Yahoo!ニュース

「ちょっと! 結婚するの?」百田夏菜子と交わした言葉から見る早見あかりとももクロの強い絆

てれびのスキマライター。テレビっ子
早見あかり写真集「Twenteen」

7月23日、30代前半の会社員男性と年内に結婚することを報告した女優の早見あかり。

早見はかつて「ももいろクローバー」(現:ももいろクローバーZ)のメンバーだったが、現在は女優として活動している。いまだに真っ先に「元ももクロ」と肩書がつけられるのは複雑な思いがあるのではないだろうか。けれど、早見は以前、「ももクロについて聞かれることが多いと思うが、そのことに関してどう思うか」と聞かれこう答えている。

早見: どう思うも何も、気にならないですよ。私は事実として元ももクロですし、ももクロがあっての私なので。あの時代がなかったら、今の私はいなかったと思ってます。“あかりん”っていう呼び名も、もともと小さい頃からのあだ名だし、今もあかりんはあかりんだよ!(笑)

出典:『週刊SPA!』15年2月10日・17日増刊号

今回も当然のようにももクロメンバーへの報告とその反応についての質問が飛んだ。

――ももクロのメンバーに報告はしたか。

今日に記事が出たと思うのですが、その取材を受けたのが(22日の)午前中で、その後にメンバーに伝えたのですが、(先に)現場で発表されたらしくて、リーダーの百田夏菜子から「ちょっと! 結婚するの」と驚いた電話がかかってきて、みんなにも「おめでとう」と言ってもらいました。(23日の)深夜2時半に「会見に備えて寝てる?」と連絡が夏菜子から来て、うれしくて涙が止まらなかった

(略)

――改めてメンバーに報告するなら?

「結婚しま~す」という軽い感じですね。恥ずかしいので……。昨日のLINEでも「メッチャ優しいじゃん」と(ふざけて)返してしまった。本人に会って言うとなっても、ノリで教えちゃうかも。

出典:「MANTAN WEB」2018年7月23日

このような人生の節目の時はもちろん、早見とももクロのメンバーは今も事あるごとに連絡を取り合い、強い絆で結ばれている。

◇百田が早見に送ったメールと送れなかったメール

リーダーの百田が早見にした連絡といえばこんなものもあった。

あかりん、あかりん、あかりん、あかりん、あかりん、あかりん……」と数えきれないほど早見あかりの名前を書き連ねたあと、最後に「行ってくるぜっ!」と力強く宣言したメールだ。

それは、2012年12月31日、『第63回NHK紅白歌合戦』にももクロが初出場する日の朝に早見が百田に激励のメールを送ったあとに届いた百田からの返信のメールだった。

早見あかりはサブリーダーとしてももクロを支えていた。しかし、2011年4月に脱退。

「楽しいって気持ちとは別にアイドルに向いていないんじゃないか? あかり必要あるのかな? こんなことを思うようになりました…」

早見あかりは脱退を発表した日の夜に自身のブログ(現在は閉鎖)にそう綴った。自分が迷いを抱えたまま『紅白』を目指すわけにはいかない。白黒をハッキリつけたがる性格の彼女は決断を下した。

「最初はただただ必死だったんですけど、ももクロのライブとかでも楽しむ余裕がほんのちょっとだけ出てきて、周りのことを見られるようになって。自分が思っているアイドル像みたいなものから、自分が全然かけ離れているような気がし始めたんです。他のみんなはステージ上ですごくかわいい女の子でやっているのに、私は、自分の思っているアイドルになれていなかった。これでいいのかな、私いなかったほうがいいんじゃないかなって」

出典:『Quick Japan』Vol.95

こうして、早見あかりは「アイドル」ももいろクローバーを辞め、元々の夢だった女優への道を歩み始める決意をした。

あかりん、辞める気だろ?

百田夏菜子はいち早く早見の苦悩を察知してメールを書いた。けれど、送信することはできなかった。送信すれば、それが現実になってしまうのではないか。そうなるのが嫌だったからだ。

早見と百田はずっと一緒にいた。だから誰よりもお互いのことを理解し、悩みをさとりあう間柄だった。早見は百田にだけは事前に脱退を打ち明けようか迷ったが結局言うことができなかった。

百田「だからいきなり(脱退を)言われたときは『ちょっと私何も聞いてないけど!』って思いました。一緒にいる時間が長かったから、余計に」

出典:『Quick Japan』Vol.96

高城れにに代わり百田がももクロのリーダーに指名されたとき、百田は「嫌だ」と言い続けていた。早見こそリーダーに適任だと思っていたのだ。

百田「あかりんは自分の意見をちゃんと持ってるし、本当に真面目でしっかりしてるから。でもあとでマネージャーさんとあかりんと話したときに、だからこそあかりんはサブになったって聞かされたんです。あかりんは自分の思ったひとつのことにまっすぐなんだけど、でも周りが見えなくなっちゃうほど真面目なんだって。それに対して私は何にも考えてなくて常にヘラヘラしてるんで(笑)、意外と周りが見られるというか。それを聞いて、『ああ、そうなんだ』ってようやく思えましたね。こんな私だからこそリーダーに指名されたんだ、だからそのままでいいんだって気持ちになれました」

