GDP下落は、円安による価格上昇のため

なぜ民間消費が落ち込んだのか?

4-6月期のGDP 統計 (1次速報)では、実質GDPの対前期比が年率で-1.6%とマイナスに転じました。主に、民間消費と輸出が減少したためですが、とくに民間消費が落ち込んだことで、国内景気の悪化も懸念されています。

では、なぜ民間消費が落ち込んでしまったのでしょうか。私は、この落ち込みの主たる原因は、景気後退ではなく、これまでの円安を背景とするさまざまな商品の価格上昇だと考えています。今年は、食品や衣料品を中心に値上げが相次ぎました。一方で、賃金の伸びはそれをカバーするほどではなかった(実質賃金は下落)ため、実質消費が減少したのです。

今回のGDPで、円安のデメリットが目に見える形で現れたといえます。これは、ある意味、現在の金融政策によって想定できた影響なので、慌てる必要はありません。前回の記事で書いたように、実質GDIという指標は原油価格の下落により良い状態で、今回もほぼ横ばいでした。全体では、消費の落ち込みはカバーされています。

一方で、もし原油価格の下落がなかったなら、今頃、日本経済は本当に景気後退に直面していたかもしれません。経済政策の効果がどのように見えるかは、タイミングに左右されますが、アベノミクスはその点で抜群の運の良さを見せています。

さて、今回の民間消費の下落と価格上昇との関係は、ややテクニカルなため、わかりにくいかもしれません。とくに、インフレ率はほぼゼロと物価が上昇していないように見えることで、現状が把握しにくくなっています。そこで、以下で解説してみたいと思います。

解説

まず、前提として、2つのGDP統計の特徴を抑えます。

(1)報道で発表されるGDPは、実質季節調整と呼ばれる加工された統計です。GDP、とくにその中の民間消費は季節によって大きく変動します(例えばボーナス後に消費が増えるなど)。季節調整とは、そのような変動を均したものです。

(2)GDPには民間消費や民間投資など国内需要項目がありますが、そのほかに輸出や輸入という項目があります。原油は輸入に含まれるので、原油価格下落の影響は名目輸入に出ます。

GDPのうち、実質民間消費とその物価(デフレータ)の動きを示したものが、下の図です。季節調整値だと今回の特徴は捉えにくいので、ここでは、調整する前の原系列(実質と名目)を主に示しています。

この図からわかるように4-6月期(第2四半期、Q2)において、民間消費は例年では名目は横ばい、実質でも若干の下落です。けれども今年は、昨年の消費増税後と同様に、大きく下落しています。

ここでポイントは、名目消費(緑の線)の下落よりも、実質消費(赤の線)の下落が大きいことです。これは、下図で示されるように物価(デフレーター)が上昇したことを意味しています。毎年、この時期に民間消費デフレーターが上昇するのですが、とくに今年の上昇幅が大きいことがわかります。

もう一つのポイントは、この民間消費デフレーターには原油価格の下落が含まれないということです。インフレ率の統計を見てみると、総合ではゼロに近い率ですが、衣料品や食料品は2%前後のインフレとなっています。GDPの民間消費デフレーターは後者の影響が強めに出ているのです。

民間最終消費支出
民間最終消費支出

以上のように、物価の上昇によって実質民間消費(=名目民間消費/デフレーター)が下落するともに、賃金上昇がそれをカバーするほどではなかったため、名目でも消費が減少してしまったのが、今回の統計から読み取れることです。

しかしながら、たとえば前述の実質国内総所得(GDI)<次の図>でみると日本経済は堅調です。少なくとも、何か対策が必要な状況にはありません。

このように、アベノミクスのデメリットが目に見える形で現れ始めた時期に、ちょうど原油が下落しため、それがある程度カバーされています。ただ、本来は運の良さに頼るべきではないでしょう。今後は、米国の利上げが予想されています。金融政策の効果について、メリットや今回のようなデメリットをしっかり把握しながら、状況に応じて柔軟に対応していくことが必要だと考えます。

GDI
GDI