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事実婚は“離婚”しやすい?同棲との違いやすれ違いの背景とは…

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:アフロ)

■しみけんさん・はあちゅうさん夫婦が事実婚を解消

セクシー男優のしみけんさん(43歳)と、ブロガーで作家のはあちゅうさん(36歳)が事実婚の解消を公表されました。お二人は2018年に事実婚を発表され、2019年3月に第一子をもうけていらっしゃいます。

入籍している普通のカップルなら離婚してもお茶の間を騒がせることも少ないのですが、お二人の場合は事実婚であり、興味関心を惹くお仕事であったため、賑わせているのでしょう。

新しいパートナーシップとして語られる事実婚は、芸能界でもよく聞くようになりました。最近ではryuchellさんpecoさん夫婦も、戸籍上の夫婦関係を解消し、家族として同居を続ける事実婚状態を発表されていました。

「事実婚だから簡単に別れられる、どうせすぐに別れると思った」という意見を散見しますが、今や結婚のカタチは様々です。例えば、結婚式を盛大に挙げても籍を入れずに夫婦生活をする方もいれば、入籍はしたけれど1週間で離婚する人もいます。

そもそも事実婚は同棲とは違います。同棲は結婚の約束をせずに同居している状態であり、同居人と大差がない間柄でお試し期間ですから、別れに至りやすいのは当然です。事実婚の場合、戸籍上の入籍をしていないだけで、結婚している夫婦と変わらない間柄です。両者の結婚の意志を確認し、結婚観のすり合わせをし、結婚の挨拶や両親親族への紹介をするなどの筋を通したお付き合いがあるケースがほとんどですから、別れやすいかどうかは婚姻関係のある夫婦と大差はありません。婚姻届けと言う紙1枚の違いだけで表面上や生活する二人としてはなんらかわりないのです。

結婚相談所にいらっしゃる方も婚姻のメリットと、改姓のデメリットを天秤にかけて、入籍しない夫婦生活を選択する方もいます。特に多いのは、女性側が医師や研究者、経営者などキャリアのあるケース、もしくは就学中のお子さんがいらっしゃり苗字の変更を気にされるケースです。資産家と再婚者のカップルだと相続の問題が発生することを懸念したり、お互い経済的に対等でいたいという考えから、事実婚をする方もいらっしゃいます。

ある女性は研究職で、「論文に名前を残すため、男性姓に変えたくない」と希望されました。真剣交際に入ってから相手の男性に「仕事上のデメリットや負担が大きいから」と交渉した結果、籍はしばらく入れないことに決めました。彼が両親に説明をし、豪華な挙式も挙げましたが、当面は籍はそのまま事実上の結婚生活を過ごし、いずれ子供が生まれたら、「女性側の姓」に統一するか、住民票の続き柄を「妻(未届)・夫(未届)」にして事実婚にするかを考えていくという方針にされていました。個人的には、当人同士が満足し、祝福されたい近しい親族等に理解を得られれば、どんな形式でもかまわないと考えます。

■事実婚を解消するカップルの特徴は?

ただ、事実婚を解消するカップルは、実はどちらかが法律婚を望んでいたケースが多い印象です。実際に話を聞くと、「条件をのまないと一緒にいられないと思った」「実際に何年か暮らしてみたら、いずれ籍を入れてくれると思っていた」とおっしゃっていました。

はあちゅうさんの場合、ツイッターに《結婚よりも対等感を感じる事実婚、って強く思ったから、形式にこだわりがある》とつづり、望んで事実婚を選択したことを明かしています。その一方で、「対等な関係ではなかった」という心情も吐露していらっしゃいます。

発表前のインスタグラムに《男の人はいつも「自分」で動けるけど、女の人は妊娠した瞬間から「自分+子供」になるんですよね》《私も「結婚」が息苦しい。どこまで行っても対等になれない!》とつづっています。

