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人気俳優の「戦友婚」に見る、20代の早婚志向が高まる背景

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:ロイター/アフロ)

■「戦友」は今どき20代を象徴する結婚観

15日、俳優の菅田将暉さん(28歳)と小松菜奈さん(25歳)が結婚を発表されました。おめでとうございます。ともに人気絶頂で多忙ななか、20代での結婚を決意されたことにエールを送りたい気持ちになりました。

印象的だったのは、連名での結婚報告の文面です。〈出会った頃から変わらず私達は、戦友であり、心の支えであり、これからは家族になります。人生を共に考え進んでいくこと、とっても楽しみです〉といったメッセージが話題になっています。

等身大でありながらも、ただの憧れではなく現実的な結婚観をお持ちであることを感じさせます。〈これからも際限なく作品と向き合い〉という言葉に集約されるように、10代から真摯に仕事に向き合い、作品を深く理解する中で、内面も成熟していらっしゃるのだとお見受けします。

今回は「戦友」という言葉が持つ時代の背景について、婚活現場からの視点で考察していきます。

■晩婚化のなか、若者世代に早婚志向が高まる背景

実は私自身、婚活セミナーの「結婚生活」のパートでこの言葉を何度も使用してきました。結婚相手というのは、約50年を一緒に生き抜ける相手、つまり「戦友」になれる人を探しましょう、といった主旨です。

恋人同士ならばお互いの楽しいところだけを見て、刹那的な関係でも良いですが、人生100年時代を共に生きていくとなると、いばらの道も出てきます。

結婚に対し、どちらかが寄りかかったりぶら下がったりする関係性をイメージしていると当然、「一人で二人分の負担を背負う」という考えになり、結婚を決断しにくくなります。しかし、「一人より二人のほうが心強い」「二人いれば、負担を半分にできる」となれば、不安定な時代だからこそ結婚したいという意識が高まるでしょう。

また、続く晩婚化の流れのなかで、一部若者に早婚志向が高まっていることは以前からお伝えしてきました。

厚生労働省の調べによると令和2年の日本全国の平均初婚年齢は、夫 31.0 歳、妻 29.4 歳。前年よりは0.2歳低下したものの、晩婚傾向は変わらず、とくに東京都では夫 32.1 歳、妻30.4 歳と、女性も30歳を超えています。

ですがコロナ禍以降は、20代で結婚して生活基盤を作り、個々のキャリアアップを目指そうとする動きが若い世代に活発にみられるようになってきました。将来の安定を求めるミドル・クラスの方々と、いい仕事をするために結婚して基盤を作ろうとするDINKS志向が高いアッパー・クラスの方々が、ともに早婚志向になっています。逆に言えば、早婚であっても若年出産を目指すとは限らず、出産や子育てのための結婚という意識を持たずご結婚に進まれる方も少なくない印象です。

そういった意味で、冒頭のおふたりは何度も作品内でW主演をされているという「憧れのカップル像」であると同時に、今どきの夫婦像や結婚観を象徴し、体現するコメントと言えます。

■同じ目標を追うことで信頼関係を強固に

菅田さん・小松さんについては報道によれば、初共演は5年前とのことですから、当時は23歳と20歳頃となり、大学生くらいの年齢です。10代からプロフェッショナルな仕事に打ち込んでいらっしゃいますから、共演者が「ご学友」に近い間柄であったことが想像に難くありません。

学友同士も共演者同士も、同じ目標をいっしょに追う対等な立場。利害関係のない関係性が築きやすく、お互いの内面を深く知り、信頼関係が築きやすくなる利点は共通します。

婚活現場では、医学部・歯学部の学生の方から結婚相談を受けることが多々あります。医療の道を志す方々は、6年間の学生時代にお付き合いを開始したお相手とご結婚をされる方も多い一方で、就職後は多忙になるため、効率を重視して婚活を選択される方が少なくないのです。

結婚相談所で最近こんな事例がありました。歯学部に通う大学4年生、22歳の女性は「卒業すると忙しくなって婚活している場合ではなくなるかもしれない」ということで、両親の勧めで在学中に入会されました。

1か月ほどでご成婚が決まったお相手は27歳の外資系企業に勤める男性でした。彼女の場合、まだ学生のうちに結婚することになるので、結婚生活やお金の話もしっかりとする必要がありました。結果的には、すでに働いている彼が夫婦の生活費を出し、卒業までの彼女の学費は両親が出す、彼女の就職後はあらためて二人で考えようという話し合いがなされました。私からは「結婚後は実家住まいとは違うので、忙しい学生さんとはいえ、生活費を出してもらう以上、家事もきちんとして家庭を築いていきましょう」と彼女にお伝えしました。一方で彼は、「学生の本分は勉強なので、卒業まではムリせず頼ってほしい」と言ってくれ、仲良くご成婚へと進まれました。

彼女は「これからの進路のなかで、試験や研修、就職などさまざまな変化があるけれど、社会人の彼がいることでとても安心できる。学生のうちに婚活に踏み切ってよかった」と語っていました。

今や若くして結婚を決断するのは、勢いではなく、現実的な人生設計があるからこそ。また、仕事や人生の相談を分かち合えるよき理解者に巡り合えるのは、年齢を問わずとても幸せなことです。〈出会いに感謝〉という言葉でご縁を表現された菅田さん・小松さんご夫婦のこれからを陰ながら応援しています。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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