新作ドラマ『東京二十三区女』放送開始! 長江俊和の『放送禁止』という新しいドラマの作り方

本日12日深夜から放送が開始される『東京二十三区女』(WOWOW)の一場面

長江俊和インタビュー(後編)

フジテレビの深夜に突如放送された『放送禁止』(2003年~)で視聴者に衝撃を与え、4月12日からは新作ドラマ『東京二十三区女』(WOWOW)の放送がスタートする長江俊和氏へのロングインタビュー。後編は、その『放送禁止』は具体的にどのような作り方で生まれていったのか、また新作『東京二十三区女』について伺った。(取材協力:クイズ夜会)

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『放送禁止』の誕生

『Dの遺伝子』や『SMAP×SMAP』特別編「香取慎吾 2000年1月31日」でフェイクドキュメンタリーはやりきったと思っていた長江俊和だが、思わぬ人物との出会いが『放送禁止』へとつながっていく。

長江:フジテレビのある若いプロデューサーを紹介されたんですよ。その人がUFOが大好きで、UFOモノをやりたいと。フジテレビが全社をあげてUFOモノをやる気運があるんだっていうんですよ。ホントかなあって(笑)。僕はそんなにUFOには興味はなかったんですけど、UFOで何かをやるんだったら、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』のラジオドラマがホントのニュースだと思ってパニックになったという事件がありましたけど、そういうフェイクドキュメントをやりましょうと。お台場にUFOが来たみたいな話を、2時間特番で。それで企画を会議に出したら、そのプロデューサーが「お前何考えてるんだ!」ってものすごく怒られたって(笑)。

でも当時、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』がヒットしていたので深夜でフェイクドキュメンタリーをやるのは面白いんじゃないかってことで、それが『放送禁止』になっていくんです。だから第1弾はUFOありきなんですよ(笑)。あとは『Dの遺伝子』のときにホラーもやればよかったなと思ってたら、『ブレア・ウィッチ~』を見て、ホラーとフェイクドキュメンタリーの相性がこんなにいいんだと思ったので、ホラーやオカルト的な要素も入れたんです。

2003年よりフジテレビで放送された『放送禁止』シリーズ
2003年よりフジテレビで放送された『放送禁止』シリーズ

『放送禁止』第1弾は2003年4月1日、エイプリルフールの深夜に放送された。とある廃墟ビルで肝試しを行った男女4人が次々に失踪してしまうというストーリー。そこに絡む超能力者の存在やUFO現象といったオカルト要素がまじえながら、失踪事件の首謀者は誰かというミステリーが展開されていく。

長江:撮影の1週間くらい前に、もうひとりのプロデューサーが、「僕はオカルトとか超能力とかUFOが大嫌いだ」って。だから、最後にミステリーも入れようと。それで急遽もうひとりキャスティングして、無理やりもうひとつのオチを入れたんです。

第2弾はわずか1ヶ月後の6月7日深夜に放送。たまたま枠が空いたことで急遽制作された。そのテーマは「大家族」もの。実は長江は、『NONFIX』以降に「大家族」もののドキュメンタリーを制作していたことが着想につながったという。

長江:テーマの構想はまったくないですね。さすがにシリーズ後半は幾つかアイデアをためてるんですけど、前半は「大家族」にしても「ストーカー」にしてもオファーされてから考える。もう行き当たりばったりですね(笑)。最初にそういうテーマをまず考えて、そのテーマのあるあるみたいなものからある程度のストーリーをつくる。オチはその後に決めます。最初の頃は、割とすんなりオチのアイデアが出てくるんですけど、やっぱりつくるに従って、またこのオチかとは思われたくない。『放送禁止』ファンの人も裏切りたいし、初めて見た人も納得してもらいたいから、難易度は上がっていきましたね。伏線とか仕掛けとかはオチが決まった後に付け足していきます。

よく「見切れ」を使いますけど、何パターンも撮ります。それで編集で試行錯誤です。プロデューサーとか初見の人に見てもらって気づくか気づかないか実験もします。オチのカットもいくつかパターンを撮って、わかりやすさの調整をします。

