明示を行わない理由になってはならないという趣旨から、改めて次のように念押しをしている。

●石橋議員

今、当初の段階で、と答弁いただいた。つまりは、そもそも求人募集がある、広告が出される、その段階で本来、十分な情報が提示される、明示されなければならないという趣旨。もちろん広告などの場合にはスペースの関係等で十分に明示ができないこともあろうかと思うが、その場合でも、仕事を探されている方が興味をもって「これ、どういう具体的な条件なんでしょうか」とファースト・コンタクトをとった段階で、そこに載っていなかった情報についてもきちんと明示をされるべきであるということだと思うが、そういう理解でよいか。

たとえ広告スペースの制約があって労働条件明示が適切に行えない場合があっても、ファースト・コンタクトの段階(求職者との最初の接触の段階)で、掲載しきれなかった労働条件についてもきちんと明示すべきだ、という点の確認だ。

これに対し塩崎大臣からは、次の通りの答弁が行われている。

●塩崎大臣

募集あるいは職業紹介を行う際に労働条件を明示することを義務付けていることは先ほども申し上げた通り。その趣旨に照らしてみると、可能な限り速やかに明示は行われるべきと考える。具体的には、原則として求職者と最初に接触する時点までに明示が行われるべきであって、やむを得ず労働条件の一部を別途明示することとするときは、その旨をそのときに明示をしておくべきと考えている。

この答弁に対しても、曖昧さを残すことがないように、石橋議員はさらに次のように念押しをしている。

●石橋議員

これも重要なポイント。そのときに明示ができなかった部分については、「この点については明示していません」ということを明示するという話だった。もちろんそれが重要な情報であるべきではないと思うが、少なくともその段階で明示ができないもの、それがちゃんと明示をしていなければならないという答弁は、これは重要な答弁だった。

なぜ念押しをしているかというと、別途の明示事項があると明示しておくだけでは、求職者の保護にはつながらないからだ。

たとえば「月給25万円/完全週休2日/委細面談」などの記載だけだと、月給25万円に固定残業代を含んでいるのか否か、判別ができない。固定残業代の存在が「委細面談」の内容かもしれないからだ。労働条件の明示がこのような曖昧さを残したままであると、求職活動は大いに阻害される。

そのため、たとえば「月給25万円(含固定・詳細は面接時に別途明示)」など、十分に明示していない項目はどの項目であるかをはっきりさせておかなければならないのだ。石橋議員が【「この点については明示していません」ということを明示するという話だった】と念押ししているのは、そのためである(※2)。

この点は求人トラブルを解消していく上では極めて重要なことであるので、曖昧さを残すことがないように、省令等では例示等も含め、的確に定めていただきたい。

そのすぐあとで石橋議員が言及しているように、とりわけ固定残業代試用期間については、それが当初隠されていることが求人トラブルにつながっており、だからこそ建議で明示することとされたわけであるから、いくら広告スペースが少なくても、それを全く明示せずにおくことは、求職者保護の観点から認められるべきではない。

同じく建議において明記すべき旨を記された派遣としての雇用も同様であり、また、これまでの審議で言及された裁量労働制の適用対象であるか否かについても、必ず明示すべき事項に含むよう、省令等で適切に規定していただきたい。

塩崎大臣は、募集時における労働条件の適切な明示については、職業安定法に基づく指針において明確に定めていくと答弁していた。そしてそれを踏まえた明示が行われるように広く周知し、また指導していく旨の答弁もあわせて行われた。

以上の(1)に相当する事項については、附帯決議において、次のように記されている。

募集段階における労働条件等の明示義務については、募集当初の段階で求職者の判断に必要な情報が的確に提供されるべきであることから、その徹底を図る手段を講ずること。

(2)当初に明示された労働条件の変更は、安易には行われてはならないことが確認された。変更が必要になる場合には、可能な限り速やかにその旨を明示することが確認され、変更の理由等について質問された場合は、事業主は当然適切に説明を行うべきであることが明言された。さらに、当初の労働条件の変更が必要になる場合には、求人票の出し直しや求人広告の訂正も検討されることが確認された。

