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個人の力量で選ぶなら団体競技じゃない!センバツ不可解選考は全く理解できない

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:岡沢克郎/アフロ)

 理由を聞いても、全く賛同できなかった。

 1月28日に発表された第94回選抜高校野球の東海地区2枠の選考を巡る問題だ。1枠は昨秋の東海大会を制した日大三島(静岡)。波紋を広げたのは2枠目で、準優勝した聖隷クリストファー(静岡)が落選で初出場を逃し、4強の大垣日大(岐阜)が選出された点だった。前年東海大会の優勝校と準優勝校が順当に選出されなかったのは、1978年大会以来44年ぶりだったそうだ。

 報道によれば、選考委員会は「個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで選考委員の賛否が分かれたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とした」と説明したという。この解釈が理解できなかった。

 最初に断っておきたいのは、選ばれた大垣日大に対するマイナスな意見は違うということ。その上で、同じようなことが起きる余地を残してはいけないと考える。

 野球は言うまでもなく、団体競技である。「個人の力量」が必ずしも勝つとは限らない。例えば、攻撃に「打線」という言葉がある。「個」の力で劣っても、小技やバントなどを絡めることで「線」が生まれて得点を挙げることができる。守備も同じだ。投手力を守備で補ったりするのが「チーム力」だ。仮に、聖隷クリストファーが「個人の力量」で劣ったとすれば、それを「チーム力」で補って勝利したことになる。その結果が評価されないなら、団体競技そのものが否定されはしないか。

 あるいは、「個人の力量」で選ぶのなら、プロ注目の選手が数人いるようなチームは無条件に選抜甲子園に出場できることになりはしないか。

 選抜大会は夏の甲子園とは違い、秋季大会の成績はあくまで選考の参考であり、試合内容や地域性も考慮されるそうだ。しかし、秋季大会を戦う高校生たちは結果がセンバツ切符につながると信じてプレーしている。だからこそ、「結果が全て」の選考が望ましく、明確な基準作りが必要だ。それこそが、高校球児のためになるのではないだろうか。

 例えば2枠ある地区なら決勝進出した2校、4枠ならベスト4で決まり。2、4、8と分かりやすく選考できるように出場枠や地区大会の再編をしたほうが、わかりやすいと思うがどうだろうか。

 出場を逃した聖隷クリストファーは夏に切り替えて頑張ってほしい。ただ、言葉でいうほど簡単ではない。甲子園に出たか、否かはその後の進路にだって響く。理不尽を乗り越えて・・・というのは、高校野球が最も決別しなければいけない不合理ではなかったか。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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