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「メジャーは短所に目をつぶってくれる」ボストンの新19番・沢村拓一が感じる日米の違い

上原浩治元メジャーリーガー

 笑顔がすべてを物語っていた。レッドソックスに入団した沢村拓一投手をNHK「サンデースポーツ」でインタビューするために、キャンプ地のフロリダ・フォートマイヤーズを訪れた。球団OBでもある私には、スタッフに顔なじみの人もいて挨拶を交わすと懐かしい気持ちにもなった。

 マウンドで、かつて私がつけていた19番を背負って投げていたのが沢村だった。巨人の後輩でもあり、誕生日まで同じ。レッドソックスに入団して、同じ背番号をつけるというのは不思議な縁を感じる選手でもある。私が訪れた日は、沢村が初めて打者を相手に投げた日だった。メジャーの滑りやすいボールにもっと苦労するかと思ったが、順調な調整ぶりだった。

 練習後に話したときには、「(対戦した打者が)若い選手だったけど、直球を初見でファウルされた」とバットに当てられたことに驚いていた。「まっすぐに強いですね。ボールを動かしていかないと生き残れないと思った」と危機感もにじませていた。ワイルドな風貌に似つかわしくない繊細なメンタルの持ち主に自信のほどを聞いても、「なんともいえないです。中間くらいですかね」と慎重な答えが返ってきた。とはいえ、ボールの力強さはメジャーも認めたレベル。その後のオープン戦初登板は制球にも苦しんだようだが、今後に期待したい。

 沢村が日米の違いを語るときの言葉が印象的だった。「こっち(アメリカ)の人はどちらかと言うと短所に目をつぶって、長所を伸ばすようなことを言ってくれる。悪いところがあっても良かった点を言ってくれたりします。日本は悪く言えば『粗探し』みたいになる。メジャーは四球を出してもいいけど、最少失点で乗り切るための方法を探ろうというようなアドバイスをくれる。だから、小さくまとまらずにやれています」。ポジティブに物事を捉えるメジャーの思考法は、沢村には合っているようにも思える。笑顔に加え、話す口調から充実感も伝わってきた。

 ボストンの本拠地「フェンウェイ・パーク」のブルペンは右翼側にある。登板のときは小走りにマウンドへ駆けつける。私はこの場面で「サンドストーム」を流していた。沢村もこの曲を日本時代にも使っていて、ボストンでも採用するそうだ。「現役が華」と現役選手をうらやむ気持ちはいつもあるけれど、ボストンで19番を背負って投げるという沢村には、かつての自分を重ね合わせるようにうらやましさも人一倍ある。インタビュー後、沢村のユニホーム姿を撮影した。もう19番は彼のもの。寂しさも少しあるけれど、それ以上に頑張ってほしい気持ちがわいてきた瞬間だった。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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