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魅力度ランキングに群馬県知事「立腹」のお陰で分かったこと

鶴野充茂コミュニケーションアドバイザー/社会構想大学院大学 客員教授
魅力度ランキングについて説明する山本群馬県知事(群馬県の記者会見動画から)

 群馬県の山本一太知事が10月9日発表の都道府県別魅力度ランキングについて、「法的措置を検討」などと語ったことが報じられた。ただならぬご立腹の様子に、他の知事の反応も含めて調べたところ、思わぬ発見があったのでまとめることにした。

 この魅力度ランキングは、民間調査会社のブランド総合研究所が地域ブランド調査2021の中で発表したもの。47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、全国の消費者3万5489人から有効回答を得て集計しているとされ、都道府県の調査は2009年から13回目になる。

 47都道府県中、群馬県は昨年40位で今年は44位だった。山本知事は12日の会見で、同ランキングを「分析がずさんで不正確と言わざるを得ない」とし、「なぜ群馬県の順位が下がったのか、理由が判然としない。こうした根拠の不明確なランキングによって、本県に魅力がないと誤った認識が広がることは、県民の誇りを低下させるのみならず、経済的な損失につながる由々しき問題」などと強い言葉で語り、「もう一度内容を精査し、弁護士と相談の上、法的措置を検討してまいりたい」としている。

冷ややかなコメントが並ぶ

 12日の夜段階で産経新聞がこれを報じ、ヤフーニュースにも掲載された。魅力度ランキングでは下位だったが、コメントランキングでは上位に入った。知事が立腹する熱さと、書かれているコメントの冷ややかさのギャップが大きく、興味深い。

群馬県知事「法的措置検討」 魅力度ランキング44位

https://news.yahoo.co.jp/articles/ccefeb5eab47eae5919373c8bf3b24c6f8725f7a

 コメントを賛同の多いことを示す「そう思う順」で見ていくと、この記事を執筆時点で最も多く「そう思う」を集めたコメントは…

  • 魅力度ランキングごときに法的措置とかレベル低いでしょ。県民はそこまで気にもしてもないし、マスコミが取り上げるだけでしょ。それよりも群馬には群馬の魅力があるんだからそれをもっと知事として広げる事をしろよ

  • 群馬在住です。いつもランキングでは低くて、群馬は魅力ないのかな?残念と思うけどなにも法的措置だ!は言い過ぎです。器ちっせーな‥と思います。これが群馬の知事と思うと恥ずかしいです。

  • 群馬県民ですけど分相応なランキングだと思います。知事に逆に聞きますが群馬の魅力ってなんですかね?

  • 群馬県民ですが法的措置を取る程ではないと思います…ある意味お遊びみたいなもんじゃない? それとも貴方が知事になったから?

  • 賞味期限切れという知事もいるのに、マジ切れしているのは大人げない。こんなことに神経を振り回されることより、もっとやることがあるだろう。

  • このランキングを批判したいのは分かるけどいろんな都道府県ランキングがあるわけでこれは単にイメージランキングなのだから知事がそんなにムキになる必要はないでしょう

 などと、冷ややかだ。

7月にも「猛批判」

 一方で、このランキングに群馬県の山本知事が「立腹」したのは、今回が初めてではない。今年7月の段階で、「魅力度を適切に示すランキングとは言えない」「多角的な指標による総合的な評価が行われておらず緻密さに欠ける」また、下位25県は得点差が小さく、「誤差でも順位が容易に変動し、下位の順位は信頼に値しない」など強く批判している。

 そして、その段階で、県庁内でランキングの妥当性や信頼性の調査を指示していたとも報じられている。

魅力度ランキング検証 群馬・山本知事が猛批判

https://www.sankei.com/article/20210715-Q3MULTZ645P3ZNDHQG5YPXIAHY/

「魅力度」最下位の茨城県は民間登用の広報監ポストを設置

 もちろん、このランキング自体の妥当性や信頼性、扱いを巡っての議論もある。ランキングを発表している企業が、コンサルティングを提供していることでマッチポンプではないかという意見もある。

 しかし、少し現場寄りの見方をすると、この魅力度ランキングは、都道府県・自治体にとって「どうでもいい」と言い切ってしまえるほど、単純なものでもない。

 たとえば今回、「再び」最下位になった茨城県は、2010年の段階で県庁に広報監というポジションと広報戦略室という部署を作ったが、その理由は、魅力度調査で低迷する県のブランド力を高めようとするものだったことが過去の資料に書かれている。

茨城県発行『茨城県 魅力度最下位の過ごし方』 (P24-27,P37参照)

https://www.pref.ibaraki.jp/eigyo/proteam/documents/miryokudosaikainosugoshikata-1004.pdf

茨城県の広報戦略を強化、新設の「広報監」と意見交換 (2010/4/20)

https://blog.hitachi-net.jp/archives/51026758.html

 魅力度ランキングのアップをめざして「何とかする」のがこのポジションと部署の役割期待であると見てとれる。

 実際に私自身も仕事で話を聞くと、この種のランキングへの対策を強く意識している場面に多く出くわす。最終的に順位アップが各種取り組みの目標にされていることも少なくない。

 つまり、見方を変えれば、知事がたとえ「器が小さい」などと言われようとも、現場では少なからずこのランキングに振り回されているとも言えるのだ。

他の知事はどんなコメントを出しているか?

