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少子化と婚活の深い関係。令和時代の結婚できない男女の問題点は?

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:アフロ)

■少子化で緊急支援へ…少子化の一因に、結婚しない人の増加あり

先日、厚生労働省が2021年度の人口動態統計(速報値)を発表し、去年生まれた子どもの数が前年度と比べて1.3%減の84万人となり、14年連続の減少で、過去最少を更新したことがわかりました。自民党の調査会はコロナ禍で加速した少子化に歯止めをかけるべく、3年間結婚・出産への緊急支援に取り組むことを求める提言を岸田総理へ申し入れたと報道されています。

少子化の原因は様々で、直近ではコロナ禍の不安感なども影響しているとは思いますが、一時的な支援で根本的な解決ができるのかという点は様々な議論がなされています。今回は、婚活の視点で考えてみたいと思います。

まず、出生数や出生率のデータも参考にしてみましょう。厚生労働省が2021年6月に発表した2020年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.34とされています。1974年の2.05人を最後に、下がり続けています。しかし、夫婦の最終的な平均出生子ども数を表す完結出生児数を見ると、第12回調査(2002年)の2.23人まで30年間にわたって安定的に推移しており、第14回調査(2010年)では1.96人と、はじめて2人を下回ったものの2人に近い数字となっています。

つまり、結婚をしたご夫婦は1970年代から変わらず、平均2人の子どもを持っていますから、出生数の減少は、未婚者の増加が深く関係しています。つまり、結婚する人が減っているから出生数が減っているとも言えます。

では、なぜ結婚する人が減ったのでしょうか。一生結婚しないと決めている独身主義の方が大多数であれば個人の選択なので尊重されるべきですが、実際はそうではなく、コロナ以降に婚活を始めた人も増加しています。結婚はひとりではできませんから、男女ともに意識や現実に問題点があるのです。

■婚活女性の課題は、“親世代の価値観からの脱却”

まずは女性側の抱える問題を考えていきましょう。

一般社団法人 日本経済団体連合会の「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか-人口問題委員会」(2022年5月19日 No.3544)という記事では、次のような記述があります。

※参照:http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2022/0519_07.html

「収入が相対的に少ない男性が結婚相手として選ばれないという事実がある」「保育所を増やしても、収入が不安定な男性の結婚は増えない」「収入が不安定な男性をどのように結婚までもっていくか、そのような男性と結婚しても大丈夫という女性をどう増やすか」――これについては、男性目線の意見ではないかという批判もあり、議論を呼んでいます。

また、欧米の少子化対策は、一人暮らしが多く、結婚・同棲に経済的メリットがある/女性は差別されず、仕事で自己実現を求める/恋愛が盛んである/子育ては成人まで/を前提にしているけれど、日本はそうではないので欧米式の対策では難しい、とも書かれています。

婚活現場では、女性の収入にかかわらず、「男の方が年収が高いほうがいい」と漠然と考える女性が多い状況があります。特に都心部では女性の社会進出はかなり進んでいて、私の相談所でも年収1000万円を超える婚活女性を多々担当していますが、やはり同様です。

先日も、38歳で1000万円の年収がある婚活女性が「年収を書くとお金目当ての男性が近寄ってくるから嫌です。自分以上の年収の方がいいです」とおっしゃいました。このように、「年収が高くても、男性からお金の面で頼られたくない」という意識がある女性は少なくありません。

しかし、頼って頼られるのが夫婦です。また、なんの特徴もない38歳と、仕事を頑張ってキャリアを積み重ねた38歳では見え方が違いますし、お相手からみたときのひとつの長所になるのだということをお伝えし、ご納得いただくケースが多いです。

そもそも、なぜ婚活世代の価値観がアップデートされないか? というと、精神的に親離れ・子離れできてない独身者が多いことも原因となっています。前述の記事でも「日本では親と同居の独身者が多い」「将来にわたり親に子育ての責任がかかる」と表現されています。親世代と精神的な距離が近いことで価値観を受け継いで婚活をしてしまう。教育熱心な両親に育てられた真面目な女性に多い印象です。

婚活現場では、まずは生活面と経済的に自立することから婚活が始まると考えていますから、「マンスリーマンションでもいいから実家を出てみましょう」とお伝えしています。

一方、男性側が抱える問題はどうでしょうか?

■婚活男性の課題は、“自立とコミュニケーション”

「男性が外で働き、女性は家庭を守る」という古い考えは男女それぞれの中にあるものです。すでに現在の日本はアメリカよりも働く女性の割合が多くなっていますが、日本人男性が家事に従事する時間はアメリカ人男性の1/3というデータもあります。女性の社会的な活躍が進めばなおさら、夫となる相手の選び方については、収入以外の、例えば、家事力や生活力を視野に入れる必要があります。

婚活現場の男性は、自立が出来ているかという点で女性から厳しくみられる時代です。具体的に言うと、自炊の可否、生活費の把握、肥満を含めた健康管理ができているか、服装の清潔度などです。男性が年収700万円で実家暮らしの方、年収500万円で自炊して一人暮らしの方であれば、後者の方が選ばれます。ただ、自立は最低限の話なので、プラス評価にはつながりません。

実は、男性の年収が低くてもカバーできる魅力となるものはコミュニケーション能力です。

先日、年収1000万円の32歳・女性と、年収400万円の29歳・男性が真剣交際に入られました。マッチングの決め手は男性のコミュニケーション能力でした。実際、「とにかく、会話。夜景を見ても、お互い会話していました」とおっしゃっていました。

この女性も当初は自分より年収が高い男性を望み、数名とお見合いもされましたが、自分が技術職のマネージャーで今後も収入アップが見込めるということで、「家事をしてくれる男性がいい、お相手の収入は気にしません」という条件に変更されました。

お二人は初回から会話が進んでお互いの現職やバックグラウンドについて話しあい、2回目からは踏み込んだお金の話、3回目には家事分担や育休、将来の不妊治療のことまでしっかりすり合わせることができていました。

実は、男性は年収こそ高くないものの投資や資産運用をしていて、会社選びや働き方に関する考え方がしっかりしていました。また、コミュニケーションも受け身ではなく、自分から積極的に会話ができる人柄だったことから、年下でも“頼りない”と思われずに進めたポイントだったようです。逆に言えば、年収が低くてもコミュニケーションの面で魅力があり、働く女性のサポートができる男性はマッチングの幅が広がると言えます。

経済の停滞から、会社員の給料が上がりにくい状況はもう30年も続いています。しかし、一時的な経済支援が少子化対策になるのかという点については、様々な議論があり、もはや待ったなしの状況です。

まずは「結婚したい」と思っているご本人が自分自身の良いところを伸ばし、足りないところを補い、意識や行動を変えてみることで結婚観をアップデートし、マッチングの幅を広げることが、スモールステップながら、最速の道なのではないでしょうか。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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