次に30日の審議では、当初に明示された労働条件の変更は、安易には行われてはならないことが確認された。

今回の法改正では、当初に明示された労働条件から変更する場合には、その変更点について明示する義務が新たに設けられることとなったわけだが、どういう変更であっても明示さえすればよいと受け取られれば、当初の募集時に見栄えの良い労働条件を提示する(そして、あとで変更する)という求人トラブルの横行を是正することはできず、かえってそのような企みを促進させる恐れも含む内容となっている。そのため、そうならないための歯止めを省令等によってどうかけることができるかが重要となる。

その点について石橋議員は、「合理的正当性がある変更でなければならない」と明確に規定することを求めた。

●石橋議員

やはり安易な変更を許してはいけない。そもそもの明示がいいかげんにやられると、結局意味がない。すると、「いつ、どんな理由でも、勝手に、一方的に変更していいというものではない」ということは、やはり意志を明確にしておいていただかないと。変更の理由は、やはり安易になってはいけない。「変更は、よほど合理的正当性がある変更でなければならない」と、これもぜひ明確に規定していただきたい。そういうことでよろしいですね?

これに対し塩崎大臣からは「合理的正当性がある変更でなければならない」という答弁は得られなかったものの、安易に行われてはならない旨の答弁は下記の通り得ることができた。また、求人票の出し直しや求人広告の修正を行うべきという考えも示された。指針を定めて周知し、指導する必要性にも言及があった。

●塩崎大臣

募集の最初の段階できちっとした労働条件を明示することが大事だというのが基本。そのまま労働契約における労働条件になることが当然期待されて、変わらない方がいいわけだが、仮にその変更がある場合には、安易にはまず行われてはならないというのが第1点。

さらに、求人票や求人広告で明示した労働条件を変更し、求職者にその変更等の明示をした場合には、求人票や求人広告の内容も改めて検証しなおして、求人の出し直しや求人広告の修正を行うべきということも考えなければならない。

なお、募集などの当初の段階での明示が職業安定法に抵触するような場合は、労働条件変更等の明示をしたとしても、必要な指導等の実施をしなければならないと思っている。

今、申し上げた考え方については指針において明確に広く周知し、指導をしっかりとやっていかなければならない

この塩崎大臣の答弁のうち、「募集などの当初の段階での明示が職業安定法に抵触するような場合」とは何を指すかは、この答弁だけではわからないが、まず「虚偽の求人」は明らかにそれに該当するだろう。

さらに、職業安定法5条の3は当初に明示すべき事項を定めているのだから、明示すべきでありながら明示していない事項がある場合も、法に抵触する場合に該当するだろう。そこには、新たに指針で定められる固定残業代の明示や試用期間の明示、派遣としての雇用に関する明示も含まれるだろう。固定残業代を募集などの当初の段階で適切に明示していない場合は、職業安定法に抵触するとみなすことを省令等で明記し、適切に明示しない場合には、積極的に必要な指導を行っていただきたい

さらに塩崎大臣の答弁の中では、「働く方から労働条件の変更の理由等について質問された場合は、事業主は当然適切に説明を行うべき」であり、指針において明確にこれを定めていく旨も明言された。この説明は、文書の交付を伴うものであるべきだろう。その点も省令等において明確に定めていただきたい

次に変更明示義務に関連してもう一つ重要な論点は、いつ明示が求められるか、である。これまで塩崎大臣は「可能な限り速やかに」「考える時間が確保されるように」という答弁を繰り返してきた。30日の答弁でも、その表現を繰り返し、その旨を指針で明確に定め、それを踏まえた明示が行われるように周知・指導をやっていくということであった。

それに対し、石橋議員からは「考える時間」だけでは不十分だという指摘があった。

●石橋議員

今、考える時間の確保と言われましたが、考える時間にも、それぞれ状況があるわけです。「考える時間はあっても、もうそれを受け入れざるを得ない状況」というのも、やはりある。これは非常に死活的な重要なポイント。

つまり、「考える時間」だけでなく、「求職活動をやり直せる時間」が必要、ということであろう。

この点について、塩崎大臣からは(後述する新卒のケースを除き)明確な答弁はなかった。だが、「考えても受け入れざるを得ない状況」になってからでも良いというのでは、求職者保護の趣旨に反する。

「しっかり考える時間が確保されるような表現ぶりにしたい」という答弁や、「可能な限り速やかに求職者が理解できる方法で行われなければならない」という答弁が得られているが、石橋議員の指摘も踏まえ、求職者保護の趣旨にかなった表現ぶりを工夫していただきたい。