暗号みたいなものは『ゴーストシステム』(『禁忌装置』と改題して文庫化)という小説を書いたときに、ちょっと勉強したんですけど、『放送禁止』の場合は、ダジャレに近いものなんで(笑)、オチさえ衝撃的であれば、それを補足する伏線であればいいという考え方です。『出版禁止 死刑囚の歌』に出てくる和歌は1ヶ月近くかけて考えましたけどね。

トークイベント「全部聞け。」での長江俊和氏
トークイベント「全部聞け。」での長江俊和氏

『放送禁止』のリアリティはどのようにして生まれたのか

ドキュメンタリーとして見せるためには独特なリアリティが不可欠だ。その大きな要素として、役者の演技が重要だろう。上手すぎても芝居くさくなってしまうし、顔が知れた役者でもいけない。キャスティングはどのように行っているのだろうか。

長江:必ずオーディションをします。でも普通のドラマのオーディションとはまったく違います。普通はセリフを読んでもらって、目の前で演技してもらうけど、『放送禁止』の場合は台本は与えない。たとえば「あなたは、ご近所トラブルで悩んでる主婦です。子供がいるとかいないとか、旦那がどうとか、どういう家に住んでるとかは、もうお任せしますんで、背景を考えてもらって、僕今から質問しますから、その主婦になりきってくださいね」って言ってやるんですよ。やっぱりアドリブ性が大事なんで、どれだけアドリブで受け答えができるかを見ます。舞台経験が豊富な人は演技は上手なんですけど、ちょっと演技くさくなったり、逆にエキストラしかやったことない人がうまかったりするんです。実は「香取慎吾 2000年1月31日」のとき、現場リポーター役の人が、ちょっと演技くさかったんですよ。だから、本当に申し訳なかったんですけど、警察官役のエキストラの人に変わってもらったんです。だから難しいんですよね。

『放送禁止』には2種類台本があるという。それはどういうことか。

長江:役者に渡す台本には、セリフはちゃんと書いていないんです。こんなことを言う、みたいなものを箇条書きにして、そこの要点を自分の言葉で補ってやってもらう。でもその裏で役者には見せない台本があるんです。僕やプロデューサー、スタッフしか見ない。そこにはちゃんと想定したセリフが書いてあります。だからテイク10とか20とか平気であります。しかも長回しだから、編集が大変。全部自分でやるんですけど。編集マンに任せればいいんですけど、裏側を見られるのがなんか恥ずかしくてできないんですよね。

『放送禁止』は深夜での放送。一方で長江は『富豪刑事』などのゴールデンタイムのドラマも手がけている。

ゴールデンタイムでの番組と深夜での番組。その違いをどのように考えているのだろうか。

長江:バラエティでは『アンビリーバボー』や『スカッとジャパン』、ドラマでも『富豪刑事』とかゴールデンタイムのものをやってきましたが、やっぱり視聴率上げることが命題。そのためにどうするかってことをプロとして考え抜きます。

だから深夜はその反動ですね(笑)。僕は『放送禁止』はドラマだと思ってるんです。テレビドラマの新しいスタイルだと思ってやっていたんですよ。やっぱりフジテレビの深夜って『ナイトヘッド』もそうだし『世にも奇妙な物語』の前身である『奇妙な出来事』もそうだし、テレビ番組の新しい形をつくったと思うんです。『放送禁止』もそういうつもりでつくっていました。

長江は『出版禁止』など、書籍でもベストセラー作品を生み出している。書籍作品と映像作品をつくる上でどのような違いがあるのだろうか。

長江:僕自身が基本的に映像・ドラマ畑の人間なので、小説の読み方って違ってきちゃうんですよ。これ、ドラマになるかなとか、これ、映画になるかなとかっていう目線がやっぱり強い。で、いざ自分で書くってときも、最初に書いた『ゴーストシステム』も、やっぱり映像ありき。「小説が映像の元ネタ」みたいな意識があったんです。

