「ポストコロナ」じゃない 「ウィズコロナ」だ ニューヨーク再生の中で

入り口にカウンターを設置 パスタやソースなど在庫も売り出し必死だ(筆者撮影)

「ポストコロナ」ではない。「ウィズコロナ」時代の始まりといえる。

5月15日、ニューヨーク州の事実上のロックダウン令が切れるはずだった。しかし、5月28日まで延長された。

ところがニューヨーク市は、今年最高の気温27度。人々が、ガラガラだった通りに出てきた。

ブルックリンの六本木みたいな街、ウィリアムズバーグでパトロールに回っている警官の友人が、メッセージを送ってきた。

「もう大変! バーはみんな開いているし。まるで元に戻ったみたい」

(注:バーなどは、テイクアウトしか提供はできないのは守っている)

一部のレストランはテイクアウト・出前のためにロックダウン中も開いていたが、バーが開くのはまさに7週間ぶりだ。

そこで、ブルックリンのもう一つの人気エリア、ブッシュウィックに歩いて向かった。タンクトップや短パン、Tシャツ姿の若者であふれている。ただ、ほぼ皆マスクをしているが。

ブッシュウィックのトラウトマン・ストリート付近は、近年おしゃれなレストランが集中し、そこだけ白人の若者で溢れていた。2ブロック離れれば、聞こえてくるのはスペイン語とラテン音楽だけというラティーノの住宅地に挟まれているエリアだ。

ここに並ぶ常に混み合っていたレストランは、ロックダウンに入り軒並みに休業した。小さなピザ屋やラティーノのレストランは、テイクアウトと出前を細々と続けたにも関わらずだ。

理由は簡単だ。人気レストランは、テイクアウトの売上は極めて少なかったため、テイクアウトだけ続けるのは採算が合わない。店が小さいところは、もともとテイクアウト・出前の比率が高いため休業しなかった。

しかし、おしゃれなレストランもとうとう、5月に入ってからオープンし始めた。変わり果てた姿ではあるが。

店の前の塗装まで変えたレストラン
店の前の塗装まで変えたレストラン

例えばタイトル画像は、角地にある人気シーフードレストラン、Sea Wolf。以前は、角のL字型に広いテラスを出し、ビールの泡やオイスターのフライの香りが歩道に立ち込めていた。まさに流行りのレストランの代表だったが、3月から休業。

5月15日に行ってみると、店の前面に広いカウンターを設置し、お客を店内に入れずにテイクアウトの注文を受けられるようにしていた。オイスターばかりかシーフードの香りはせず、フローズンドリンクやサンドイッチ、アペタイザーを売っている。もちろん生のものはない。キッチンもフルスタッフではないのだろう。テラスのテーブルや椅子は歩道にうず高く積まれたまま。その上、パスタやお茶、ホットソースなどおそらく店の在庫と思われるものも売っていた。

トラウトマン・ストリートのパトカー
トラウトマン・ストリートのパトカー

そして、しっかりパトカーがいる(上の写真、筆者撮影)。2人以上の集まりがないか、マスクなしで社会的距離も守っていない人がいないか、見張っているのだ。ちなみに罰金は1000ドルだ。

人気バー、Heavy Woodsの前もこの様子(筆者撮影)。この2カ月、こんな密度の人間の集まりは見たことがなかった。

こんな「人混み」は2カ月見たことがなかった
こんな「人混み」は2カ月見たことがなかった

従来、ニューヨーク州では、歩道や公園など公共の場所でアルコールを裸で持って歩いたり、飲酒するのは禁じられていた。東京・有楽町ガード下で、ビール自販機の前に人々が集い、歩道に座って飲んでいる、などというのはご法度だ。

しかし、ロックダウンが始まり、バーは店の外でアルコールを提供していいことになった。だから、お客は皆、フローズンカクテルなどを注文し、そのまま店の前でたむろして、久しぶりに屋外で生の人間と以前と同じように語り合うことを楽しんでいる。Heavy Woodsの前で、若い女性がカクテルを買って、喜びの表現なのかダンスしているのを見た。

