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「引き込まず、クレイジーに!」 J2開幕戦へ、レノファ山口・池上主将ら決意

上田真之介ライター/エディター
雰囲気良く練習に臨む選手たち=筆者撮影、この記事の他の写真も

 明治安田生命J2リーグが2月23日に開幕する。J2昇格から5年目を迎えるレノファ山口FCは、全選手の半数以上が入れ替わるという育成型クラブの困難に直面しながらも、積極補強を断行し昨シーズン並みの戦力を確保。ギラヴァンツ北九州は「昇格請負人」とも言われる小林伸二監督が2年目の指揮を執り、4年ぶりのJ2に挑むチームを引っ張る。

 本稿ではレノファとギラヴァンツの2チームの開幕戦を監督や主軸の選手たちの言葉で展望する。前編はレノファ山口FC編。(後編ではギラヴァンツ北九州を取り上げます

半数が入れ替わる

 レノファ山口FCの今シーズンの顔ぶれは、もはや昨年とは別のチームと言っても差し支えがない。昨シーズンの終了後、主将(当時)の三幸秀稔が湘南ベルマーレへと巣立ったのをはじめとして、副主将の前貴之が横浜F・マリノス、ルーキーイヤーでめざましい活躍を見せた菊池流帆がヴィッセル神戸へとそれぞれ個人昇格を果たした。レンタル加入していた戦力も佐々木匠、宮代大聖などがJ1のレンタル元に復帰するなど主力がごっそりと抜け出てしまった。

 こうした事態を受け、各ポジションで即戦力になる選手を補強。昨シーズンは失点の多さが足を引っ張った面があり、J2での経験値が高い選手の獲得にも動いた。MFヘニキ、DF菊地光将の獲得からは失点を減らしたいという明瞭な意図が見える。ただ、戦い方のすべてを守備的に振るわけではなく、あくまでも霜田正浩監督は「攻撃時も守備時も変わらずに、相手ゴールに矢印を向けてやっていく」と明言。DF安在和樹、FW森晃太など攻撃面での特徴がはっきりした選手を集めたほか、キャプテンにはセンターラインでの引き出しや供給に長けた4年目のMF池上丈二を指名した。

池上丈二(左)と高宇洋(中央)
池上丈二(左)と高宇洋(中央)

 池上は開幕戦に向け、次のように意気込みを語る。

 「ゲームに入って落ち着いてくれば相手を見ながらというシーンは出てくると思うが、基本的には後ろ向きのサッカーはしない。ディフェンスでも前向きにやろうという話をしている。スローガンのようにクレイジーに、レノファのサッカーをピッチで表せるかが大事だ」

クレイジーに戦い抜く

 レノファは今年、チームスローガンに「GO CRAZY 昇格へ狂いたまえ」という一風変わったフレーズを採用した。幕末に私塾「松下村塾」を開いた吉田松陰の言葉から着想を得たもので、「諸君、狂いたまえ」の特大の横断幕(リンク先は毎日新聞の記事)はスタジアム名物の一つだ。

 クレイジーさは練習からも感じられ、今年は1月7日に始動すると、翌日からは早朝6時に全員で走り込みを行い、対外試合を多く組んだタイでのキャンプは18日間に及んだ。「やれることは全部やろう」(霜田監督)と指揮官の鼻息は荒いが、クレイジーなトレーニングによってチームを着実に再統合してきている。2年目のMF吉濱遼平も手応えを口にする。

 「去年よりチームとしてボールを奪えている。課題が出ても、全員で話して全員で同じ絵を描きながら守備ができているのはいいところ。誰が出ても同じようなプレーができるという感じは開幕戦からできると思う。その意味ではポジション争いも激しくなっている」

 ただ、開幕戦の相手は難敵だ。迎える京都サンガF.C.も主力の仙頭啓矢や小屋松知哉が抜けたものの、FWピーター・ウタカ、DFヨルディ・バイスなどを補強。MF庄司悦大を中心としたゲームメークに厚みが増した。

(左から)安在和樹、村田和哉。新戦力が融合してきている
(左から)安在和樹、村田和哉。新戦力が融合してきている

 池上は「京都はクオリティーが高い選手がそろっている」として警戒しつつ、「確実にチャンスは出てくる」としてサッカーが小さくならないよう気を配る。京都の實好礼忠新監督のもとでプレーした経験があるMF高宇洋は、「京都は上手い選手が多いし、監督とはガンバ大阪で一緒にやっているのでそういう意味でも負けたくない。ゴール前に入っていく回数やビルドアップでの自分の役割は去年よりも増えているが、自分のベースの守備のところは外さずに、(攻撃力を)伸ばしていきたい」と話す。

 1月の練習試合では息の合わない場面が頻発したが、今週の練習では選手間の連係が深まり、エラーは目に見えて減った。開幕戦からいきなり100パーセントのコンビネーションを見せるのは難しいが、吉濱が話すようにチームで相手に挑む準備は整ってきている。「クレイジー」な練習の成果は上がってきており、霜田監督は「京都の個の力をどれだけ僕らが組織的に抑えられるか。あるいは彼らに自由にサッカーをやらせず、僕らがやりたいことをやれるかに懸かってくる」と語り、組織力で戦う構えを示す。

 「開幕戦は本当に勝ちが必要。いい準備をして勝ち点3を取りたい」(池上)。勝負が懸かるシーズンの開幕戦。レノファらしいサッカーの遂行と初戦勝利という結果に重点を置き、前向きベクトルのクレイジーなサッカーをやってみせる。

 試合は2月23日午後2時キックオフ。会場は山口市の維新みらいふスタジアム。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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