 44位だった群馬県の知事が立腹しているランキングに対して、今回、他の知事は一体どんなコメントを出しているのだろうかと調べてみた。その結果をまとめたのが末尾の表だ。

 一覧の通り、47都道府県の知事が報道でコメントしているのは、「魅力度ランキング」下位の県に集中している。

 通常、こうした「民間」の、「個別の評価」について、市町村も含めた地方公共団体がコメントを出すことは多くない。あくまで、そのメッセージが組織にとって重要で、なおかつメディアから問われるなどニュース価値がなければ、ニュースにはならない。

 つまり、魅力度ランキングで知事の考えが問われるのは、魅力が高い都道府県ではなく、低いグループなのだということが報道から読み解ける。

 そしておそらくこれは、今年に限った話ではなく、2009年から毎年発表されている同ランキング発表のたびに、多かれ少なかれこのような傾向が続いているものと考えられる。

機会を活かすのがリーダーではないか?

 ただここで、新型コロナで大きなダメージを受けた地域経済の立て直しを迫られている各都道府県の知事には、違ったスタンスが期待されているのではないかというのが、私の強い問題意識だ。

 2020年春、新型コロナの感染拡大をきっかけに全都道府県が知事の会見をネット配信するようになった(「こんなに差があったのか。新型コロナ知事会見ウォッチ47都道府県比較」参照)。

 また、都道府県別感染者数の発表で、さまざまな知事をニュース映像でも目にする機会が増えた。それぞれの知事が積極的に発信する必要性が強くなったということだ。

 災害広報などの領域に、Attention Wars(注目獲得戦争)という考え方があり、メディアの注目をどれだけ集めたかが支援金やボランティアの集まりの差を生むと考えられている。

 観光、移住、ふるさと納税などにも、同じように情報発信やメディア露出が影響を与えているだろうと考えられる。つまり、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が一斉解除された今こそ、地元の魅力を伝え、関心を引き、行動を喚起する役割が知事など地域のリーダーに求められているのではないか、ということなのだ。

 そう考えて、条件を整理してみるとどうなるか。

・観光・外食などを始めとする地域経済の立て直しが急務

・全国一斉に緊急モードが解除されて注目獲得戦争の様相を呈している

・地方に目を向けるきっかけになるランキングの発表が毎年ある

・少なくとも魅力度ランキング下位グループはコメントを求められる「チャンス」がある

・なんとか注目を集め、経済にプラスになるよう持っていきたい

山本群馬県知事の「立腹」はプラスに働くか?

 他のどの知事よりも、今回、山本群馬県知事の「立腹」ニュースは注目を集めた。それによって否定的な反応も広がった。

 ただ、「Any publicity is good publicity.(どんなメディア露出もいい露出)」という考え方があり、少なくとも群馬に「目を向けてもらうきっかけを作った」という意味では、今後の発信次第でプラスに働く可能性もある。

 それよりむしろ問題に感じるのは、地方に目を向けてもらうきっかけが、このランキング発表で「毎年ある」にもかかわらず、そして、外出自粛の緩和のタイミングでチャンスを作っていかねばならない時に、その機会を活かす「準備」をせずに、ボヤきのような中途半端なコメントで、単に「魅力度が低い」ことを上塗りするような知事や、何のコメントも出さずに目を引こうという意欲も示さない他の都道府県の知事の方が、問題ではないか。

 そして、今回のようなタイミングで、「魅力」を伝える強いメッセージを出せないのは、現場に「これをめざして行こう」という明確な目標が、魅力度ランキング以外に作れていないからなのではないか。いずれにしても、それは知事の責任なのだろう。

 群馬県は、ランキングと知事の両方に、現場が振り回されていないことを祈りたい。

 (表)魅力度ランキングに関する都道府県知事のコメント一覧

(表)魅力度ランキングに関する都道府県知事のコメント一覧(筆者作成、2021年10月14日夕方)
(表)魅力度ランキングに関する都道府県知事のコメント一覧(筆者作成、2021年10月14日夕方)

知事コメント報道参照元は以下の通り(2021年10月14日夕方現在)。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021101100897&g=pol

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1164L0R11C21A0000000/

https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/332276

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/69645.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/9e0bc34014ec8b704e790fd07db18258cddf8cac

コミュニケーションアドバイザー/社会構想大学院大学 客員教授

シリーズ60万部超のベストセラー「頭のいい説明すぐできるコツ」(三笠書房)などの著者。ビーンスター株式会社 代表取締役。社会構想大学院大学 客員教授。日本広報学会 常任理事。中小企業から国会まで幅広い組織を顧客に持ち、トップや経営者のコミュニケーションアドバイザー/トレーナーとして活動する他、全国規模のPRキャンペーンなどを手掛ける。月刊「広報会議」で「ウェブリスク24時」などを連載。筑波大学(心理学)、米コロンビア大学院(国際広報)卒業。公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会元理事。防災士。

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