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想像を絶する約10年のマイナー生活…初のメジャー昇格・加藤豪将選手が経験したサバイバルの現実

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ここまでの道のりは、長かったに違いない。苦しい時間だったに違いない。言葉で表現するのも簡単ではないと思う。だからこそ、その先につかんだメジャー契約は、心からリスペクトに値すると思う。

 米大リーグ、ブルージェイズとマイナー契約を結んで春季キャンプに参加していた加藤豪将選手が初のメジャー昇格をつかみ取ったという。本当にすごいことだ。これまで接点はないけれど、NHKのサンデースポーツでも、TBSのサンデーモーニングでも、ぜひ取材に行って、どんなメンタルでここまでプレーしてきたのか、すぐにでも話を聞いてみたい。

 カリフォルニア州出身で、高校卒業後の2013年にヤンキースからドラフト2巡目指名を受け、今季が10年目。昨季はパドレスのマイナー、3Aでプレーし、114試合で打率・306、8本塁打、42打点の成績をマークしたという。それでも、メジャーには上がれなかった。メジャーはサバイバルと言われるが、実際にはメジャー40人枠やロースター入りが契約時点で保証されている選手がかなりいる。マイナーから昇格を勝ち取れる枠は開幕前の時点でそもそも2~3くらいしかない。

 春季キャンプは、ふるいにかける場でもある。加藤選手のようにマイナー契約でメジャーのキャンプやオープン戦に参加している選手は、結果が出なければ容赦なく、マイナー降格や戦力外通告を受ける。前日までプレーしていた選手のロッカーから翌日には荷物が整理されてなくなっていることも珍しくない。そんな中で、加藤選手は今季のオープン戦で打率・348、1本塁打、3打点。結果を出し続けた。数字だけではない。内外野を守れるユーティリティー選手でもある。貴重な存在だ。メジャーに上がるための「武器」は何か。あきらめることなく、自分が生きる「道」を必死で探してきたのだと思う。

 マイナー暮らしは甘くない。現役時代、リハビリのためにメジャーを離れた時期がある。過ごした施設は、気温が40度を超える真夏のクラブハウスに冷房がなく、シャワーはお湯が出なかった。メジャーのクラブハウスで出る食事とは当たり前だが、雲泥の差があった。球団やカテゴリーで違いはあるだろうが、マイナーの環境が過酷なのは間違いない。日本からFAやポスティングで高い期待をかけられてメジャーに行く選手にも相当な重圧があるだろうが、マイナーからはい上がっていくにはまた違う厳しさを乗り越える強いメンタルが必要になるはずだ。現役時代、マイナーを経験した選手からは「二度と落ちたくない」という気持ちが伝わってきた。

 加藤選手には開幕から厳しい戦いが待ち受けるだろう。10年目。年齢的にも結果を出し続けていかないといけない立場だろう。開幕ベンチ入りという報道もある。苦労人はどんなプレーを見せてくれるのか。まずはおめでとう!今季のメジャーに大きな楽しみができた。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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