出典:『Quick Japan』Vol.96

そのとき、早見は「どうせアンタふざけるんだから、私がちゃんとサポートするし、ビシバシ言うから、普通にいつも通りでいてくれればいいんだよ」(同)と百田の背中を押した。そうやって早見は百田や他のメンバーの精神的な支えになっていた。

脱退を決めたとき、最も心に引っかかったのは百田のことだった。

正直私がいなくなって一番心配なのは夏菜子です

4月10日、中野サンプラザ。脱退の日。最後の挨拶でメンバーひとりひとりにメッセージを贈る中で早見は百田に対して言った。

「いつも写真を撮るときでも必ずうしろに下がりたがるんです、夏菜子は。ちょっと下がりたがるの。だからうしろからちょっと背中を押すの。すっごい嫌がるんだけど、それをやってかなきゃいけないって(夏菜子も)自分で解ってるけど、でもそれができないのがウチの優しいリーダーの百田夏菜子で、だからちょっと強く私が背中を押してあげたりだとか、してたんですけどそれがなくなったらどうなっちゃうのかなって。あかりがいなくなったら夏菜子、潰れちゃうんじゃないかなって

最後まであかりは夏菜子を気遣った。そして「夏菜子、あかりがいなくてもしっかりリーダーやるんだよ」ともう一度背中を強く押した。それに応え「びっくりするぐらい大きくなるからね」と号泣しながらふたりは抱き合うのだった。

◇早見あかりへの電話

2012年12月31日。『紅白歌合戦』にももいろクローバーZは「5人」で出場を果たした。わずか2年足らずで急速に成長し、彼女たちは大きな目標を実現させた。

誰かが早見あかりの穴を埋めるなんてことはできなかった。しかし、早見という頼りきっていた精神的支えがいなくなったことでそれぞれが自立し、大きくなっていた。5人がそれぞれ大きくなって早見の穴を埋めたのだ。早見は「いなくなる」ということで結果的に彼女たちの背中を強く押すことになった。

夢の舞台でメドレーを歌ったももクロは最後に「行くぜっ!怪盗少女」を歌う。この曲はまだ早見が在籍時代からの代表曲で、メンバーの名前が歌詞に入っている歌だ。早見脱退後は「5人バージョン」と呼ばれる歌詞に改変したものを歌っていた。しかし、この日、披露したのは「6人バージョン」だった。

「レニ カナコ アカリ シオリ アヤカ モモカ」と歌い「アカリ」のところで5人はカメラ、つまりその向こうの早見を指さした。

本番終了後、興奮冷めやらぬ状態のまま、彼女たちは早見に電話をかけている。

「見た? 見た?」「泣いた?」と一斉に問いかける5人に困惑しつつも早見は嬉しそうに「おめでとう!」と返し「泣いた」と答えると5人は「キャーー、イヤッホー-!」と歓喜するのだった。

「何か言うことある?」得意気に百田が言うと、早見はもう一度「おめでとうーーー!」と叫んだ。

きっと百田たちは早見に褒められたかったのだ。自分たちが自立し大きくなったことを。そして誰よりも喜んでほしかったのだ。

早見は女優として着実にキャリアを積み重ねて5年余りが経った頃、「女優は天職かもしれない」と思えるようになったという。

「ももクロを辞めるときも、絶対に6人でやっていたほうが楽だってわかっていたんです。5人の仲間の支えがあるから。それにももいろクローバーとして有名になってから、自分の進みたい道に進んだほうが楽だってこともわかっていたけど、それでも一人でやっていきたいって決めたのも私だし、一人でやっていく道を作ったのも私。後悔してもしなくても自分の責任だけど、今、まったく後悔してない」

出典:『Quick Japan』Vol.106

早見は今、ももクロの最高のファンのひとりとして、ももクロのライブに足を運んでいる。もちろん、今年東京ドームで開かれたももクロ10周年ライブにも訪れた。

かつてずっと支え、押してきた百田たちの背中は、びっくりするほど大きくなった。今はそのももクロの背中を見ながら、早見は「私は自分の足でみんなに追い付きたい」と前に進んでいる。そしてこれからは最愛のパートナーと支え合いながら歩んでいくはずだ。

脱退の直前、メンバーたちと夢を語り合ったとき、早見あかりは力強く言った。

できないことなんてないんだよ!

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

てれびのスキマの最近の記事