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原監督のトレード期限撤廃案には納得! でも賛成できない改革案もある。

上原浩治元メジャーリーガー
現役指揮官でありながら球界改革の手を止めない原監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 巨人の原辰徳監督がトレード期限を撤廃し、年間を通して選手の移籍を可能とする改革案を披露したと伝えられている。今季は4件のトレードを成立させ、リーグ2連覇へタクトを振るう指揮官の発言は、私が以前のコラムでも提言した「日本球界の移籍活性化」にもつながる点からも賛同したい。

 野球協約に定められているトレード期限は毎年7月31日までで、新型コロナウイルス禍によって、3カ月遅れで開幕した今季は期限が9月30日まで延長された。巨人は期限ギリギリの9月29日にも2軍暮らしが続いていた田中貴也捕手を楽天に金銭トレードで送り出している。報道によれば、原監督はこのとき、「プロ野球選手はみんな限られた年数の中での個人事業主、夢追い人。現役なんて長いようで短い。貴也も大チャンス」とエールを送っていたそうで、"飼い殺し"の発想はなく、楽天のオファーに応えた格好だった。

 シーズン終盤は優勝争い、ポストシーズンをにらんだ最後の補強チャンスであり、優勝争いから脱落したチームは翌シーズンへ将来性のある若手が欲しい時期でもある。原監督が「むしろ、その後(期限の9月30日)の方が活発にならなきゃいけない時期」と強調するゆえんだ。ただ、移籍した選手からサインや戦術などが他球団に漏れるリスクを球団、選手の良心だけに委ねるのではなく、何らかの対策は必要かもしれない。

 原監督は以前からセ・リーグのDH制導入も提唱している。この点に関しても、私は大賛成だ。投手の打順でどう動くかというベンチワークが試されるという玄人には面白い部分もあるだろうが、単純に指名打者が入ったほうが、野球はおもしろくなる。レギュラー枠も1人増えると、セ・リーグ全体で6人増。新たなスターが誕生する期待が持てる。「打高投低」になるかと言えば、むしろ逆で、近年の成績をみれば明らかにパ・リーグの投手のほうが総じて実力がある。レベルの高い打線と対峙することで投手のレベルも上がっているのだろう。打席が回るタイミングで交代させられないため、完投の可能性も高まる。原監督も指摘している通り、投手のけがのリスクも減らすことができる。

 もちろん、私は原監督が掲げる球界改革のすべてに同調しているわけではない。たとえば、原監督が撤廃を訴えているフリーエージェント(FA)で獲得した選手の前所属球団への人的補償については、巨人やソフトバンクのような資金豊富な球団に有利に働き、FAで選手を手放す球団と戦力均衡が崩れる可能性が高く、考えが異なる。もし、撤廃するのであれば、ドラフト指名権を譲渡するなど対案が必要になってくる。

 ただ、現場の監督が持論を展開し、メディアを通じてファンに一石を投じることはとても意義があると思う。コロナ禍の今シーズンは色々なことが例外的に運用されてきた。こんな時期だからこそ、前例踏襲にこだわらず、球界改革に動くチャンスだととらえることもできる。球団側も選手会もこのオフ、ぜひお互いに活発な議論をしてほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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