新入生向けにアルバイト就労にあたっての注意喚起を!

労働条件通知書(部分) (「ポケット労働法2014」より)

アルバイト就労にあたっての注意喚起も必要では?

大学では4月、新入生に向けて飲酒やカルト宗教をめぐる注意喚起が行われます。一方で、アルバイト就労についての注意喚起が行われることはまれであるように思われます。

しかし、私たちブラック企業対策プロジェクトの調査結果が示すように、お店の都合による一方的なシフト強要や長時間のアルバイトによって学業に支障をきたしている学生、違法・不当な扱いにさらされている学生は少なくありません。

昨夜、「学部の新入生ガイダンスでアルバイトに関する注意喚起を5分ですることにしました」とツイッターでつぶやいてみたところ、さっそく100を超えるリツイートをいただき、関心の高まりを感じました。

そこで、新入生ガイダンスで配布予定の文書(40字×40行のA4用紙で4ページ強)を下記に公開することとしました。許諾手続きは不要ですので、適宜カスタマイズしてお使いいただけると幸いです。

各大学の学生部主催の新入生ガイダンスや学部主催のガイダンス、初年次教育の少人数クラス授業、1年次からのキャリア教育科目などの機会を通じて、アルバイト就労にあたっての注意喚起を各大学で行っていただけることを期待しています。

********* ここから末尾まで、文書見本 ***********

アルバイトを始めるにあたって

○○大学○○学部○○委員会

2015年4月★日

アルバイトは良い社会経験になりえますが、

アルバイトに時間を取られ過ぎて学習や課外活動が犠牲になっては本末転倒です。

また、アルバイトで違法な扱い、不当な扱いを受ける可能性もあります。

アルバイトを始めるにあたって、知っておきたいことを以下に紹介します。

1. 労働条件を確認しよう・自分の希望も伝えよう

アルバイトも「労働契約」。学生は契約の当事者

労働条件は書面で確認し、自分の希望も伝えよう

書類は保管しておこう

(1) アルバイトも「労働契約」。学生は契約の当事者

アルバイトを始めるとき、まず求人情報を検討するでしょう。ですが、より詳しい労働条件は、応募者である皆さんと使用者が話し合ったうえで確認して決めることになります。これを「労働契約」と言います。

「労働契約」は労働者と使用者の「同意」に基づきます。皆さんは契約の当事者です。働き始める際に、疑問があっても言い出しにくいと感じることがあるかもしれませんが、同意できない条件で働き始めては危険です。当事者としての自覚をもって、しっかりと話し合い、確認しましょう。

(2) 労働条件は書面で確認し、自分の希望も伝えよう

労働基準法では、労働契約の際に労働条件を明示することを求めており、特に重要な次の6項目は書面で交付しなければいけないとされています。

(1)労働契約の期間

(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準

(3)仕事をする場所、仕事の内容

(4)仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替制勤務のローテーション等)  

(5)賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期

(6)退職(解雇の事由を含む)

これらを書面で示したものを「労働条件通知書」と言います。労働条件通知書の見本は、東京都産業労働局発行「ポケット労働法2014」のp.12-13にあります。アルバイトを始める前に確認しておいてください。

※「ポケット労働法2014」http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/siryo/pocket/

口頭で説明するだけの企業や、書面を見せるけれど渡さない企業などで働くのは危険です。労働条件通知書はしっかり受け取って確認し、疑問に思ったところは遠慮なく尋ねましょう。合意できない場合は面接を受けてもあなたから辞退してよいのです。合意して働くことになった場合には、書類は保管しておきましょう。

◆よくあるトラブル例

求人情報では時給900円と書いてあったのに、研修中は800円と言われた

研修中であっても最低賃金を下回ることは違法です。現在、東京都の最低賃金は888円です。勤務先の地域の最低賃金を確認しておきましょう。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

また、研修は何日間なのか、確認しましょう。1年間も研修時の時給のまま、という悪質な例もあります。研修期間は労働条件通知書に書き込んでもらいましょう。

また、大学生活では授業以外に、学部行事、課外活動、就職活動など、あらかじめの予定が立ちにくいイベントがあります。大学生活を優先させたいことをはっきりと伝え、どのように勤務の調整が行えるか、最初に確認しておきましょう。

(3) 書類は保管しておこう

トラブルを避けるために、次のような書類は保管しておきましょう。

・求人情報

・労働条件通知書その他、労働契約に関連する書類

・給与明細書

また、勤務時間通りの賃金が支払われるか、確認するためには、勤務開始時間・就業時間の記録を取っておくと良いでしょう。

2. 各種のアルバイトを始める前の注意:起こりがちなトラブルに備えよう

(1) 居酒屋

深夜まで営業している店が多く、生活が夜型になりがちです。時給が高いのが魅力ですが、午前中の必修授業に出られなくなれば、進級も危うくなります。勤務時間帯をよく検討しましょう。