以上の(2)に相当する事項については、附帯決議において、次のように記されている。

労働条件等の変更内容等の明示義務については、変更等による不利益から求職者を保護することがその目的であることに鑑み、変更等が発生した段階で遅滞なく明示がなされるべきことを明確に規定するとともに、求職者がその内容を十分に理解できる適切な明示方法を指針で定めること。

(3)新卒の場合、明示した労働条件を変更することは不適切だという旨を指針で明確にし、周知・指導を行うことが明言された。また、遅くとも就職内定までに労働条件等が文書で明示されなければならないことが確認された。

3月23日の参議院厚生労働委員会において塩崎大臣は、公明党・山本香苗議員の質疑に対する答弁の中で、新卒の場合には、労働契約締結時になってからその労働条件が募集時の労働条件から変更されていることに気づいたとしてもやり直しがきかず、「職業生活に与える影響は極めて大きい」という認識を示していた(記事4参照)。

また3月23日の委員会で塩崎大臣からは、次の通りの踏み込んだ対策をとることも答弁されていた。

●塩崎大臣(3月23日)

新卒採用においては、労働契約締結時の労働条件が募集時の労働条件から仮に変更された場合には、そもそも募集時において労働条件の明示義務に違反をしていたというおそれがあるとして、事業主に対して改善命令や勧告、そしてこれに従わない場合にはその旨を公表するとともに、悪質な場合には虚偽の条件を提示したものとして刑事告発を行うというような形で対策を強化することによって、こういうことがおきないようにしていきたい。

30日の答弁ではさらに踏み込んで、新卒の場合、明示した労働条件を変更することは「不適切」だという旨を指針で明確にし、周知・指導を行うことが以下の通り明言された。新規学卒者は自分で労働条件の交渉をするわけではなく、また将来をかけて就職先を判断するのであるから、新卒の場合は労働条件の明示は本当に重要であって、その明示された労働条件が変更されるようなことがあってはならないという石橋議員の指摘に対する答弁である。

●塩崎大臣(3月30日)

新卒者については、労働契約締結時の労働条件が募集時の労働条件から変更されたことに気づいたとしても、もう就職活動は終わっていますから、改めて就職活動を行うことは難しいということになれば、まさに最初の職業への就き方で躓いてしまうので、これは避けなければいけないと我々も強く思っている。

そのため、新卒者向けに明示した労働条件を変更することは不適切だと考えている。その旨を指針で明確にし、周知・指導をしていきたい

新卒の場合は、就職活動のやり直しが難しいという事情、そして「最初の職業への就き方で躓いてしまう」のは避けるべきという配慮から、当初に明示した労働条件を変更することは「不適切」とされたのである。固定残業代など、当初に明示すべき労働条件を当初から適切に明示しておかないことも、当然、同じく「不適切」とみなすべきであろう

さらに30日の審議では石橋議員より、新卒者の場合は「遅くとも、内定が出るまでに文書をもって労働条件が確定的に明示されるべき」という見解が示されており、これに対して塩崎大臣は次のように答弁している。

●塩崎大臣

今、石橋先生がご指摘の通り、まさに遅くとも就職内定までに労働条件等が明示をされなければならないと思っております。これが原則だということです。

ここでいう就職内定までの労働条件の文書による明示とは、「確定的な労働条件の明示」であることを確認しておく必要があろう。当初の募集の段階から適切に労働条件が明示されるべきであることは、上記(1)に記したように30日の審議で十分に確認されている。したがって内定時の労働条件明示とは、募集時に明示した労働条件と同じ労働条件を、改めて個々の内定者に、文書で明示することであると、明確に省令等で定められるべきだ

3月15日の衆議院厚生労働委員会で井坂議員が指摘しているように(記事2を参照)、実態としては内定段階で個々の内定者に文書で労働条件を明示することはほとんど行われていないと思われる(この点については、実態調査が行われるべきだ)。内定式で渡される文書は多くの場合、翌年4月の入社を認める旨が記されているだけだ。

しかし同じく3月15日の井坂議員との質疑の中で確認されているように、内定時には基本的に労働契約は成立している。そうであれば、その時点で本来、労働条件は文書で交付されなければならない。

