レノファ山口:続く維新不敗神話。アディショナルタイムに2発の逆転劇。難敵下し、首位固め。

決勝点の岸田和人に抱きついて喜ぶ庄司悦大

維新の不敗神話に偽りなし。明治安田生命J3リーグ第20節、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)で開かれた7月12日のナイトゲームは、後半のアディショナルタイムに2点を叩き込んだレノファ山口FCが難敵・AC長野パルセイロを下した。山口は勝ち点を48として首位を独走。上位直接対決で破れた長野と、Jアンダー22選抜に惜敗したSC相模原が順位を下げ、代わってFC町田ゼルビアが勝ち点39で2位に浮上した。

J3第20節:山口3-2長野▽得点者=後半18分小山内貴哉(長野)、同21分山田晃平(同)、同27分福満隆貴(山口)、同46分オウンゴール(同)、同50分岸田和人(同)▽4225人=維新公園陸

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維新劇場開演

囲まれながらもボールを運ぶ福満隆貴(中央)
囲まれながらもボールを運ぶ福満隆貴(中央)

レノファ史に残るだろう激闘の「維新劇場」だった。3-2のスコアだけを見れば、点を取り合った大味の試合に見えるかもしれない。ゲームを決定づけたゴールが後半46分と同50分に決まったという点だけを切り取れば、『山口が粘った』あるいは『長野が力尽きた』という評価が与えられるだろう。それは的を射てもいるが、数字だけで語ることのできないドラマが内包され、互いに力を出し合い、最後のホイッスルまで勝ち点3を追いかけた好ゲームになった。

前半の山口は、相手陣内での流れるようなパスワークを見せられなかった。球離れが悪く、同じ選手が長くボールを持っている場面が散見。FW岸田和人は厳しいマークに遭い、一列下のMF福満隆貴がボールに絡む時間帯も少なかった。それはスペースを与えなかった長野の狙い通りであり、「ほとんどの時間、守備をオーガナイズして彼ら(山口)の良さを出させなかった」と美濃部直彦監督。長野は夏の移籍ウインドーで獲得した新加入選手が積極的に立ち回り、守備ではパク・ゴンが中心となって相手のストロングポイントを封じ、前線ではフィジカルに勝る近藤祐介が意欲的にゴールに迫った。

後半18分、長野・小山内貴哉が先制
後半18分、長野・小山内貴哉が先制

主導権を握っていた長野は前半こそスコアを動かせなかったが、後半18分、札幌から期限付き移籍のDF小山内貴哉が左からのクロスを落ち着いて右隅に決め先制。その3分後には山口のクリアミスから山田晃平が追加点を挙げ、敵地で2点のリードを奪う。

しかしこれで終わらないのが今季の山口であり、不敗神話の続く維新公園の持つパワー。引き気味にブロックを作る長野に対して、山口はあくまでも地上戦を敢行する。「相手がでかいので蹴っても跳ね返されていた。焦らずじっくり。チャンスが2、3本は来るので、そこを決めきることができれば勝てると思った」と福満。安易にFW岸田には放り込まず、辛抱強くパスサッカーを徹底した。前半はうまくいかなかったボランチからの展開も相手のシステム変更と引いた守備でボールが流れるようになり、一転して相手陣内に人数を割いて侵入。後半27分、押し込んでいたがゆえに福満がペナルティエリア内で倒されてPKを獲得し、1点を返した。

後半に開花した山口イズム

この1点が劇場の緞帳を上げた。「1-2になったときに、スタジアムもそうですが、選手たちもまだ行けるんじゃないかという気持ちになった」(上野展裕監督)。勢いの出た山口は中央からサイドへ、サイドから中央へのパスワークがさらにテンポアップ。左サイドのMF島屋八徳のスルーパスを途中出場のFW原口拓人が左足で振り抜いたり、約2ヶ月ぶりにピッチに立ったDF香川勇気が高い位置でボールを受けたりと、相手陣内でボールを回していく。

宮城雅史(2)のヘディングシュートが手前側で相手DFに当たり同点のオウンゴール
宮城雅史(2)のヘディングシュートが手前側で相手DFに当たり同点のオウンゴール

こうした積極性がセットプレーのチャンスを生む。同点ゴールはアディショナルタイムに入った後半46分。山口は右からのコーナーキックのチャンスを得ると、DF宮城雅史がヘディングシュート。密集したゴール前に送られたボールは相手DFに当たってオウンゴールとなった。

土壇場で2-2のタイスコアにした山口だったが、スタジアムの雰囲気は勝ち点1を得て終わるムードではなかった。4200名超のサポーターは『もう1点』の後押し。応援のエネルギーが推進力を止めず、後半50分、再び山口にビッグチャンスが訪れた。右サイドからのクロスがペナルティエリアを固めていた長野DFの手に当たってハンド。主審がペナルティマークを指し示す中、ためらうことなくボールをセットしたのは岸田だった。「決めるという自信があった」と細かいステップを入れてゴールネットを揺らし、その瞬間に試合終了のホイッスルも鳴った。岸田は7試合連続ゴール。「ホームだし負けられない。自分たちのサッカーをしっかりして勝つ。(失点で)プランは変わりましたが、勝ちに行く姿勢は見せられたのかなと思う」と語気を強めた。

長野は2点を先行後、しっかりとブロックを構築して逃げ切りを狙った。結果的に2本のPKとコーナーキックで失点してしまうが、新加入選手が準備期間が短いながらも役割を果たし、首位・山口を苦しめた。美濃部監督は「前半は本当に危ないシーンが少なかった。守備に関してはオーガナイズできていた」と守備を称え、FW宇野沢祐次は「3点目のPKは引いた結果のところがある。もうちょっと前で溜めを作る時間を増やしていければあの時間帯までもつれることはなかった」と釈明、逃した勝ち点3を悔やんだ。2点リードがゆえに守りに入りすぎていたかもしれない。ゲームをどう進め、閉じさせるか、収獲と課題を見つけた90分間になった。

J2へのスタートライン

PKを決め右手を突き上げる岸田和人(中央)
PKを決め右手を突き上げる岸田和人(中央)

他方、山口は2点を追いかける展開になるも、パスサッカーを続け結果を引き寄せた。「うちは小さいので下で繋いでいくいつものスタイルは変わらない」とMF島屋八徳。パワープレーに行かず、自分たちのサッカーを自信を持って続けたことが奏功した。

山口は次節はゲームがなく、次は2週間後。7月26日、敵地での相模原戦となる。十分なリードを保ってシーズン後半戦へと入っていくが、「本当は安定した試合をお見せしたい。失点は1失点以内に収めたいし、攻撃のところももっともっとやっていかないと次にまた壁が来るんじゃないかなと思う」と上野監督はチームを引き締め、福満も「まだまだ。J2は目標だが目の前の一戦一戦を勝っていかないと道は開けない。厳しい戦いがあると思うし、いまスタートラインに立ったくらいだ」と話した。

試合後、選手たちを出迎えて握手する上野展裕監督(右)
試合後、選手たちを出迎えて握手する上野展裕監督(右)

アディショナルタイムでの逆転劇。サッカーの楽しさを端的に伝えるゲームになったことは言うまでもない。このゲームを学校や職場で語れば、どんな言葉を尽くすよりも魅力的に新たな仲間を呼び寄せることができるだろう。ただチームが語った言葉の通り、浮き足立ってはならない。自分たちのサッカーを愚直にやっていく。自分たちのチームを愚直に支えていく。難敵を下してなお、兜の緒を締め、ひたむきに歩み続けたい。