新年会・忘年会などの季節行事や当日の天候によって、客の入りが大きく変わります。人手が少ないと、お店の都合にあわせた過度なシフト勤務を強要される恐れがあります。シフトの決め方についても、確認しておきたいものです。

(2) その他飲食店(飲食チェーン店、ファストフードなど)

居酒屋もそうですが、お店に正社員の数が少なく、現場の労働力として学生アルバイトやパートへの依存度が高くなりがちです。週3日の勤務のつもりが、期待されて頑張っているうちに、いつのまにか週5日働くことになったなど、バイトに日常生活が奪われてしまわないよう、最初からきちんと希望を伝えることが大切です。

(3) コンビニ

うな重やおでんなどの季節商品の販売ノルマがアルバイトにも課され、ノルマを達成できずに自費で買い取らざるを得なかったというトラブルが発生しています(同様のノルマは飲食店でもあり得ます)。本部はノルマの強要はしていないようですが、労働条件を確認する際にノルマについても確認しておくことをお勧めします。

(4) アパレル

お店で販売している洋服を身に付けるよう求められることが多い職場です。社員割引で購入できる場合が多いようですが、何割引なのか、事前に確認しておきましょう。また、その時々に売り場に並んでいる洋服しか身に付けてはいけないという職場もあるようです。そうなると、アルバイト収入の多くを洋服代に支出せざるを得なくなります。よく確認し、検討しましょう。

(5) 学習塾

比較的時給が高い職場ですが、授業時間分(コマ給)しか給与の支払いがなく、事前の準備や採点業務、記録業務、相談業務などが無給である場合も多い職場です。本来は業務には賃金が支払われるべきものですが、そうではない実態が横行しています。働き始める前に労働条件を注意して確認しましょう。

授業を受け持つと、休みにくい・辞めにくい、という問題が生じがちです。学校行事や期末試験、課外活動、就職活動など、学校生活ではより優先すべき予定も出てきます。学生生活への配慮がどうなっているか、働き始める前に確認しましょう。

3. 知っておきたい労働法と対処法:違法・不当な扱いには早めの対処を

アルバイトも労働者ですので、労働法に守られています。しかし、学生が労働法に詳しくないことや、抗議の声をあげにくいことから、違法・不当な扱いを行う職場もあります。

困ったことが起きたら、一人で悩んだり我慢したりせず、早めに相談し、対処しましょう。

(1) わかりやすい労働法の解説冊子

・東京都産業労働局「ポケット労働法2014

http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/siryo/pocket/

・厚生労働省「知って役立つ労働法

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/roudouhou/

労働契約や、残業代、深夜割増賃金、有給休暇、解雇など、働く上で知っておきたい労働法をわかりやすくまとめた冊子です。ネットでPDFが公開されています。また、厚生労働省は「確かめよう労働条件」というサイトに情報を整理・集約しています。http://www.check-roudou.mhlw.go.jp/

(2) 具体的なアルバイトのトラブル事例と対処法の解説冊子

・鈴木絢子・大内裕和ほか「ブラックバイトへの対処法」http://bktp.org/news/1051

労働相談NPO、大学教員、労働問題に取り組む弁護士などで作成した冊子です。

「残業代が支払われない」「ミスをしたら罰金を求められる」「休憩が取れない」「シフトが勝手に決められる」「辞めさせてもらえない」など、アルバイトでありがちなトラブルについて、Q&A形式で法的な解説と対処法を詳しく記しています。

(3) 困ったときの相談先

・厚生労働省が設けている「総合労働相談コーナー」では、あらゆる労働相談に面談・電話で対応しています。所在地・連絡先は下記から検索できます。

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

連合(日本労働組合総連合会)も、フリーダイヤル 0120-154-052で、労働相談に対応しています。http://www.jtuc-rengo.or.jp/index.html

・大学の学生部や学生相談コーナーでも、相談してみましょう。弁護士による無料相談の機会を設けている大学もあります。

・労働問題に取り組む弁護士会やNPO、ユニオン(労働組合)なども、相談窓口を設けています。

(4) 動画「若者必見!知らないと損する労働法」

アルバイトでありがちなトラブルについて、東京都産業労働局が約7分構成の動画「若者必見!知らないと損する労働法」を3種類公開しています。http://manabu.metro.tokyo.jp/douga/

・ こんなはずじゃなかった (1)労働契約編

・ 残業代が出ない?    (2)残業代・割増賃金編

・ 辞めさせてくれない   (3)退職できない編

********** 文書おわり ************

<2016 年3月6日追記>

上記の注意喚起文書について、最低賃金額の改訂、リンクの更新、新しい情報の追加などを行った更新版を下記の通り作成しました。

2016年度については、下記をご活用ください。

【2016年度更新版】新入生向けにアルバイト就労にあたっての注意喚起を!(上西充子) - Y!ニュース