激闘レノファ、6試合ぶりの勝利! 浮田健誠が決勝点/レノファ山口
J2レノファ山口FCは8月16日、山口市の維新みらいふスタジアムで大宮アルディージャと対戦し、浮田健誠のゴールと粘り強い守備が実って1-0で勝利した。白星は6試合ぶり。
明治安田生命J2リーグ第12節◇レノファ山口FC 1-0 大宮アルディージャ【得点者】山口=浮田健誠(後半11分)【入場者数】1515人【会場】維新みらいふスタジアム
池上丈二をトップ下で起用
主力選手に負傷や出場停止などが続発したレノファ。今節は右サイドバックで田中陸が初先発し、右のウイングに浮田健誠、トップ下には池上丈二を配置した。
センターラインにボールを動かせる選手を揃え、上位との対戦ながらレノファは序盤からボールを握る。ただ、大宮が築くブロックは堅牢で、開始からしばらくは外側で回される形になってしまう。
徐々にペナルティーエリアに侵入するようになっていくが、ボール運びを改善するカギを握ったのが、池上のポジショニングだ。
「間のところで受けられるという話はしていたので、そこは選手一人一人が意識していた」。そう話す池上は、ボランチの高宇洋や両サイドバックからの縦パスを敵陣の高い位置で回収。ブロックの手前や間で受けたボールをすぐに両ウイングにつなぐだけでなく、ボールを保持し相手を引きつけてからスルーパスを供給する。
しかし、試合序盤でシュートチャンスが多かったのは大宮だった。ボールを握っていたわけではなかったが、カウンターやセットプレーから枠を捉えるシュートを放ち、レノファのゴールを脅かす。対するレノファはGK山田元気がファインセーブを連発。前半19分には大宮のCKからネルミン・ハスキッチにヘディングシュートを打たれるが、山田が跳ね返した。
「シュートが枠に来ていても、ちゃんと相手に体を当ててくれる守備陣がいた。僕が止めたからというよりも、全員で集中力を切らさないように声を出そうとやっている。それが結果につながった」
山田はそう謙遜したが、安定したセービングでピンチをしのぐと、次第に前線からのディフェンスもはまるようになり、レノファが目指す攻守でベクトルを前に向けたサッカーが機能していく。
守備でリズム。ピンチのあとにチャンス
前半20分過ぎからは池上が絡んだ攻撃でチャンスを広げ、シュートシーンが増え始める。同32分に安在和樹が左からクロスを入れると、池上が自らヘディングでゴールを狙う。これは上に逸れてしまうが、その直後には池上のスルーパスから高井和馬が左足でシュート。これも枠には飛ばなかったものの、ゴールにあと一歩まで迫る。
後半に入ると田中陸の縦パスを池上が右サイドで受け、クロスを送る場面も増加。前半は左サイドからのクロスが多かったが、後半は左右の区別なくチャンスを量産する。
均衡を破るゴールが生まれたのは後半11分。左サイドのコンビネーションから安在がクロスを入れると、ボールはゴール前の小松を越えてしまうが、ファーサイドから諦めずに走り込んだ浮田が右足で合わせた。浮田は2試合連続得点。ホームスタジアムでは初めての一撃となった。
待望の先制点。浮田を右ウイングで起用した狙いが当たり、レノファがリードする。
鮮やかなゴールシーンだが、2分前にはレノファにとってこの日一番のピンチがあったことにも触れなければならないだろう。
同9分、レノファは大宮の黒川淳史にドリブル突破を許し、こぼれ球からハスキッチに鋭く蹴り込まれる。黒川に守備陣が引き寄せられていたため、ゴールは無人に近い状態だったが、シュートに飛び込んだのが田中陸だった。身を挺してのブロックでゴールを死守。守備でのビッグプレーが、得点への流れを加速させた。
リードしたレノファは、終盤もフォーメーションには手を加えず、選手交代は同じポジションでの入れ替えに限定。守備を厚くして1点を守り抜くのではなく、可能な限り追加点を狙う布陣を堅持する。
「勝っていても負けていても攻撃的に行こうと思っていた。相手が大宮さんであっても、チームがこういう(勝てていない)状況であっても、ホームのサポーターに僕らがずっとやってきたレノファらしさを見せたいというメッセージを込めた」
霜田正浩監督はそう紐解き、攻撃姿勢を貫いた。追加点は挙げられなかったが、後半30分以降はピンチもほとんどなく、1-0で快勝。レノファは6試合ぶりの勝利を手にした。
セーブが作った攻撃の流れ
7月18日に行われたFC琉球戦に勝って以来、1カ月間、レノファは勝利から見放されていた。好ゲームを演じていても、セットプレーからの失点や集中力を欠いたプレーが足を引っ張り、前線も決定力を欠いた。
霜田監督は8月10日の練習後、「シュートの難易度を下げるような決定機をチームとしてもっと作らなければならない」と強調。今節はリンクマンの池上をトップ下に置き、FWに預けるラストパスの質や前線での距離感を改善させる。
実際に今節はFWが放つシュートが増え、合計13本のシュートのうち9本を3トップがマーク。コンビネーションを生かした決定機も多かった。もっともネットを揺らしたのは1本にとどまり、枠内に放ったシュートもピッチサイドで見ている限り、3本しかなかった。シュートの難易度が下がったのは間違いないが、最後の精度はまだ上げなければならない。
課題を残す攻撃に比べれば、今節は守備面の奮闘のほうを称えるべきだろう。
GK山田は7月25日のギラヴァンツ北九州戦に0-2で敗れた際、「相手のGKは同い年の永井(堅梧)だったが、永井のところ(好セーブ)で試合が決まったという面がある」と悔やみ、こう続けていた。
「GKのセーブは、FWが点を取ることと同等か、もしくはそれ以上に大事だと思う。自分の気持ちも上がるが、チームを助けられるし、士気も上げられる。その手段として、声もそうだが、セーブで救うことも一番大事だ」
安易な失点にあえいでいた守備陣に持つべき粘り強さが復活。今節は山田が好セーブでチームを助け、それでも及ばなかった場面ではDF陣が体を張った。
6試合ぶりの勝利。想像以上にトンネルは長く、試合後、ようやくつかんだ勝利に目を潤ませる選手もいた。
左手に涙するキャプテンの池上、右手に高を抱えた霜田監督は、「涙が物語っていると思うが、非常にいい試合ができた」と感情を受け止め、「若い選手が試合を追うごとに成長している。僕らのプレーモデルを理解してそれをやり、体も張ってくれる。そういう意味では、開幕戦の1-0よりも今日のほうがいい試合ができた」と話した。
守備が踏ん張り、FWが点を取り、全員でつかんだ勝利だ。しかし、死闘とも呼べる試合は何度も作れないし、悔しさの上の涙を何度も流すわけにはいかない。目指すのは苦しい勝利ではなく、プレーモデルを突き詰めた先にある安定した戦績。美しい涙の次は、試合終了のホイッスルを笑顔で聞けるような試合を作っていきたい。
次の試合は中2日で開催。8月19日午後7時から、前橋市の正田醤油スタジアム群馬でザスパクサツ群馬と対戦する。次回のホーム戦は同22日午後7時キックオフのFC町田ゼルビア戦。いずれの試合も引き続きアウェーサポーター席を設けない超厳戒態勢で行われる。