それで『出版禁止』を書くときに「映像にできないような小説を書いてください」って言われて、「お!」と思って。僕は映像監督だから映像にできないものを書く意味ってあるのかなってふと思いつつ、そうか、小説の読み方間違ってたなって思ったんです。だって小説は映像の元ネタじゃないですから。そのことにやっと気づいた。それ以来小説書くときは、映像のことを一切考えない。小説として、ちゃんとできてんのかどうかってことだけを考えます。『出版禁止』なんか多分映像化しようと思ったら、なかなか難しい。『東京二十三区女』もドラマにすることは、全く考えなく書いてるんですよ。だからドラマ化は大変でしたね。暗渠のなかとか、ずっとタクシーに乗ってるとか、ずっと夜のゴミ処理場のロケとか、撮影も苦労しました(笑)。

『東京二十三区女』より
『東京二十三区女』より

都市伝説をモチーフにした『東京二十三区女』

『東京二十三区女』は4月12日より、WOWOWで連続ドラマとして放送される。倉科カナ、安達祐実、桜庭ななみ、壇蜜、中山美穂、島崎遥香といった豪華女優陣がそれぞれの回の主人公を演じる全6話の物語。『富豪刑事』など原作があるものをドラマ化する経験はあったが、長江自身の小説をドラマ化するのは初めてだ。

長江:『Dの遺伝子』のときからの付き合いのプロデューサーがWOWOWでもホラーをやりたいという話があって、毎回女優が出てきて、おばけになったり怖いことが起こるみたいなものができないかと。なら、こういうのがありますけどって自分が書いた小説を見せたら、それをドラマ化することになったんです。

自分が思い描いた物語をドラマ化できるっていうのは面白かったし、やりがいもありましたね。一方で、やりにくさもありました。小説ではよかったけど、映像にしたときに出てくる矛盾というか、プロデューサーから見た修正点みたいなのがあって、そこは自問自答しましたね。

『東京二十三区女』はライターの原田璃々子(島崎遥香)が民俗学講師の島野仁(岡山天音)とともにいわくつきの場所をめぐる物語。板橋区や渋谷区などそれぞれの区にまつわる様々な都市伝説がモチーフとなり、現在の事件とリンクしていく。その構造はどのようにして生まれたのか。

長江:もともとは、フジテレビでそういう番組をやろうみたいな話があったんです。僕は『アンビリバボー』とかやってたので、世界のいろんなところを回って怖いところを知ってますから、そこに行って何か起こるみたいなフェイクドキュメンタリーはどうですか、と。僕は乗り気だったんですけど、でも世界はちょっとお金がかかるんで、と。だったら日本全国にしましうか、みたいな話になったんですけど、それもお金が足りない(笑)。そうしたら身近な東京から始めましょうってなった。調べてみたらやっぱり東京にいろんな怖いスポットとかあるし、面白い。じゃあそれをちょっと番組にしようと、企画書を書いたのが始まりなんですよ。でも、いろいろあってそれが結局番組にならなかったんですけど。

その後、ホラー小説を書いてほしいっていうオーダーがあったときに、せっかく調べたので、それをもとに小説書けるかなと思って、書き出したのがきっかけですね。

ネタはまず大宅文庫とかで調べます。「板橋 恐怖」とかで検索して地道に(笑)。それである程度、こういう伝説があるからって当たりをつけて、プロットがまだ見えるか見えないかの段階で、現場に行く。現場に行ってその現場をちょっとうろちょろしたりとかして考えていく感じですね。一番最初は板橋を書いたんですけど、やっぱり板橋だと「縁切り榎」と「貰い子殺し」という興味深いエピソードがある。これを組み合わせてできるストーリーってどんなものかなって考えていったんです。

『放送禁止』の新作を期待する声はいまも大きい。その可能性はあるのだろうか。

長江:いずれあると思います。ちょっと話はいろいろあって、こんなふうにやろうとかって考えていますので、何らかのかたちで近いうちに多分やると思います。いろいろやりたいテーマはありますけど、『放送禁止』の警察密着モノ版とか、面白いんじゃないかと思いますね。

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WOWOWオリジナルドラマ『東京二十三区女

4月12日(金)深夜0時放送スタート

毎週金曜深夜0時(全6話)

監督・脚本:長江俊和 

<出演>第1話:倉科カナ/佐野史郎 第2話:安達祐実/長谷川朝晴 鈴木砂羽 第3話:桜庭ななみ/小日向文世 第4話:壇蜜/竹中直人 第5話:中山美穂/小木茂光 第6話:島崎遥香/白洲迅 岡山天音