軸の「逆三角形」道半ば。中盤対決、柏に軍配/レノファ山口

試合後すぐに「顔を上げよう」と声を掛け合った=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 明治安田生命J2リーグが2月24日に開幕し、レノファ山口FCは維新みらいふスタジアム(山口市)で柏レイソルと初対戦。吉濱遼平の先制点で先行するが、クリスティアーノに2失点を喫し黒星スタートとなった。

明治安田生命J2リーグ第1節◇山口1-2柏【得点者】山口=吉濱遼平(前半8分) 柏=クリスティアーノ[2](前半39分、後半34分)【入場者数】8440人【会場】維新みらいふスタジアム

スタメンは4選手が新戦力
スタメンは4選手が新戦力

 二つのプレシーズンマッチを行って試合に備えてきたレノファ。開幕前のゲームで目立っていたのは中盤3人の動きだった。アンカーを一人置き、その前に二人を並べる逆三角形は昨シーズンも実践してきたが、佐々木匠や吉濱遼平の加入で流動性とパス選択のバリエーションに変化が読み取れた。

 とりわけ球離れのスピードが改善。受け手との関係性も高まり、攻撃のテンポは上向いてきていた。

 中盤に自然と目が向くのは良い傾向でもある。昨シーズンは右サイドでの構築に頼っていた面があり、結果的に右ウイングで出場していた小野瀬康介(G大阪)移籍後の失速にもつながった。

 長いシーズンを見通せば、移籍やケガによる選手離脱は避けられない。当然、特定の選手頼みの戦術になれば昨年の二の舞になるリスクは高い。軸を確実に中央に寄せ、誰がピッチに立とうとも中盤3人が核となってゲームをコントロールできるか。レノファの近未来を占うポイントの一つが、中盤の動きにあった。

吉濱遼平が先制点。コースを突く

レノファの布陣と軸の逆三角形
レノファの布陣と軸の逆三角形

 その中盤での攻防が幸か不幸か開幕戦の最大のポイントになった。

 レノファは今節、三幸秀稔をアンカーに置き、佐々木と吉濱をトップ下でプレーさせた。この「逆三角形」に対して、柏の狙いも明白。ストロングに対応するために、中盤をダブルボランチかつトップ下1枚という「三角形」にして、双方の3人がそのまま重なるように噛み合わせた。

 「(相手の動きは)想定内だったが、少しフォーメーションを変えてきて、三幸のところを手塚(康平)選手が消し、僕と匠のところをダブルボランチが見る。そういうところで、セレッソ戦とは違ってフリーで受ける場面が少なくなった」

 吉濱がそう話すように、中盤の組み合わせに起因した攻防は、先んじて対策した柏に軍配が上がる。ただ、レノファにとっての困難が表面化したのは前半20分過ぎから。立ち上がりはレノファが優勢で、中盤3枚が意欲的にボールに触れて攻撃を前進させる。

 前半4分には佐々木がドリブルからシュートまで持ち込み、相手ゴールに接近。なおもレノファは手綱を緩めることなく攻め続け、チャンスを作る。

狭いコースに向けシュートを放つ吉濱遼平
狭いコースに向けシュートを放つ吉濱遼平

 ゴールが生まれたのは攻撃が熱を帯びていた同8分だった。右サイドからのスローインを山下敬大がペナルティーエリア内で回収。すぐにゴール方向へ蹴り出し、DFに当たったこぼれ球から吉濱がシュートを放った。「トラップした瞬間に入ると思った」(吉濱)。シュートはGKを含め相手3選手の間をすり抜けるようにコースを突き、左隅にゴールイン。鮮やかなシュートでレノファは早い時間帯での先制に成功する。

 幸先良く先制したレノファだったが、時間が進むにつれて、逆三角形の動きが制限されてしまう。パスが通るべきルートを見いだせなくなり、クオリティーで上回る柏に流れが傾くようになる。

 同20分以降はほとんど柏の時間となった。レノファの球際へのアプローチを交わし、ボランチから確実にボールを供給。質の高いパスでレノファ陣深くに人とボールを入れ、アタッキングゾーンでサッカーを展開する。対するレノファは中盤ではボールを奪い返せず、最終ラインでのクリアやシュートブロックが増加。ルーズになったボールもスピードに勝る柏が拾うようになり、レノファはボールを自分たちの手中に収められなくなった。

 レノファはGK吉満大介のセーブやディフェンス陣のブロックでぎりぎりのところで耐えていくが、同37分にクロスバーを叩くシュートを浴びるなど、1点差のリードは風前の灯火。直後には縦パスで決定機を作られ、反応した小池龍太の突破を防ごうとしてPKを献上してしまう。

 小池が得たビッグチャンスをクリスティアーノがセット。鋭く振り抜いて柏が同点ゴールを奪取し、試合は1-1の同点でハーフタイムに入った。

わずかの差を広げたミスの連続

佐々木匠(中央)などへの厳しいマークが続いた
佐々木匠(中央)などへの厳しいマークが続いた

 インターバルで霜田正浩監督は「プレッシャーが掛かっても簡単に蹴らない。判断を早く、タッチ数を減らしてボールを動かそう」などと指示し、ハーフタイムで戦い方を整理する。

