実質GDPより実質GDIに注目(2015年第1四半期)

5月20日に2015年第1四半期(1月 ~3月)GDPの1次速報が発表されました。

実質GDPの成長率(前期比、季節調整済)は0.6%(3ヵ月)、年率換算では2.4%となり、予想を上回る高い数値となりました。しかしながら、ニュース等でも指摘されているように、0.6%のうち0.5%(寄与度)が在庫品増加によるもので、それを除くと0.1%とほぼゼロ成長です。

(とはいえ、私は、この在庫品増加については、過去2四半期でマイナスであったためプラスになった側面もあると思うので、素直にプラスで解釈して良いとも考えています。)

ただし、今回発表のポイントは他にあります。それは名目成長率と実質成長率の大幅な乖離です。名目成長率の前期比は1.9%で、年率換算は7.7%でした。7.7%といえば、(名目で短期ですが)中国を上回るような高成長です。

なぜ、このようなことが生じているのでしょうか?これを理解するのにカギとなるのが「輸入」の変化です。

名目成長率でみた財貨・サービスの輸入の変化率(年率)は-23.2%と大幅な下落となっています。GDPの支出面では輸入は差し引かれるので、この下落が名目成長率の大幅な上昇をもたらしています。寄与度は1.4%で、名目成長率1.9%のほとんどを説明できるほどです。

一方で、実質では輸入は大きくないどころか、逆に成長率を引き下げる要因となっています。輸入の変化率(年率)は+12.0%で、その寄与度は-0.6%とマイナスなのです。

実は、輸入における実質と名目の変化の違いは、「輸入価格」の下落によるものです。

実質とは「量」の指標ですので、「輸入量」は増えたのです。一方で、輸入価格の下落により、名目で捉えられる「輸入額」は減少しました。

輸入価格はGDP統計では輸入デフレーターと呼ばれますが、その変化率(3ヵ月)は-9%でした。リーマンショック直後に-20.4%というのがあるものの、それ以外でこのような下落はほとんど見当たりません。

輸入価格の下落が実質で消えてしまったかというと、そういうわけではありません。これを捉える指標を実質GDIといいます。I は Income を意味し、GDIは日本語で国内総所得といいますが、それが増加したのです。

結果どうなったかというと、実質GDIの変化率は1.8%(3ヵ月)、年率では7.4%と大幅な伸びとなりました。

今度こそ、賃金がやや上昇し、景気が改善する可能性が出てきたのではないかと、この統計を見て興奮してしまいます。原油安が続きますようにと祈るばかりです。(もし、もう少し円高になればより良いかもしれませんが、世界金融の情勢を見るとそれは難しそうです。)

ところで、ご存じでしたでしょうか。下の図にあるように日本では、2010年頃から実質での輸入額が、「民間企業設備投資」の規模を上回っています。とくに、2011年の東日本大震災後は輸入が増加したため、今では実質10兆円ほどの差があります。

投資と輸入
投資と輸入

大胆な金融政策で、実質金利を引き下げたということになっています。その効果は投資の増加のはずです。しかしながら、図を見ると、その景気回復効果はそれほど大きくなさそうです。一方で、(輸出と連動するので全部ではないものの)輸入規模が大きくなったため、輸入価格の変化は景気に影響を与えます。(株価上昇を除くと経済には)アベノミクスより原油安の効果が大きかったのが実際です。

先が読めないものの、ともかく、今後のGDPでは実質GDPよりも実質GDIに注目です。