レノファ山口:東京Vに0-2。ポゼッションとシュート数の反比例が示した「成長痛」

声援に応えられず肩を落とした選手たち。写真は福元(背番号4)、山田(同33)ら

レノファ山口FCは3月19日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)で東京ヴェルディと対戦し、0-2で黒星を喫した。主導権を握る時間は長かったがシュートを打ちきれなかった。3連敗で、通算の勝ち点は1のまま。

明治安田生命J2リーグ第4節◇山口0-2東京V【得点者】前半19分=井林章(東京V)、後半35分=アラン・ピニェイロ(同)【入場者数】4583人【会場】維新百年記念公園陸上競技場

三幸秀稔(背番号29)はキャプテンマークを巻いたが、本領発揮の前に負傷退場
三幸秀稔(背番号29)はキャプテンマークを巻いたが、本領発揮の前に負傷退場

90分でレノファが放ったシュートは3本。ボールを保持している時間に比べるとシュートは少なかった。試合後の記者会見で上野展裕監督は「シュートの本数が後半1本で前半も2本と少なかった。もっと打てたチャンスもあり申し訳ない」と話した。

高い位置でボールを保持するも、東京Vの守備を崩せなかった
高い位置でボールを保持するも、東京Vの守備を崩せなかった

内容が極端に悪かったわけではない。星雄次と前貴之の両サイドバックは積極的に前線に絡み、チャンスメークに貢献。攻撃に割いた人数は開幕から4試合の中では最も多かっただろう。

ただ、東京Vのゴール前の守備は厚くレノファはサイドに追いやられてしまう。ゴールエリアに近づく手段が横パスやクロスに偏ったほか、東京Vの守備陣がつり出されることはなく、分厚い壁は解けなかった。シュートを打つよりも前に斜めの動きやスルーパスなど、より効果的な動きを模索する必要はありそうだ。ボランチで先発した佐藤健太郎は「攻撃の部分であと一つパスが繋がればシュートというシーンもあった」と振り返った。

セットプレーでリード許す。アクシデントも

ゲームは前半19分、東京Vが左からのCKを獲得。ニアサイドでアラン・ピニェイロが頭で合わせると、ゴール前を横断したボールに井林章が詰めて先制点を挙げた。レノファは力のある外国籍プレーヤーに対して、ゴール方向に向かわせないような守備はできていたが、次のボールまでの意識が及んでいなかった。

失点から10分と経たないうちに、レノファにアクシデントが発生。キャプテンマークを巻いてピッチに立っていた三幸秀稔が接触プレーで負傷し、前半27分という早い段階でピッチを去ることになってしまう。

岸田和人に縦パスを入れる和田昌士(左)
岸田和人に縦パスを入れる和田昌士(左)

しかし、中心選手を失ってもゲームプランが完全に崩れたわけではなく、すぐに19歳の和田昌士をピッチに投入。和田はレノファで初出場となったが臆することなくボールに触れ、1トップの岸田和人への供給を継続した。

後半に入ると流れは一方的にレノファに傾く。東京Vのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が「相手のプレスが早く、簡単にボールを失ってしまった。守備をする時間は思った以上に長くなった」と振り返るように、レノファは高い位置で引っかけて奪い、前線にも人数を割いて相手陣内でボールを回していく。だが、上述の通りゴール前を固められてサイドに流されたり、ゴールに近いところでのコンビネーションが合わず、シュートをなかなか打ちきれなかった。

左サイドバックの星雄次(写真)も積極的に攻撃参加したが、中央にスペースはなかった
左サイドバックの星雄次(写真)も積極的に攻撃参加したが、中央にスペースはなかった

前に人数を置きながらも攻めきれないでいると、相手のカウンターへの対応が後手に。後半35分には速攻からアラン・ピニェイロに攻め込まれ、後手に回ったディフェンスでPKを献上。GK山田元気も反応したが止め切れず、2失点目を喫した。

2点差になったことで東京Vの出足が遅くなり、レノファの保持する時間はさらに増えていくが、ゴール前に作られた営門をついに突破することはできなかった。

課題は守備。攻撃は続けることが重要

本稿執筆段階においてシュート数を問題とするような記事や報道も見られる。確かに多いか少ないかでいえば「少ない」のは異存のないところだが、決して深刻に捉えるものではない。上野監督はシュート数に関して、「チーム全体の判断もある。決して選手が悪いわけではありません」と解説する。言葉からは闇雲にシュートを打つのではなく、パスで崩せるまで成熟させたいという思いが伺える。

上野展裕監督は「少しずつ攻撃の連係は出てきている」と振り返った
上野展裕監督は「少しずつ攻撃の連係は出てきている」と振り返った

試合を重ねてきたことと練習の成果が現れて、開幕から4試合を経過したに過ぎないがパスコンビネーションは確実に上向いてきている。今節は三幸秀稔を前半で欠きながらも、途中からピッチに立った和田昌士や大石治寿がパスサッカーを体現したのは収獲だ。この中で、いっそうの成熟を目指すコーチングスタッフの意向と、より確実にシュートを打てる選手を探そうとするイレブンの心理、それに守備意識の高い相手との対戦という要素が絡み合い、今節はシュートのタイミングを増やせなかった。

これはパスサッカーを目指すチームに訪れる副作用と言えるし、もっと好意的に捉えれば成長痛のようなもの。呼吸が合うようになれば、ブロックの手前でのパス回しから脱却し、ハイリスク・ハイリターンの危険なエリアに選手が入るようになる。ゴールに直結するパスも自ずと出てくるだろう。「時間が掛かるとは思うが、自分がもっと伸ばしてあげるのが一番」と上野監督は話す。ただ、スタイルが華開く朝は想像よりも早く、確実に近づいてきている。

一方で勝ち点を拾っていくために、改善を急ぎたいのは守備面だ。失点の直接的な要因になったCKでのマークやセカンドボールへの反応は、すぐにでも取りかかれる修正点。球際の強さやプレスタイミングの判断も修正の余地があり、セットプレーを与えないためのディフェンスも含めて、次戦までに課題を潰していきたい。

険しい表情を浮かべた選手たちに「次こそ」と声援が注がれた
険しい表情を浮かべた選手たちに「次こそ」と声援が注がれた

レノファがやろうとしているサッカーは変わらない。それはゴール前のシーンが多い魅力的なサッカーだ。ただし、高みに行くための楽な道などはない。内なる痛みを乗り越え、外傷にはきちんと手当てをし、ひたむきに努力を重ねるのみ。最年長の佐藤健太郎は、「どんな結果になったとしてもいい準備を続け、前向きにプレーすることが必要。個人が持っている力をグループとして出せれば、結果はあとから付いてくる」と説いた。

前に進まなければ道も開けないし、たとい壁があっても勇気を持ってぶつからなければ砕けない。後ろを見ず、下を向かず、志を抱いてレノファは春暁の道を走り続ける。