 後半の立ち上がりはレノファが中盤からスピーディーに左右に振り、前半は少なかった両ウイングの動きも活発に。後半4分、ペナルティーエリアの外側で田中パウロ淳一がボールを持つと、持ち前のドリブルで相手をおびき出しながらセンタリング。山下と相手DFが競り合ったこぼれ球を前貴之が左足でシュートに持ち込んだ。その1分後にもカウンターから高井和馬が右足を振り、ゴールに迫る。いずれも得点には及ばなかったが、この時間帯はパスの受け手もフリーになり、シュートチャンスを増やした。

 得点の匂いも漂い始めそうだった。しかし、「我々も相手も同じように点を取る場面があった」(ネルシーニョ監督)という試合でありながら、レノファは決定機を増やせなかった。中盤の逆三角形は噛み合わせをずらすことで多少の自由が出てきていたが、徐々に試合のモメンタムを手放していく。

 同20分にアンカーポジションに小野原和哉を投入。三幸を一列上げ、敵陣でのボールポゼッションをスムーズにしようとしたが、レノファの攻撃が本来のリズムを取り戻すことはなかった。

 歴然とした差を生んだのは、ミスの多さ。細部のクオリティーの違いが結果に響いた。

 「うまくいかないことを想定内にしておけという話はしていた。柏さん相手にすべてがうまくいくわけではない。パスミスをする。相手にボールを取られる。自分たちの思ったようなサッカーができない。それは想定内にしておく。その中でどうやって味方のミスをリカバリーできるかが勝負の分かれ目になる」

 霜田監督はそうにらんでいたが、自陣でのイージーなパスミスやポジショニングのエラーなど、カバーしあうのも難しいミスが頻発。尻上がりに質が上がっていった柏とは対照的だった。

 試合を決定づけたゴールは後半34分。クリスティアーノが左サイドから長いスローインを振り出すと、預けた山崎亮平から再びボールを戻して低いクロス。ボールは中央で駆け引きしていた手塚康平かファーサイドの村田和哉に向けられたものだったが、インスイングの弾道はそのままゴールに吸い込まれた。

「格上」相手に得た自信も

 1-2での惜敗。三幸は「まだまだだなと痛感させられるゲームだった」と悔しさをにじませた。守備的な小野原を入れる一方で、三幸を一列上げるという後半途中でのスイッチは、失点を1にとどめながら、もう1点を取りに行くというメッセージ。だが現実は非情だった。「どうやって勝ち点を1(引き分け)にし、勝ち点を3(勝利)にするかは課題が残った」。

 それでも前向きな手応えを得られた試合だった。

 柏は2月17日の「ちばぎんカップ」からフォーメーションを変更し、中盤をレノファのストロングを消す形に組み替えてきた。柏が今後どのようなシステムに落ち着いていくかは分からないが、この点を見ただけでも「格上」とも言える柏に対して、レノファが脅威を与えたと言えそうだ。さらにはマークされていた逆三角形の一人、吉濱がゴールを挙げたことも自信につながるトピックになろう。

霜田正浩監督。「残り41試合につなげないといけない」と前を向いた
霜田正浩監督。「残り41試合につなげないといけない」と前を向いた

 現実のピッチで起きた現象も背中を押す。「しっかり守備を固め、スペースを消して」(霜田監督)という守り方に陥ることなく、「意図的に攻撃の形を作り、シュートチャンスを作って、あとは決めるだけというところを柏さん相手にどれだけできるか」というチャレンジを続けようとした。

 クオリティーや判断スピードの差から一瞬の隙をゴールに結びつけられたが、前後半ともに序盤は相手を上回る試合運びで先制点も挙げた。十分に今年も前向きに戦っていくという姿勢は示せた。

 冒頭に述べた逆三角形の軸が機能したかどうかは、残念ながら判断材料に乏しい。先発した3選手に加え、途中から入った小野原も、まだ発揮できていない特徴があるだろう。ただ、ゲームメークはさらに洗練されるはずだ。「フリーではないときにどう崩すか。今日は少しキープしてしまっていた。もっとワンタッチを多くしたり、チーム全体としても、個人としても、頭を使ってサッカーをしなければいけない」。そう話す吉濱の言葉は心強い。

 開幕戦からJ1レベルのチームと対戦したレノファ。痛感した差もあれば、遜色ない部分もあった。次節も難敵のヴァンフォーレ甲府と対戦する。会場は柏戦と同じく大歓声が待つホーム・維新みらいふスタジアムだ。「まだまだ未熟なチーム、未熟な選手たちだが、僕たちはもっと情熱のこもったプレーを見せなければいけない」(三幸)。敗戦の黒丸に、オレンジ色の炎が浮かび上がる開幕戦となった。

2019年シーズンもレノファ山口FCのホームゲームでレビュー記事を掲載します(おおむね試合翌日の午前7時頃までに掲載します)。執筆スタイルはリニューアル前のJ’s GOALのレビュー記事とほぼ同様です。

旧J’s GOALの各担当記者がそれぞれに媒体を立ち上げている場合がありますので、アウェー戦についてはそれらもお役立てください。