つまり、「事実婚が離婚の原因」ではなく、対等ではないという「不公平感」と、夫婦の役割の問題で、「不公平さ」の解消には正解がありません。感じている不公平や不平等を、二人で向き合ってつぶしていくしかないのです。

例えば、夫が忙しくて家事や子育てができないなら、夫の分の家事を外注すれば解決しそうなもの。しかし、「家事する時間があるのに一人で遊びまわっていることが不公平だ」という気持ちを取り除けない限り、家事負担が軽減しても、不公平感は残ってしまうでしょう。

とはいえ、離婚は経験のひとつ。しがらみから離婚に踏み切れず体や心がボロボロになるよりも、本人が幸せに快適に暮らすための選択であれば尊重されるべきだと思っています。

これから結婚する方の場合、事前に家事分担やお金の話を腹を割って話し合って、実際に生活して1~2年でもう一度すり合わせてぶつかって、家庭のなかでの役割を確立していきましょう。

婚活の場合は、家事や子育て分担、お金の話、結婚後の働き方について、真剣交際から成婚までの1か月で詳細を詰め、交渉しながら縁談を進めていきます。

■家事は一切不要!その代わり……婚活の交渉術

ある女性は、26歳で年収800万円の外資系会社員。尊敬できる人がいいと、自分の2倍3倍稼ぎ、刺激的で先進的で、バイタリティーのあるお相手を望んでいました。そこでマッチングした男性は、34歳の経営者で、「マンションの家賃は毎月150万円で、部屋と洋服のクリーニングがついているので、掃除は一切しません。食事は毎日会食で、家ではコーヒーを飲む程度。だから、結婚しても、家事をするつもりはありませんし、妻になる方にもしていただかなくて大丈夫です。車は3台あるので1台は自由に使ってください」とおっしゃいました。

申し分ない条件の彼でしたが、彼は子供を幼児教育に力を入れた幼稚園に入れたい、という強いこだわりがありました。知識レベルの高い女性をご希望し、頭が良くて年収の高い女性ばかりとお見合いをしていましたが、「子供は3歳まで幼児教育の習い事に通わせたいので、保育園は避けたい」とおっしゃいます。幼稚園は原則9時~14時くらいの時間帯ですから、妻側は3~6年間、仕事をセーブしてほしいと主張します。園や地域によっては預かり保育で保育園と変わらない時間帯まで預けられますが、彼の望む幼稚園にはありませんでした。

彼は魅力的な人だけれど、彼女は自分のキャリアがこれからの時期という点で悩みました。希望をいうのは自由で、ここからが交渉です。もちろん、婚活アドバイザーの私も経験から、あらゆるアイディアを絞ります。

彼のほうは6~8年の育休や時短は難しいのか、彼女の会社の制度はどうなっているのか? 2~3歳までは保育園に預けて習い事に通い、幼稚園入園を機に転園するのではどうか? 保育園の代わりになるような長時間の幼児教室に通い、その時間は時短勤務・在宅で働けないか? 送りや迎えはベビーシッターに頼めばどうか? ご両親の協力を仰げないか?

……こちらのカップルはまだ交際期間中で、お互い理想が高く、気に入っているからこそ、悩みに悩んで条件や希望をぶつけ合っている最中です。婚活の場合、真剣交際でこういった話をして、折り合わなければ破談になりますが、それでいいのです。事前に話し合っているからこそ、「それでは話が違います。それではご縁がなかったですね」という結論が出るのです。真剣交際に入っていても、違うと思えばいくらでも戻っていいのが婚活です。もっと話の分かる人がいい、もっと平等がいいと思えば、その通りの人を探せばいいのです。

事実婚でもそうでなくても、家庭内に上下関係や不平等感があれば、居心地が悪いものになります。家庭には生活と安らぎの2つの要素があり、どちらも「ひとりのほうがいいわ」となれば、離婚を選ぶことになる。ただそれだけのことではないでしょうか。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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