繰り返すが、これは今回の職業安定法改正案に含まれていた労働条件の変更明示義務のことではない。また、募集時とは労働契約締結時までを指すという、奇妙な法解釈でもない。募集の当初に募集要項や求人票で明示されていた労働条件を、個々の内定者に改めて文書で明示することを指しており、これまで本来は行われるべきでありながら行われてこなかった文書交付を行うべき、という見解を示したものとして評価したい

それが実現されていく過程においては、採用企業側の抵抗も予想される。もちろん仕事内容や勤務地などまでを内定段階で明示することは総合職の場合は困難だろう。それらは、いつまでに明示すると時期を明示したり、一定の範囲を示したりすることも許容されるべきだろう。いずれにしても、内定時の書面交付という慣行が残念ながらほとんどない中からのスタートであるため、どのような文書をいつ交付すべきか、省令等で定めた上で、具体例も示しながら今後積極的に周知啓発していくことが求められよう

また、その内定時の書面交付の段階になって初めて固定残業代を含みこんだ初任給であったことを明かすような企業については、上記(2)に記した「募集などの当初の段階での明示が職業安定法に抵触するような場合」に相当するものとして、厳しく指導を行っていただきたい

以上の(3)に相当する事項については、附帯決議において、次のように記されている。

新規学卒者の募集・採用に当たっては、特に配慮が必要であることから、原則、採用内定時までに書面で労働条件を明示するよう指針に定めること。

(4)労働条件の明示がより適切に行われるよう、ハローワークの求人票を参考とするよう、勧奨する方針が示された。総合的な職場情報提供サイトの活用も検討事項とされた。

そのほかに30日の質疑では、募集の段階で誤解のない形で労働条件を明示するためのモデル求人票の整備が石橋議員より求められた。さらに石橋議員からは、広告求人サイトにおいても、モデル求人票に準拠した形で情報提供されるよう徹底を求める質疑があった。

それに対し鈴木政府参考人からは、民間の職業紹介事業者については、ハローワークの求人票を参考とするよう勧奨したい旨が答弁された。あわせて、総合的な職場情報提供サイトの活用も検討したい旨が答弁された。

求人広告の募集情報等提供事業については、委託事業を通した業界横断的なガイドラインの策定と普及により、求人広告がより適切なものになるよう促す旨が答弁された。

今後の課題:国会審議を踏まえた省令等の整備と適切な指導・監督を

以上、30日の参議院厚生労働委員会における石橋議員の質疑と塩崎大臣の答弁の内容を検討してきた。3月10日の衆議院厚生労働委員会における審議の開始以降、年度末が迫る中で日程的にも余裕がなく、一括法案であることも影響して限られた審議時間の中ではあったが、明確にすべき論点を整理し、しっかりとした答弁を引き出すことに力を尽くしていただいた議員の方々に感謝を申し上げたい。

そして今後、政府が省令案等を作成する際には、この国会審議を適切に踏まえた内容としていただきたい。さらに、省令案等を検討する労働政策審議会においても、国会審議の成果がきちんと省令案等に反映されているか、慎重にご検討いただきたい。

そのうえで、適切な省令等が制定されたのちには、その内容について、求人者や求職者、さらに大学関係者などの支援者にもわかりやすい形での周知を図っていただき、適切な形で労働条件明示を行わない求人者などに対しては、厳しい指導を行うことによって、求人トラブルの解消に努めていただきたい。

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(※1)附帯決議は、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党、日本維新の会、希望の会(自由・社民)及び無所属クラブの各派共同提案による。

(※2)現在の指針(平成11年労働省告示第141号)は、「労働者の募集を行う者は、労働条件等の明示を行うに当たって労働条件等の事項の一部を別途明示することとするときは、その旨を併せて明示すること」と規定しているのみで、「委細面談」でも済ませられかねない曖昧さを残している。「この点については明示していません」ということを明示させるよう、より的確な規定が必要であろう。石橋議員は、「その時点でどうしてもやむを得ず明示できない部分は『明示ができない』ということを明示する」とも言い換えて、そのような明示が必要であることを重ねて指摘している。その指摘は重く受け止めていただきたい。

■4月7日付記■

30日の石橋みちひろ議員の質疑は、こちらのYouTubeが見やすい。求人トラブル関連の質疑は、23分過ぎから。