復職率(復帰率)が高くても、女性が働き続けられているとは限らないことに注意!

「復職率(復帰率)90%」とは、出産後も働き続ける女性が90%であるということ?

 結婚・出産後も働き続けることを希望している就職活動中の女子学生の皆さん。皆さんが会社説明会で、次のような説明を聞いたら、どういう印象を持つでしょうか?

弊社は女性の活躍推進に力を入れています。女性社員の復職率は90%です。

こんな風に考えませんか?

女性社員は、妊娠・出産しても90%が職場復帰してくるのか。働き続けやすい職場なんだな。

 でも、そうとは限りません。実は、出産前に半数以上の女性が退職するとしても、復職率90%は達成可能なのです。

「復職率(復帰率)」という「割合」で語られる場合、どういう計算で算出された割合であるのかに注意が必要です。

内閣府「女性の活躍「見える化」サイト」が示しているのは「育児休業復職率」

 内閣府男女共同参画局は「女性の活躍「見える化」サイト」で、情報の公開に応じた上場企業の女性の登用や、仕事と生活の両立推進等に関する情報を、個別企業ごとに公表していますが、そこには「育児休業復職率」という欄があります。

 「育児休業復職率」には95%前後の数値や100%といった数値が並んでいます。しかし、「育児休業復職率」が100%であったとしても、それは、女性社員が妊娠・出産を経ても全員働き続けている、ということではありません。

 「育児休業復職率」は、「育児休業取得者のうち復職者の割合」であると同サイトに説明があります。つまり、「育児休業復職率」が100%であるということは、育児休業取得者が全員、育児休業取得後に同じ企業の仕事に復帰した、ということを表わしているに過ぎないのです。女性社員が1人も退職せずに、妊娠・出産を経て仕事に復帰したわけではないのです。

 育児休業は在職している社員が取得するものです。出産前に退職した社員は、育児休業取得者の数には含まれていません。「この会社では、出産後に働き続けることは難しいだろう」と考える女性は、出産前に退職の道を選ぶでしょう。

継続就業率30%でも復職率90%は達成可能!

 具体的に考えてみましょう。

 A社で30人の女性が妊娠しました。うち、20人の女性は退職を選び、残りの10人は働き続けることを決め、産前・産後休暇を経て育児休業に入りました。

 この10人のうち、9人は育児休業を経て無事仕事に復帰しましたが、1人は復帰が難しくなり、やむなく退職に至りました。

画像

 この場合、「育児休業復職率」は10人中9人なので90%になります。しかし、継続就業率を見ると、妊娠した女性30人のうち、出産を経て仕事に復帰したのは9人でしかないので、30%となります。

 継続就業率が30%であっても、育児休業復職率は90%と高い割合になるのです

 そのため、インパクトのある数字を意欲的な女子学生に示したいという企業は、この90%の方を選ぶかもしれません。それによって学生は、「90%の女性が働き続けているんだ」と誤解してしまうかもしれません。注意が必要です。

育児休業取得率も「働き続けている割合」ではないことに注意

 皆さんは現在の女性の育児休業取得率が何%ぐらいであるか知っていますか?

 最新のデータでは、女性の育児休業取得率は83.0%です。この数値を見て、

今の女性は、83%が出産しても働き続けているんだ

と思うかもしれませんが、それも誤解です。

 先ほども書いたように、育児休業は在職している社員が取得するものであるため、育児休業取得率を算出する際、計算の分母は「在職中に出産した女性」に限られており、出産前に退職した女性は計算から除外されているのです(※)。

 女性の育児休業取得率が83%であるということは、出産後も退職せずに働き続けようと考えていた女性社員の中で、育児休業を取得した女性の割合が83%であるということを意味しているにすぎません。

画像

出所:厚生労働省「平成25年度雇用均等基本調査」の概況

女性の継続就業率は現在でも38%程度

 では、初めての子どもを出産後に継続就業している女性の割合はどのくらいかと言うと、下記のグラフの通り、38%ぐらいです(ただし、この数値には、出産後に別の企業で働いている割合を含みます。また、もともとパートなどの非正規で働いていた人や、出産後に非正規で働いた人も含んでいます)。

画像

出所:厚生労働省HP「仕事と家庭の両立支援について」

 一人目の子どもを産んだあとも働き続ける女性の割合は、実はあまり増えておらず、まだ半数にも届いていないのです。

 なお、女性の育児休業復帰率は2010年度で92.1%です。

画像

出所:厚生労働省「平成22 年度雇用均等基本調査」結果概要

 上に示したA社の例では、女性社員の継続就業率は33.3%(30人中10人)、育児休業取得率は100%(10人中10人)、育児休業復職率は90%(10人中9人)でした。この例は、実際の数値(女性の第1子出産後の継続就業率38%、育児休業取得率83%、育児休業復職率92%)に近い形を表わしています。

 現在の女性が働き続けている割合はだいたいこんなものだ、ということが頭に入っていれば、

弊社は女性の活躍推進に力を入れています。女性社員の復職率は90%です。

という説明を誤解することもないでしょう。また、なぜ働き続けている女性の割合を示さず、よくわからない「復職率」という数値を使うのか、という疑問を抱くこともできるでしょう。

「復職率(復帰率)」というよくわからない数値を示されたなら、

 

昨年度の御社の育児休業取得者は何名ですか?

と「実数」を聞いてみましょう。

 それで相手が言いよどむなら、要注意です。

女性が働き続けられる会社かどうかは何を見ればよい?

 東洋経済新報社から毎年出されている「就職四季報女子版」には、女性の勤続年数、平均年齢、3年後離職率、既婚率、役職者数、有子者数、産休取得者数、育休取得者数などのデータが示されています。

 それらがNA(無回答)の場合は、説明会の言葉だけで「働き続けやすい会社」と判断せずに、OB・OG訪問など様々な手段で、実態を調べてみると良いでしょう。

 また、数値が示されている場合は、同業他社や他業種のデータと見比べてみる中で判断することをお勧めします。

 さらに、内閣府「女性の活躍「見える化」サイト」からも、情報開示に同意した上場企業の情報を見ることができます。

 どちらの情報源も限られた数の企業の情報が示されているにすぎませんが、それぞれの業界の大まかな傾向は読み取れると思いますので、個別企業の実態を知る上でも、参考になると思います。

******

(※)厚生労働省「平成25年度雇用均等基本調査」では、女性の育児休業取得率は、「平成23 年10 月1日から平成24 年9月30 日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、平成25 年10 月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合」として算出。