レノファ山口:最終盤に追いつかれ、手痛いドロー。新布陣には手応え

勝利はこぼれ落ちた=12日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは8月12日、維新みらいふスタジアム(山口市)で徳島ヴォルティスと対戦し2-2で引き分けた。ボランチの枚数を増やす新布陣で臨み、一定の手応えはつかんだが、最終盤に息切れ。連敗こそ免れたものの、リーグ戦は8戦にわたって勝ちなしとトンネルが続く。

明治安田生命J2リーグ第28節◇山口2-2徳島【得点者】山口=丸岡満(前半8分)、オナイウ阿道(前半16分) 徳島=岩尾憲(前半1分)、島屋八徳(後半49分)【入場者数】7354人【会場】維新みらいふスタジアム

メンバーを大きく変更。岸田(背番号9)、丸岡(同32)などが先発
メンバーを大きく変更。岸田(背番号9)、丸岡(同32)などが先発

前貴之をボランチ起用

 レノファはスタメンを大きく変更した。岸田和人を今シーズンのリーグ戦で初先発。丸岡満を3カ月半ぶりにスタメンに戻した。フォーメーションにも手を加え、前貴之はボランチでピッチに立ち、三幸秀稔とのコンビを組んだ。「三幸も前もアンカーができるし、インサイドハーフもできる。どちらかが飛び出せば、どちらかが守るというのが臨機応変にできる」と霜田正浩監督。ボランチの枚数を増やすことで、攻守両側面での改善を狙った。

 10得点を挙げていたFW小野瀬康介がガンバ大阪に移籍し、攻撃の再構築が課題となっていたレノファ。前節の愛媛FC戦は小野瀬に加え、右サイドバックでゲームを組み立てていた前も出場停止のために不在で、ポゼッションのクオリティーが下がった。ゲームの入りは悪くなかったが、自陣でのボールロストからカウンターを食らったり、攻撃ではフィニッシュまで持ち込めなかったりと、試合が進むにつれてひずみが拡大。結局は無得点の0-2で敗れている。

 ボールを動かしてゴールへと向かうレノファにとって、パサーの判断力と質、それに受け手の動き方は軸になる部分。加えて、ドリブルで打開できる小野瀬を生かして構築してきたが、いずれの部分でも修正や対応が必要となった。むろんカウンターによる失点が続いている守備にもメスを入れる必要はあった。

ボランチに入った前貴之。攻撃では自由に動いてチャンスメークした
ボランチに入った前貴之。攻撃では自由に動いてチャンスメークした

 霜田監督は今週、練習試合と通常の全体練習を通じて新布陣を実践。プロ1年目で経験があったとはいえ、そのポジションからは長く遠ざかっていた前をボランチに配置し、3トップもセンターFWのオナイウ阿道だけを残して両ウイングを変更。ダブルボランチとした代わりに1枚だけになったトップ下には、高井和馬を置いた。

 レノファらしいボールポゼッションによるゲームメイクを取り戻せるのか。カウンターからの失点は防げるのか。挑戦者らしい意欲的な布陣でゲームに臨んだ。

前半のうちに逆転。主導権も握る

 試合は前半1分、岩尾憲のミドルシュートが決まって徳島が先制する。カウンターというわけではなかったが、ゴール右隅へと鮮やかな弾道で決められてしまい、レノファは今節も先制点を許してしまう。

 ただ、ゲームの主導権を握ったのはレノファだった。意図した通りにボランチを経由してボールが動き、高井が積極的にボールを回収する。「相手の嫌なところを突けていた。前半は特に自分と三幸と(高井)和馬。和馬が前に行ってもアド(オナイウ阿道)が降りてくる。その関係性は良かった」(前)。左ウイングの岸田、右の丸岡も動きに不自由はなく、チャンスに絡んでいく。

体ごと投げ出してゴールを決めた丸岡満(中央後方)
体ごと投げ出してゴールを決めた丸岡満(中央後方)

 前半8分、オナイウのクロスに高井と丸岡が反応。ニアサイドで高井が潰されるが、その後方から飛び込んだ丸岡が胸でゴールに流し込んだ。「気持ちで押し込んだようなゴール。アドを信じて走って行った」(丸岡)。この点で同点とすると、続く同16分には鳥養祐矢のクロスにオナイウが頭で合わせ、レノファが逆転に成功する。

 ゲームは2-1のまま、レノファがボールを持つ時間が長い状態で進んでいく。動きがあったのは前半42分。岸田が負傷のためにプレー続行が難しくなり、レノファは左ウイングに高木大輔を投入。一方で徳島も小西雄大を下げて大本祐槻を入れ、レノファの新布陣に対応する。

