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藤浪投手、冷静に自分を見つめ直す時だ…今が野球人生の岐路

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 阪神の藤浪晋太郎投手が中継ぎに配置転換後、好投を続けている。1日の中日戦は2点リードの8回に登板。1イニングで2三振を奪い、報道によれば自己最速タイの160キロを5度マークしたそうだ。これで3試合連続で無失点。矢野燿大監督のコメントをみても、「藤浪が投げると球場のムードが上がる」とチームに好影響をもたらしているようだ。

 「トレードに出すべき」といった”外野”の声がある中で、何とか阪神で再起を図りたいという矢野監督の決断が功を奏した形になっている。

 ただ、「これで中継ぎなら安泰か」と聞かれれば、3試合で判断するのは早いとしか言えない。もちろん、結果が出ているのはすごく良いことだ。

 好調の要因を探るとすれば、今は気持ちが張っていることが大きいと思う。ロッテに移籍した澤村拓一投手もそうだが、環境が変化した直後は集中力やモチベーションが高まっている。私が3試合で判断するのは早いと辛口なのは、本来の中継ぎは1シーズンで40試合以上投げて評価されるポジションだからだ。

 藤浪投手に関して言えば、私自身は「先発でやってほしい」という思いがある。恵まれた体格から160キロを投げられる。あれだけの投手が1イングではもったいない。

 もちろん、大事なのは藤浪投手がどう考えて決断するかだ。1イニングをほぼ完ぺきに抑える現状を、本人がどういう気持ちで投げているのか。短いイニングに集中力を発揮できる新天地が見つかったと考えるなら、中継ぎで頑張ってほしい。この集中力を長いイニングでも持続できるなら、先発に復帰してほしい。

 中継ぎなら余計な変化球はいらない。自分の武器であるまっすぐでガンガン押していけばいい。一方で、長いイニングを投げる先発はメリハリのある投球で変化球も必要になる。だけど、率直な感想でいえば、藤浪投手なら中継ぎで投げている今と同じスタイルで先発もいけばいいと思う。

 あのまっすぐにスライダー、フォークがあれば十分だ。制球難を指摘する声もあるが、ビビる必要はない。死球は故意に当てるわけではない。投手出身の私に言わせれば、真剣勝負の中でのアクシデントだ。

 澤村投手のときにも書いたが、投球内容にも完璧を求めすぎる必要はない。いまの時代の先発は6回3失点なら及第点の評価がもらえる。スタートから、中継ぎと同じ気持ちで飛ばせばいい。

 おそらく今シーズンは中継ぎで終えるだろう。この時間をどう使うかで、藤浪投手の今後は大きく変わるはずだ。ただ抑えたではなく、なぜ1イニングなら抑えられるのかを自分なりに考え、そのことが先発でもできるのかを考えながら投げてみてもいいと思う。良かった点、悪かった点をノートに記すのも手段だ。

 そしてオフに、自分は中継ぎでやるのか、先発に戻るのかを考え、春季キャンプに臨んでほしい。一つ言えることは、2、3年を中継ぎで投げれば、もう先発へ戻ることは難しいということだ。メディアの注目度も高い阪神ゆえに、数試合の好投でも称賛の声は一気に高まる。藤浪投手には冷静に来季を見据えて、「適材適所」を見つけてほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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