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芸能人も実践する二拠点生活。リモート定着で婚活も「あえて別居」がいい?

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:イメージマート)

自然豊かな地方で暮らす芸能人の二拠点生活がたびたび話題になります。リモートワークの定着後、実は婚活現場でも見られる現象です。仕事や子育てを軸にあえて別居し、二拠点生活をする婚活・結婚事例を紹介します。

■芸能人が実践、婚活にも取り入れたい「二拠点生活」

芸能人の方々が芸能生活を続けながらも、海外の自宅とを行き来したり、自然豊かな地方で農業や子育てに勤しんだり、という二拠点生活の事例が報道されています。著名なミュージシャンの海外生活は以前からありましたが、最近は、俳優さんや芸人さんなどテレビでの活躍を見せながら、活動の場を複数持っての発信が目立っています。

先日報道があったのは、俳優の松山ケンイチさんと小雪さんご夫婦。東京と北海道での二拠点生活をされていましたが、最近は小雪さんとお子さんたちは北海道に残り、松山さんおひとりが東京で単身赴任状態になっている、とのことです。

二拠点生活は、結婚しても夫婦それぞれが住まいや働き方を選択できるということであり、結婚して家庭に入ることがゴールではない今の時代を象徴していると言えます。複数の住まいや拠点を設けることで、理想の暮らしや教育がかなえられる可能性もあります。

■二拠点生活で「遠距離」の壁を越えられる?

実際、従来の婚活では物理的な距離がマッチングの壁になることがありました。婚活中の交際期間は一時的な遠距離が可能でも、通勤場所の縛りによって、拠点が限られてしまうからです。

あるカップルは、男性が神奈川県小田原市の会社勤務、女性が埼玉県のとある市役所勤務でした。お見合いの時点では関東近辺であれば通えるだろうと思っていましたが、電車で2時間以上の距離。交際中はお互いが都内に出るので気にならなかったのですが、いざ住まいについて考えると、横浜線沿いか高崎線沿いか、どちらかに寄ればどちらかの出勤がつらくなる……ということで意外な壁にぶつかりました。お二人の相性は決して悪くなかったのですが、その後、住まいの場所や働き方が合う方があらわれたことで、交際を終了することになりました。

毎日の通勤が前提の場合、退職して結婚するか、もしくは別居してでも仕事を続けるか、もしくはそもそも結婚をあきらめるか……という選択にならざるを得ませんでした。顕著なものが転勤族の結婚です。多くの場合、その選択を女性側が迫られることが多かったでしょう。

しかし、コロナ以降はリモートワークが定着し、月1回や週1回の出勤が当たり前になった方も多くいらっしゃいます。リモートワークが基本で必要な時だけ出勤、その際は上限金額数万円までなら新幹線や飛行機での通勤可能という企業も増えてきました。そうなると、空港近くや新幹線駅付近の地方に住んでリモートワークをし、出勤が必要な時だけ首都圏に拠点を移して働く選択も可能になります。

実際に、コロナ以降にリモートワークを活用して二拠点生活を前提にご結婚されたカップルがいらっしゃいます。女性は35歳・和歌山県在住の経営者、男性は35歳・東京都在住の大手企業勤務の会社員というおふたりです。従来の婚活では物理的にマッチングが難しいほどの遠距離でしたが、この壁を乗り越えられました。

彼女は自分の会社があるので和歌山を完全に離れるわけにはいかないと考え、当初は関西周辺の男性と会っていました。視野を広げるために東京在住の方にお会いしたい、ということだったので、さまざまな選択肢を提案しました。

彼女は年齢的に妊活や産後の不安も抱えていらっしゃったので、会議などを数日にまとめて和歌山に出勤し、東京ではリモート勤務をする二拠点生活を勧めました。また、産育休の間は和歌山に里帰り出産をし、旦那様が二拠点生活をなさる提案もしました。東京の住まいにお母様を呼びよせてサポートしていただく方法も考えられます。このようにして、前向きに二拠点生活を捉え、彼と一緒に生活基盤を整えながら、ご成婚へと進まれたのです。

ご結婚後の現在は、子供が生まれてからのシミュレーションを具体的に進めていらっしゃいます。お子さんの教育や進学に関しては東京のほうが利便性が高いですが、自然あふれる環境としては和歌山の拠点も捨てがたいということで、子育ても二拠点にする可能性も考えていらっしゃるようです。

■子育てのため「あえて別居」で二拠点を選択するケースも

仕事の都合で夫婦どちらかが二拠点を行き来するケースだけでなく、家族が2つの拠点に分かれて生活するのが適するケースもあります。

共働き子どもなしのDINKSであれば、第一に仕事が関心ごとですが、お子さんが生まれると、子供の健康や教育を理由に二重生活を検討されることは少なくありません。

3人家族のある事例を紹介します。夫の転勤で中国・上海に移住され、お子さんがインターナショナルスクールに通われて3年、英語と中国語が身についたのですが、そこで日本への転勤が決まりました。インターが気に入っていましたが、日本では通えないということで、結果的に母子は上海へ残り、夫だけが日本で仕事をする選択をされました。語学堪能になった息子さんは、今ではアメリカへ進学されているとのことです。

日本国内でも、進学や教育のために文京区や中央区などに母子だけがマンション住まいを選択することは珍しくありません。進学以外にも、冒頭の小雪さん夫婦のように、自然に触れられる環境を望む、あるいは、子どもの持病のためにきれいな空気の中で育てたいなどの理由で二拠点を選ぶケースもあるでしょう。

家族みんなで同じ場所で暮らす選択だけでなく、あえて家族が二拠点に分かれる選択をする家庭も今後、増加していくのではないでしょうか?

婚活では机上の空論でこうなったらどうしよう、と考えすぎて身動きが取れない方もお見受けします。まずは飛び込んで、結婚後によりベストな選択をしていくことが可能な時代になってきたのかもしれません。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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