 後半に入ると徳島も攻勢を強める。前半はシュート1本に抑えられていたが、左サイドからのクロスを引き寄せて初先発のバラルがシュートに持ち込んだり、カウンターから古巣対戦となる島屋八徳がゴールを狙うなど前線が活性化する。それでもレノファ守備陣も集中力を切らさずにシュートコースを限定。前半に比べるとレノファの保持時間は減ったが、2-1というスコアが悪い方向に動くほどではなかった。

交代枠2枚を負傷で。プランに狂い

岸田和人はディフェンスにも献身的だったが、無念の負傷交代
岸田和人はディフェンスにも献身的だったが、無念の負傷交代

 誤算があったとすれば、「ケガ人が出て、アクシデントで交代枠を二つ使ってしまった」(霜田監督)という点だろう。前半の岸田から高木への変更もゲームプランには多少は影響しただろうが、それ以上のインパクトになったのが後半18分に起きた鳥養の負傷だ。すでに丸岡から池上丈二という交代カードも切っており、最後の1枚を鳥養から新加入のワシントンという変更に使わざるを得なかった。

 もちろんワシントンの守備力は高く、1点を守り抜くための交代カードとしては申し分ない。とはいえ鳥養が務めていたサイドバックに入るような選手ではないため、霜田監督は前をサイドバックに戻し、ワシントンをアンカーに置く。

 この時間帯までボランチでプレーしていた前は、ワンタッチでボールをはたくことも多いが、ボールをぴたりと足元で止め、味方の動きを待つこともある。これが時間の効果的な消費やパスミス軽減にもつながっていた。こういうプレーヤーが一列下がることで、ボールは止まらずに動き出してしまい、1点をリードしていながら攻め急いでしまった。

 アディショナルタイムに入っても、行ったり来たりの展開が収まらなかった。最終盤にも徳島に攻め込まれ、レノファはコーナーキックに逃れたが、これをフリーで島屋に合わせられて万事休す。セットプレーでの失点は減っていたものの、最後の最後で守り切れなかった。

選手が顔を上げたあとも、霜田監督(手前)は頭を下げたまま。「どうしても勝ち点3をサポーターに届けたかった」と悔やんだ
選手が顔を上げたあとも、霜田監督(手前)は頭を下げたまま。「どうしても勝ち点3をサポーターに届けたかった」と悔やんだ

 試合後、レノファサポーターからは拍手も送られたが、リーグ戦8試合勝ちなしという結果に、温和と言われるサポーターであってもブーイングや厳しい声が漏れた。思い切った布陣変更はあと一歩で結果を手中に収められそうだったが、それはするりと抜け落ちた。

 霜田監督はサポーターに向かって深々と頭を下げ、選手たちはうなだれたり、結果にぼうぜんとしたりしていた。勝つことの難しさを思い知らされた試合だった。「久々に僕ららしいサッカーができたと思っているが、結果が伴わないと次につながらない」。指揮官は表情険しく語り、「このまま終わるつもりはないし、下を向いている暇もない。次に必ず勝ち点3を取れるよう、気持ちのこもった試合をやりたい」と次戦に目を向けた。

 ボランチを2枚にして、その一人は前が担うという戦術は手応えのあるものだった。攻撃の部分のみならず、「今まではアンカーもサイドバックも前掛かりになって、後ろ3枚でのカウンターを受けることがあった。今日はダブルボランチだったので、どちらかが残っている。4枚が揃っていれば回収する確率は高くなる」と前自身が話すように、カウンターに対応する枚数が増えて、そのままシュートに持ち込まれる場面は確実に減った。ワンボランチに対して露骨なまでに三幸包囲網を敷くチームもあったが、その目先をそらすこともできるだろう。小野瀬のポジションに入った丸岡は結果を残し、高井も持ち味を発揮した。

 新たな布陣で挑んだレノファ。結果は負けに等しいような引き分けだった。ただ、小野瀬不在でも点が取れる攻撃力を見せつけたし、カウンターを減らしたり対応したりする術があることも示せた。

 残すはどこかに転がっている「あと一歩」を引き寄せるヒントを探すだけだ。それは、3点目の取り方なのか、それとも失点の減らし方なのか。メンタルかもしれないし、フィジカルかもしれない。いずれにしろ、かつてはレノファでゲームキャプテンを務めた島屋が見せつけたように、相手よりも走り、相手よりも戦わなければ、レノファは最後の1分を自分たちの側に持ち込むことはできない。愚直にサッカーをやってヒントを探り出したい。

 次戦もホームゲームとなる。8月18日午後7時から、維新みらいふスタジアムで京都サンガF.C.と対戦する。