副業意識高い系をひっぱたきたい 副業歴10年のイケメン中年が語る副業解禁の落とし穴 

Yahoo!個人の投稿システムで「副業」で検索したらすごい素材があったゾ(ペイレスイメージズ/アフロ)

今週の『週刊東洋経済』は副業特集だった。小生も登場している。大手企業に勤務しつつ(実際は副業を始める歳に正社員→契約社員になったそうだ)、長野でシェアオフィスを経営している津田賀央(つだよしお)さんとの対談が4ページにわたって掲載されている。幼い頃からクラスで一番かっこよいと言われ続けていた私の写真が大きく載っていて嬉しい。これだけで買う価値があるが、なんせ内容は大変に評価が高いようで、Facebookを眺めていてもなかなか話題になっていた。

実際、よく出来た特集だ。副業に関する法律や会計の基礎知識から、最新の事例、始める際のノウハウなどがよくまとまっている。副業や兼業の解禁は政府の働き方改革でも「テレワークや副業・兼業など柔軟な働き方」として議題にあがっている。企業の側でも副業を解禁する動きが話題になっている。最近は「複業」という意識の高そうな表記まで現れた。

もっとも、副業歴10年の小生からすると「まだ、こんな議論をしているのか」と思う瞬間がある。意識高い系批判の急先鋒である私に対して、いかにも副業を批判しそうだと思っている人もいることだろう。違う。副業は大賛成だし、私自身、ずっと取り組んできた。

1年半前から大学の専任教員になったが、今も大学以外の仕事に多数取り組んでいる。執筆、講演、コメンテーター、石川県内の中堅・中小企業の採用力を上げるためのコンサルティング、いしかわUIターン応援団長などだ。「何をやっている人なの?って聞かれると困るんですね。全部、私ですから」という意識高いフレーズがノマドブームの時に流行ったが、まさにそんな感じだ。

もっとも、本人としてはもはや「副業」をしているという認識はなく。雇用・労働、働くなどのキーワードに激しく関心を持っており、そのアウトプット先や手段、お金を払う主が違うというだけだ。むしろ私の中で「副業」感があるのは、趣味の音楽やプロレスに関する執筆や講演でお金をもらう時だ。

副業に関する議論は未だに「やるか、やらないか」「解禁するか、禁止するか」というレベルの域を出ていない。個人としても企業としても、未だにそれが切実な問題なのだろう。副業のメリットとしても、キャリアの形成、個人の活性化、人脈の構築、多様な視点が本業に活きる、副収入になるなどの一般論が繰り返し語られる。

日本の副業文化を整理する上で、今回の『週刊東洋経済』の特集は有益だったが、私たちはより具体的にこの議論を前に進める必要がある。副業は「やるか、やらないか」ではなく、どうやるか、何を目的にするか、いつまでやるのか、何をもって成功とするのかという視点が必要だ。

誌面の関係で詳しくは掲載されなかったのだが(それを悪く言っているわけではない)、今回の津田賀央氏との対談でも実は「あなたと、勤務先は副業で得しているのか?」という問いかけをしていた。現状の「副業」を本業にした方が成果が出るのではないか、勤務先はどう成果を測定しようとしているのか。別に津田さんを問い詰めるわけではない。この手の視点が副業論には抜け落ちているのではないかと考えるのだ。つまり、解禁したところで、「やればいい」という話になっていないか、ということだ。

今後、私の方でも取材を進めるが、副業を解禁した企業は、どのように成果を測定するのかが気になっている。「制度」として導入するならば、効果測定は必要だ。副業をしている人がどれだけ増えたのか、それによって個人と組織にもたらされたものは何なのか。よく「外で得た知見が本業にも活きている」なんてことが総論で語られるが、どう測定するというのだろう。しかも「活きている」というのだが、それは副業をしたことにより本当にもたらされたものなのだろうか?本業に邁進して、高い評価を得てボーナスをいっぱいもらった方が、あるいは副業の方を本業にして専念した方がより稼げたのではないか。

もちろん、測定しにくいものではある。ただ、完全には測定できなくても、測定する努力くらいしなければ、ワーク・ライフ・バランス関連でたまに見かける「社会にアピールするために作られた、メリットの少ない人事制度」になってしまう。

これは身も蓋もない話だが、会社に隠れてやるからこそ、ダイナミクスをうむ副業というものもある。副業の「制度化」という名のもと、個人を組織に手懐けるために使われてしまうのもリスクだと考えたい。

生活のための切実な副業が増えるのも危険だろう。給与を減らしたり、セカンドキャリア構築という名のリストラの道具に使われてしまったとしたら危険である。

副業解禁という話になると、意識高い系がいかにも大喜びしそうだが、いつの間にか会社に手懐けられていないだろうか。副業解禁論は、賛成の立場をとるのだが、本当に個人と組織が得しているのかという視点が大切だ。給与を下げたり、組織から追い出す道具として利用されることに注意が必要だろう。