マスクを顎に下げ、立ったまま、以前はジュース用だった透明のプラスチックカップでカクテルを楽しむ。

それでも、レストランやバーが頑張って、自分たちで入り口にカウンターを作り、できる限りのメニューを提供しているのには、感動した。これこそ、ニューヨーク州のクオモ州知事が連日いう「New York Tough」だ。なんとか工夫を凝らして、ギリギリの線で、「ノーマル」に近づこうとしている。

これが「ウィズウイルス」の世界だ。

マスク・社会的距離を守りながら、許される範囲内で、巣篭もりからソーシャル・ライフに少しずつ戻っていく。

ちなみにニューヨーク州のクオモ州知事は、5月16日からの経済活動再開の段階を4つのフェイズに分けた。これを見ると、レストランやバーで座って飲み食いするのがいかに先になるかがわかる。

フェイズ1  建設、製造、卸売、一部小売、農林水産業

フェイズ2  専門サービス、金融・保険、小売、不動産

フェイズ3  レストラン、ホテル

フェイズ4  芸術、エンターテーメント、教育

(注:5/16 再開は造園・園芸、低リスクの屋外リクリエーション活動(テニス等)、ドライブイン映画館)

米最大のチェーンレストラン、マクドナルドは、イートインが解禁されるにあたり(NY以外の州では再開しているため)、各店に対し90ページ以上の規則を配った。

1、従業員は、マスクと手袋、州・自治体が要求すればフェイスシールドを着用

1、注文キオスクとトイレは、30分ごとに清掃、消毒

1、トイレのドアは、取っ手を触らないで足で開けられるようにする器具をつける

1、トイレのペーパータオルホルダーは、触らないで出てくるもの(数百ドル)を設置する

1、席数は、州・自治体が要求する従来の25~50%に減らす

マクドナルドがこれを実施するなら、他の多くのレストランもこれにならうだろう。つまり、席数は減らし、売上は減るのにマスクなどの費用、清掃や消毒の労力はこれまでの何倍にもなる。

これらの対策も、新型コロナが一瞬にして消えてなくなるのではないことが前提で、つまり「ウィズコロナ」だ。

正直なところ、私自身も「打ち合わせ」のために、朝食やランチなどに出かけたいとはもう思わない。もちろん、直接会いたいのは山々だが、オンラインでことが済むことも分かった。

日本の居酒屋風のところで、ワイワイガヤガヤという飲み会も、もう行きたいとは思わなくなった。レストランで食事するのであれば、十分に広いところで、少人数でというのが望ましい。ワクチンしかり、新型コロナによほど有効な治療方法が出てこない限り、そういう生活を少なくとも来年春になるまでは続けたいと思っている。

これら全ては、新型コロナが市中にい続ける、というのが前提だ。

私のキッチンの窓からは、地下鉄の地上に出た高架線の駅が見える。徹夜して午前5時ごろ、ホームに入る地下鉄を見ていたら、乗客はたった二人で、違う車両に座っており、しかもマスクをしていた。近くに人がいないにもかかわらず、マスクをしているニュー・ノーマル、あるいはウィズコロナの風景として、目に焼き付いた。

マーケットでハーブや春の花のプラントが売られていた
マーケットでハーブや春の花のプラントが売られていた

初夏の陽気に誘われて、プラントを売っていたブッシュウイックのマーケット。人々が欲しがるものを見極めている(筆者撮影)

(了)

ニューヨーク在住ジャーナリスト。「アエラ」「ビジネスインサイダー・ジャパン」などに、米社会、経済について幅広く執筆。近著は「現代アメリカ政治とメディア」(共著、東洋経済新報 https://amzn.to/2ZtmSe0)、「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社 amzn.to/1qpCAWj )、など。2014年より、海外に住んで長崎からの平和のメッセージを伝える長崎平和特派員。元共同通信社記者。

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ニューヨークに2003年から住むジャーナリスト。大統領選挙取材は2008年から今年は4回目。下町クィーンズで、豊かではないが夢いっぱいのミレニアル世代と暮らしながら、トランプのアメリカ社会、政治、テクノロジーをミクロから眺めていく。そこから、アメリカの夢、挫折、フラストレーションが浮かび上がる。

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