「新卒の総合職採用、女性は2割」という報道は誤解を招く

総合職で採用される新卒のうち、女性は2割のみ?

 昨日、共同通信配信の次のような記事が配信された。

新卒の総合職採用、女性は2割 14年度、依然低水準  

2014年度に新卒で企業に採用された総合職の男女別割合は、男性が77・8%、女性は22・2%だったことが23日、厚生労働省の調査で分かった。女性は前回調査(11年度)の11・6%に比べ拡大したものの、依然として男女間の差が大きいことが分かった。

(中略)

 調査は昨年4月~今年3月、総合職と一般職のコース別制度がある企業のうち118社を対象に行った。

 これを読んで、どういう印象を持つだろうか。

「総合職で採用される新卒のうち、女性は今でも2割しかいないのか」

と思わないだろうか。

 こういう報じ方は、誤解を招くので、やめてもらいたいのだ。

調査はあくまで、コース別雇用管理制度がある企業が対象

 記事をよく読めば、末尾に、

調査は昨年4月~今年3月、総合職と一般職のコース別制度がある企業のうち118社を対象に行った。

とある。

 つまり、この調査は、総合職や一般職といった、コース別に採用を行っている企業を対象とした調査だということだ。

 だから、「2割」という割合も、「コース別に採用を行っている企業における総合職」に新卒で採用された女性の割合を指しているにすぎない

 注意深く読めば、そのことは了解できるのかもしれない。しかし、読み落としてしまう可能性も高い。

 記事タイトルや記事の冒頭部分は、

「総合職で採用される新卒女性は、今でも2割しかいない」

と誤解させるに十分である。

 果たしてこの記事を書いた記者は、この調査結果がコース別採用を行っている企業に限定されていることを理解していたのだろうか。

 理解していたなら、誤解を防ぐために、タイトルは例えば、

●コース別採用における総合職採用、新卒の女性は2割

といった記載にし、本文の冒頭も

 

●2014年度にコース別採用を行っている企業で新卒採用された総合職の男女別割合は、男性が77・8%、女性は22・2%だった

といった記載にするのが適切だろう。

 新聞報道も同様だ。

● 総合職採用の女性は2割 倍率も女性より上 26年度厚労省調査(産経ニュース 6月23日)

● 総合職新卒女性は22% 男女間の差は依然大きく (東京新聞 6月24日)

● 総合職の採用倍率、男女格差やや縮小 景気回復で採用増(朝日新聞DIGITAL 6月24日)

といったタイトルからは、これがコース別採用を行っている企業に限定した調査結果であることを読み取ることは困難だ。

コース別採用の実施企業は1割程度

 では、新卒採用においてコース別採用を行っている企業はどのくらいの割合なのか。

 厚生労働省「平成22年度雇用均等基本調査」によれば、労働者の職種、資格や転勤の有無等によっていくつかのコースを設定して、コースごとに異なる雇用管理を行う、いわゆるコース別雇用管理制度が「あり」とする企業の割合は11.6%である。「調査を開始した平成元年度(2.9%)以降、上昇し続けている」というが、それでも1割程度だ。それ以外の企業では、コース別採用を行っていない。

 大企業においてはコース別雇用管理制度がある割合が比較的高いが、それでも半数程度である。

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コース別採用を行っていない企業に採用された正社員は、単に「正社員」と呼ばれ、「総合職」と呼ばれることはないのだろう。しかし、職種が限定されていない、転勤の有無や転勤の範囲が制限されていない、という意味では、コース別採用を行っている企業の「総合職」と同じ、と見てよいだろう。

それらを、仕事の内容や勤務先が限定されていないという意味で「総合職」ととらえれば、「総合職」で採用されている女性は、2割を大きく上回るはずだ。そのような実態があるのに、「新卒の総合職採用、女性は2割」という形で調査結果が報道されることは、

「男性と同じように働く女性は、まだまだ企業から求められていないんだな」

「女性はやっぱり、一般職とか、地域限定職とかで働くのが普通なのかな」

という、実態と異なる認識を、学生たちに与えてしまう恐れが強い。

コース別採用の実施割合は業界によって大きな差

 なお、上記の厚生労働省「平成22年度雇用均等基本調査」には、産業別に見たコース別雇用管理制度の実施割合も示されている。

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 図の通り、コース別雇用管理制度のある企業の割合は、「金融業、保険業」で高く、「製造業」などではそれほど高くない。

 銀行などでは、

●グローバルな活躍が期待される総合職

●勤務地は一定のエリアに限られながら、法人営業などに携わる地域限定職

●転勤がなく個人向けの業務などを担当する一般職

といったように、3種類のコースが設けられていることが多い(それぞれのコース名称は、各社、さまざま)。

 しかし、そのようにコースが分けられていることは、「金融業、保険業」の大手企業では一般的でも、例えばメーカーの大手企業では一般的ではない、ということは知っておく意味があるだろう。

 「やっぱり女性は総合職では歓迎されないんだ」と、「金融業、保険業」の総合職以外のコースに女子学生の応募が集中する、といった事態にならないと良いのだが。

新聞記事には調査名の明記を

 新聞報道では調査名が記されないのが一般的であることも、今回の報道のように誤解を招く可能性を高めている。

 「厚生労働省の調査」とのみ記されて調査名が明記されていない今回の報道を読んで、実際の調査結果にたどりつける人はどれくらいいるだろうか。

 記事のもとになったのは、下記の報道発表だ。

厚生労働省 平成27年6月23日 Press Release

平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況<速報版>を公表します。

~総合職採用者に占める女性の割合は約2割、採用倍率は女性43倍、男性30倍~

 この報道発表では、調査名ははっきりとは記されていない。しかし、

●厚生労働省が行った調査

ではなく、

●厚生労働省が行った、コース別雇用管理制度に関する調査

といった表記を報道で行えば、誤解の余地も少なくなり、実際の調査結果にたどり着ける割合も高くなるだろう。

 「内閣府の調査によると」「東京大学が行った調査によると」といった手掛かりしか記事にはなくて、実際の調査結果にたどり着くのに苦労することは多い。

 報道各社には、せめてネット記事では、調査名を記し、また、できれば報道発表資料へのリンクも貼っていただけないだろうか。

 紙面とは異なるネット記事としての差別化を図る上でも、ぜひとも前向きに検討していただきたい。